2023.05.31更新
波風を立てないとは、もめごとを起こさないことです。
しかし、反対意見の言い方ひとつで、もめごとに発展してしまうことがよくあります。
どんな言い方をすれば、波風が立たないのか考えていきましょう。
反対意見の言い方は、ビジネスマナーや話し方の本などに載っています。
しかし、記載例には納得したものの、どこかシックリ来ないのでは……。
シックリ来ない部分を自分の表現に置き換えれば、自分のものになります。
シックリ来る表現を考えるために、反対意見の記載例を三つ紹介します。
(注)ポイント部分に下線を引きました。
① 不朽の名著と言われている『人望が集まる人の考え方』から
「たしかにそれも一理ありますが、こんなふうに考えてみてください」
「たしかにおっしゃるとおりですが、別の見方もできます」
「たしかにそれは認めますが、違う考え方も成り立つように思います」
著者は
相手に少しでも正しい点があれば、積極的にそれを認めよう。あなたがささいなことを譲歩すれば、相手が重要なことを譲歩してくれる可能性が高くなる。
と述べています。
② 『入社1年目ビジネスマナーの教科書』から
「そうですね。確かにその方法は良い案だと思います。ただ、その方法を採用するには準備が必要で、今からでは工期に間に合わなくなる可能性があると思うのですが、いかがでしょうか?」
著者は
相手の主張に反する意見を言うときは、「ただ~」を使うといいでしょう。否定のニュアンスが薄れて、相手の抵抗感も弱まります。
と述べています。
③ 『好かれる人が絶対しないモノの言い方』から
「いまのご提案は〇〇の点ですばらしいと思います。一方で、コストパフォーマンスを考えると、こちらのやり方もあると思うのですが、いかがでしょうか?」
著者は
相手は意見のすべてを否定されたのではなく一部は認められているので、新しい提案のほうがよいと判断すれば、率直に自分の案を下げやすくなります。
と述べています。
どうでしょうか?
重要なことは、どんな言い方が自分にフィットするかということです。
(1)おわかりのように、①~③の例の共通点は、相手の意見を受けとめ尊重していることです。
しかし、その表現は微妙に異なっています。
①の「一理ある」という表現に引っかかったかもしれません。
「一理」は「一応の理屈」「一通りの道理」(三省堂大辞林)という意味ですから、
仲間内で使う分にはかまわないと思いますが、「ちょっと上から目線かな」というニュアンスを感じとった人はつかわないほうが無難です。
③の例は「〇〇の点ですばらしいと思います」と、「すばらしい点」を述べています。
「すばらしい点」を言えるときはこの表現でよいと思いますが、
「すばらしい点」を具体的に言えないときは避けたほうが無難です。
②の例は「良い案」とのみ言っています。
具体的に「良い点」を言えないときは避けたほうが無難です。
ビジネスマナーの本によっては、
「〇〇さんのご意見、たいへん興味深く拝聴しました」(『いちばん使える! ビジネスマナーの基本とコツ』)と、
「興味深い」という表現が出てきます。
この場合も、どの部分が興味深いか具体的に言えないときは使わない方がよいです。
こうしたことを総合的に考えると、「おっしゃるとおりですが」が汎用性が高いと思います。
(2)①~③の例で異なるのは、相手の意見を受けいれたうえで、自分の意見を切り出す際の「つなぎ」部分です。
①は「こんなふうに考えてみてください」「別の見方」「違う考え方」と、
相手とは異なる角度で見た場合、考えた場合を言っています。
③の「一方で」も同様です。
ところが、②は「ただ」をつなぎ言葉にしています。
「ただ」以下の内容は、相手の見方とは異なった自分の意見ですから、
これから自分の意見が始まるという点では①と③と同じです。
しかし、「ただ」は「前に述べたことについて、留保・注釈・条件などを付け加える語」(三省堂大辞林)ですから、「別の見方」「違う考え方」「一方で」とは異なります。
記載例の「ただ」以下の「その方法を採用するには準備が必要で、今からでは工期に間に合わなくなる可能性があると思うのですが、いかがでしょうか?」を見てもらえばわかるますが、
「ただ」以下は、相手の意見には難があることを示しています。
「ただ」を使うと、どうしても「ただ」以下は、相手が見落としている点などを指摘する形にならざるを得ないのです。
「ただ」が言いやすいならば、この言葉を使えばよいと思いますが、
「ただ」「ただし」以下が発言者の本当の意見・本音であることはみんな百も承知しているので、
この言葉には敏感になります。
著者は「ただし」と言わず、「ただ」をつかうことによって否定のニュアンスを薄めていると言います。
ニュアンスを考えることは大事ですが、「ただ」は「ただし」の短縮形であり、「しかし」に通じる言葉であることは忘れてはならないと思います。
この点が気になるならば、この言葉を使わないほうが無難です。
波風を立てないために
「別の見方」「違う考え方」「一方で」のうち、
どの言い方が、自分が言いやすいかも考えてみる必要があります。
「別の見方」「違う考え方」は気づきや自分ながらの発見があると、活きてきます。
それに対し、「一方で」は、「違う要素もある」といった問題提起的な響きがあります。
どちらの言葉がスムーズに出るかは、人によって、その場によって違うと思いますが、ここは自分のフィット感で決めてください。
(3)注目したいのは、②と③の例では、「いかがでしょうか?」を使っていることです。
この言葉を使うことによって、相手の意見を促しています。
ぜひ、使いたい言葉です。
以上を総合的に考えると、
「おっしゃるとおりだと思います。一方で、こんな考え方(やり方)もあると思うのですが、いかがでしょうか?」
が無難で、言いやすく、汎用性が高いと思います。
上記は私の意見ですが、あなたも、自分が言いやすい汎用型を考えてください。
実際に口に出して、言いやすさを確認することが重要です。
自分が言いやすい言葉が、実際につかえる言葉だからです。
会議や打ち合わせの場で、相手のプライドを傷つけてしまい、そのことが原因で昇進をフイにしていしまうビジネスパーソンは多くいます。
今の時代、昇進は多くの人の意見を聞いて決定されるからです。
このことは、拙著『ビジネスマンが見た出世のカラクリ 出世はタイミングで決まる!』で述べました。
しかし、現実にどうやって相手を尊重しながら、自分の意見を言ったらいいかわからないことが多いのです。
そのために本記事を書きました。
綾小路 亜也
関連記事:相手の意見にフィードバックすることも大事です
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