テレワーカーのモチベーションを考える

2020年4月7日に新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県に緊急事態宣言が出された。

 

そのわずか一週間後の4月13日~19日の期間で、
日経BPのICT(情報通信技術)領域のシンクタンクである日経BP総研イノベーションICTラボは、「新型コロナ対策テレワーク実態調査」を実施した。

 

調査対象は日経クロステックなど日経BPのデジタルメディアの読者・会員(国内在住)、調査方法はインターネット上のアンケート調査サイトを利用したWeb調査で、有効回答数は2917件だったという。

 

その実態調査が織り込まれた『テレワーク大全』が発売されたのが6月である。

 

目を見張るようなようなスピード調査、スピード出版といえる。
関係者のご努力はいかばかりかと思う。

 

『テレワーク大全』には、今後加速するテレワークを考えるうえで貴重な報告内容が詰まっているが、ここでは生産性について考えてみたい。

 

調査の質問項目の一つに「あなたのテレワーク利用による業務の生産性は、普段、職場で仕事に取り組む場合を100とした場合、どれくらいですか」という業務の生産性を問う質問があった。

 

回答結果は、生産性が下がったという割合が6割以上だった。
上記割合は全体としてという意味であり、もちろん業種別に大きな差がある。

 

注目すべきは、生産性が下がったと答えた人の割合が6割以上だったにもかかわらず、
「あなたはご自身のテレワーク利用で業務に支障が出ていますか」という質問に対して、「業務に全く支障がない」と答えた人の割合は13.6%、「業務にはあまり支障はない」と答えた人の割合が48.3%だったことである。

 

そんなことから、『テレワーク大全』では、「テレワークによる生産性は致命的というほどではなさそうだ」とコメントしている。

 

しかし、業務に支障がなかったことと、生産性が下がったこととは、まったく別問題ではないだろうか。

 

問題は、なぜ生産性が下がったかということである。
その原因は何だろう?

 

この調査には「あなたがテレワークを利用する際、それを阻害したり、不便・不安と感じたりする点は何ですか」という質問項目もあった。

 

回答結果から、テレワーク利用を阻害する5大要因が判明した。

 

「同僚(上司や部下を含む)とのコミュニケーションに支障がある」という回答が最も多く、

次いで、「書類・伝票類(紙)を取り扱う業務(捺印、決済、発送、受領等)をテレワークの対象とできず不便」と「出社しないことで、心身を仕事モードに切り替えることが難しい」、「自宅での業務用スペース(書斎、作業机等)の確保が難しい」の三つがほぼ同じ割合で、

さらに「自己管理や時間管理がルーズになりがち」も30%近くの回答だった。

 

この阻害要因が生産性に影響を与えていることは推測できる。

 

しかし、質問自体が阻害要因、不便・不安と感じたりする点を聞いているわけだから、必ずしも、上記阻害要因=生産性を下げている要因とは言い切れない。

 

そのほか、『テレワーク大全』には、「活用編 二十の問題はこう解決する」という章があり、
その問題4に「テレビ・家族・菓子の『誘惑』が次々と」という記載がある。

たしかに、自宅で業務を行うと、会社と違って様々な「誘惑」がある。

 

この本では、「テレワーク中は意図せぬ中断を機に集中力が途切れたり、休憩が長引いたりしないように注意をしたい」と述べている。
こんなことも、生産性を下げる要因に十分になり得る。

 

だが、結局は生産性を下げている要因は推測がつくものの、「生産性を下げている要因は何ですか?」という質問がない以上、実際のところは、わからないというところではないだろうか。
この点については、今後の調査に委ねたいところだ。

 

生産性という観点で、テレワーカーのモチベーションはどうだったのか? ということがたいへん気がかりである。

 

 

テレワーカーのモチベーションを考えるとき、ちょっと参考にしたい研究がある。

 

テレサM.アマビールとスティーブンJ.クラマーは「インナー・ワーク・ライフ」という概念を打ち出した。

 

インナー・ワーク・ライフとは「職場で起こった出来事に反応し、それを理解するなかで人々が体験する認識、感情、モチベーションであり、また仕事のパフォーマンスへの影響である」

(『動機づける力ーモチベーションの理論と実践』第3章 知識労働者のモチベーションの心理学から)

 

インナー・ワーク・ライフの定義を見ればわかるとおり、彼らの研究は、職場での認識、感情、モチベーションの変化を対象にしていることから、テレワークについての研究ではない。
また、「知識労働者のモチベーションの心理学」の論文の初出が2008年であることから、ずいぶんと年月が経っている。

 

しかし、認識や感情が絡み合い、モチベーションにたえず影響を及ぼし、その日のパフォーマンスが決まることは、事実ではないだろうか?

 

実際、彼らは調査対象者に「日誌」をつけてもらい、その内容を分析した。すなわち実証研究の成果なのである。

 

彼らの研究では、上司の行動として大切なことがわかった。
仕事を進捗させることと、人間として尊重することだ。

 

仕事を進捗させるということについて、

「調査対象者が最も素晴らしいと感じた日、すなわち最も嬉しかった日、最高の職場と認識できた日、内発的動機づけが高い日などと、最低と感じた日を比較してみたところ、これら二つを区別する要因の最たるものは、仕事がはかどったと感じられたか否かにあることがわかった」というのだ。

 

そして、仕事がはかどったと感じられたかどうかは、事の大小とはあまり関係がないという。

 

この点も、私たちが経験していることではないだろうか?
逆に、仕事が進まないときは、ストレスもたまり、モチベーションも落ちているのではないだろうか。

 

 

一見、テレワークとは関係がないこの調査結果を持ち出したのには理由がある。

 

いわば、彼らの研究は、職場ではモチベーションがたえず変化しており、パフォーマンスが決まるということを示している。

 

つまり、モチベーションが高まる日もあれば、そうでない日もあるということだ。
それによりパフォーマンスが上がる日もあれば、下がる日もあるといくことだ。

彼らの説によれば、それは職場での出来事で決まるという。

 

では、職場での出来事がないテレワーカーたちのモチベーションはどのようなことで決まるのだろうか?
私はこのことを解明しない限り、本当の意味で、生産性の低下原因がわからないと思う。

 

この点についての調査結果がないので何とも言えないが、テレサM.アマビールとスティーブンJ.クラマーがいう「仕事の進捗」に大きく関わっているのではないかと考える。

 

この仕事の進捗は、テレワーカー自身の仕事の進捗である。
それは、きっと、アマビールとクラマーがいうように、事の大小を問わないはずである。

 

 

テレワークというと、人を管理するのではなく、仕事を管理するという言葉が出てくる。
この言葉はほとんど肯定の意味でつかわれている。

 

しかし、テレワークの仕事の管理は、職場で顔を合わせて仕事をしている場合に比し、業務進捗の背景にある感情や環境といったものをとらえにくいので、「進んでいるか」「進んでいないか」という管理になりやすいと思う。

 

業務が進捗しているかどうか、いちばんわかるのは、テレワーカー自身である。
それゆえ、テレワーカーは業務進捗について、一人で受けとめ、一人でストレスを感じ、一人で悩んでいるという実態があるのではないだろうか。

 

仕事の管理は必要なことだが、私は、どんな些細な進捗でも共有する、ちょっとした達成感や喜びといったものまで共有するといったことが、とても大切なような気がする。
また、進捗を促すヒントを与えることも大事である。

 

このことが、テレワーカーのモチベーションを高めていくのではないだろうか。
テレワークでの生産性を考えるとき、こんなことも考えなければならないと思う。

 

 

 

 

テレワーク大全』

「新型コロナ対策テレワーク実態調査」の結果が掲載されている

 

 

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