2024.09.02更新
完璧ではないが「やった」というとき、どっちを付けて答えますか? 言われた人のリアクションから「一応 」と「とりあえず」の違いが見えてきます。
たとえば同僚が上司から質問され、「一応」を付けて答えたとき、ヒヤッとしたことないですか?
そう、「一応」は十分といえないが、最低限の条件は満たしている状態」(三省堂大辞林参照)であり、
答えた本人が不十分さを申告してしまったようなものです。
この言葉を聞いた上司は必ず反応します。
模範解答は、「一応」という言葉をつかわずに、やったこと、確認したことを具体的に言うことに違いありません。
しかし、具体的に言うのもはばかる内容であることを自分が承知しているから、「一応」という言葉を付けるのです。
そう、「一応」は前置きの言葉なのです。
では、「一応」に近い言葉はあるでしょうか?
「とりあえず」があります。
「とりあえず」には次の二つの意味があります。
①十分な対処は後回しにして、暫定的に対応するさま
②将来のことは考慮せず、現在の状態だけを問題とするさま。
例としては「とりあえず倒産をまぬがれた」という使い方です。(三省堂大辞林参照)
みんなで居酒屋に行ったときのことを思い起こしてください。
「とりあえず生!」「とりあえず枝豆!」と言っていませんか?
これが「とりあえず」の意味です。
「とりあえず枝豆」と言ってませんか?
ビジネス社会では、「とりあえず」が評価される場合があります。
たとえば、上司から「予約をとったか?」と聞かれたとき、
「とりあえず、押さえました」と答えれば、上司は「そうか」と言うに違いありません。
そこには、予約がとれないという最悪の事態は免れたという安心感があります。
そして、この「とりあえず」には、料理店なら、これからもっといい店をあたるといったニュアンスも漂います。
こんな「とりあえず」は上司から評価されます。
こんな場合もあります。
上司が新規工作先に選定したA社のことを部下にきいた場合です。
こんなときは、上司は「きっと行っていないだろうな」と心で思っています。
そのとき、部下が「とりあえず、先方の総務課を訪ねてみました」と答えれば、
上司は「行ったんだ! 動いてくれたんだ」と思うに違いありません。
実際に行動を起こした部下を、上司は評価するのです。
二つの例を見ておわかりのように、
なにかを先行してやったという「とりあえず」は評価されます。
実際、私もこの「とりあえず」が評価されたビジネスマンを多く見てきました。
上司は、いろいろな制約があるなか、最悪の事態を防ぐために、部下は俊敏に動いたと解釈したのです。
また、先行してやってみようという「とりあえず」も評価されます。
チームのメンバーに「とりあえず、やってみない」と呼びかける人がいたら、その人の前向きさを感じるはずです。
しかし、人からよく思われない「とりあえず」もあります。
人に指示するとき、「とりあえず、デザイン案をいくつか出してもらえる?」という例を紹介している本がありました。
著者は「こんな場合の『とりあえず』は、『間に合わせ』や「しょうがないから」など、どこか不完全なニュアンスで受けとめられやすい」と述べています。
この記載例は、前に述べた意味の②「将来のことは考慮せず、現在の状況だけを問題にするさま」ではないでしょうか。
極端な例は「とりあえず、やっておいて」です。
おすすめの本です!
『好かれる人が絶対にしないモノの言い方』
「一応」と「とりあえず」、似たような言葉ですが、
「とりあえず」は使い方によって評価される言葉です。
一方、「一応」は、先行してやったというニュアンスがないから、十分でない状態だけが伝わってしまうのです。
「やった」という動作を示したいときは、断然、「一応」より「とりあえず」のほうがよいです。
「できる」と言われている人、出世街道を歩んでいる人は、「一応」という言葉を使っていないはずです。
綾小路 亜也
(参考)
「一応」については、
『「出世しぐさ」のすすめ』で取りあげました。
「やった」ことに、「一応」はいらない
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