2024.11.06更新
上司は部下の話を傾聴するよう努めている。しかし部下は「話を聞いてもらっていない」と言う。自分が大事にしているものを話せていないからだ。
部下の言葉を丹念に拾っていくと、部下が大事にしているものに必ずぶつかる。
それが「言語的追跡」だ。
上司と部下のギャップはどこにあるのか?
その原因は、意外にも「傾聴」という文字にある。
傾聴は文字どおり「耳を傾けて、熱心に聞く」ことだ。
管理職はその言葉どおりに、部下の話に耳を傾けシッカリ聞こうとしている。
だが、シッカリ聞くこと=聞いてもらったにはならないのだ。
聞いてもらったという判断は、いかに話せたかの裏返しになっていることはよく言われている。
問題はどのようにして話してもらえるかだ。
このことに対して、ベストセラーとなった『人は話し方が9割』(永松茂久 すばる舎)は2つのことをすすめている。
一つは、「3つのリアクション」だ。
「顔の表情」「声の表情」「体全体の表情」である。
もう一つを「拡張話法」と呼んでいる。
相手の話を聞いたときに受ける感銘の表現である「感嘆」、相手の話を繰り返す「反復」、相手の話に感情を込めて理解を示す「共感」、相手を評価する「称賛」、相手の話を中心に展開させていくためにその後を追いかけて聞く「質問」だ。
「拡張話法」を用いることにより、相手に話させるということである。
『人は話し方が9割』
述べるとおりと思うが、説明を読んだだけで頭はもうパンパンだ。
テクニックっぽさを感じる人も多いと思う。
たしかにそんなテクニック的要素も必要なのだ。
だが、それよりもはるかに簡単で効果的な方法がある。しかもたった一つのことを行えばよい。
それは言語的追跡である。
言語的追跡はカウンセリング技法の一つだが、そんなことを横に置けば、相手が話したことにくらいつくということだ。
その意味で、永松氏が述べた「反復」に近いが、単なるオウム返しではない。
相手の話からそれないことが大事だ。まさに相手が話したことを追跡する感覚である。
具体的にどのようなことだろうか?
次の部下と上司の会話を作ってみた。
(『コロナ後の「たった一つの出世の掟」』より)
部下 「つくづく職場のみんなが嫌になったんです」
上司 「嫌になったということなの? もう少し詳しく聞かせて」
部下 「昨日も課長がいないときに、大騒動があったのです」
上司 「大騒動って?」
部下 「そう、AさんもBさんもルールを守らないから注意したのです」
上司 「ルールって?」
部下 「4時までに会社に戻るって、みんなで決めたじゃないですか」
上司 「そうだね。4時までに会社に戻るって決めたよね」
部下 「それなのに、Aさんが戻ってきたのは4時半、Bさんは5時だったんですよ」
上司 「Aは4時半、Bは5時に戻ってきたんだね」
部下 「それから書類をチェックすると、子供の夕飯の支度が遅れるじゃないですか」
下線を付けた箇所に着目してもらいたい。
上司は部下が使った言葉に注目し、その意味を知ろうと同じ言葉を返している。
これが言語的追跡である。
部下がつかった言葉を丁寧に返していくと、部下が大事にしているものがわかる。
このケースでは子供の夕飯の支度をしなければならないということだ。
大事にしていることを阻害されたから、上司に訴え、大騒動という言葉までつかった。
一見、簡単そうな言語的追跡だが、なかなかできない。
つい、「なぜ?」と原因をきいてしまう。いま流行りの「なぜ」である。
「なぜ?」ときくと、相手は追い込まれたような気になる。
話したいことを話せなくなってしまうのだ。
記載例をもう一度見てもらいたい。
人は出来事を話したがっていることがわかる。
出来事を丹念に拾っていくと、その人が大事にしているものに必ずぶつかる。
人は自分が大事にしているものを話せないと、聞いてもらったとは思わないのだ。
話し方の本は相手に話させることまでは行き着いたが、重要なことは、「何を話させたか」である。
綾小路 亜也
出世で大事なこと5選 ④言語的追跡から
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