2020.12.07更新
出世する人がつかう言葉、つかわない言葉がある。
それを実感するのは、会社などの組織に長くいる人だ。
それゆえ、そんな言葉はモノの言い方やビジネスマナーの本には載っていない。
出世する人がつかわない代表的な言葉は「一応」だ。
あなたも、同僚が上司から質問され、「一応やりました」「一応確認しました」と答えたとき、ヒヤッとしたことがなかっただろうか?
「一応」は「十分といえないが、最低限の条件は満たしている状態」(三省堂大辞林参照)であり、答えた本人が不十分さを申告してしまったようなものだからだ。
この言葉を聞いた上司は必ず反応する。
だが、「一応」に替わる言葉はあるのだろうか?
模範解答は、「一応」という言葉をつかわずに、やったこと、確認したことを具体的に言うことに違いない。
しかし、具体的に言うのもはばかる内容であることを自分が承知しているから、「一応」という前置きをつけるのではないだろうか。
言う人にとっては、こんな前置きの言葉が必要なのかもしれない。
そんな前置きの言葉を言わずにはいられないとき、「一応」に近い言葉はあるだろうか?
「とりあえず」がある。
「とりあえず」には二つの意味がある。
①十分な対処は後回しにして、暫定的に対応するさま
②将来のことは考慮せず、現在の状態だけを問題とするさま。
例としては「とりあえず倒産をまぬがれた」というつかい方である。(三省堂大辞林参照)
「一応」と「とりあえず」は基本的に意味は同じだが、「とりあえず」には時間的なニュアンスがある。
上司から「予約をとったか?」と聞かれたとき、「とりあえず、押さえました」と答えれば、上司は「そうか」と言うに違いない。
そこには、予約がとれないという最悪の事態は免れたという安心感がある。
そして、この「とりあえず」には、料理店なら、これからもっといい店をあたるといったニュアンスも漂う。
こんな場合の「とりあえず」は上司が評価する「とりあえず」なのだ。
実際、私もこの「とりあえず」を評価されたビジネスマンを多く見てきた。
上司は、いろいろな要素があるなか、最悪の事態を防ぐために、部下は俊敏に動いたと解釈したのだ。
違ったケースで評価される「とりあえず」もある。
上司が新規工作先に選定したA社のことを部下に聞いた場合だ。
こんなときは、上司は「きっと行っていないだろうな」と心で思っている。
そのとき、部下が「とりあえず、先方の総務課を訪ねてみました」と答えれば、上司は「行ったんだ! 動いてくれたんだ」と思うに違いない。
実際に行動を起こした部下を、上司は評価したのだ。
二つの例を見てお分かりのように、なにかを先行してやったという「とりあえず」は評価されるのだ。
先行してやってみようという「とりあえず」も評価される。
チームのメンバーに「とりあえず、やってみない」と呼びかける人がいたら、その人の前向きさを感じるに違いない。
「一応」と「とりあえず」、基本的に意味は同じだが、「とりあえず」はつかい方によって評価される言葉になる。
ただし、「とりあえず、押さえた」「とりあえず、〇〇を訪ねた」というように、「とりあえず」のあとに、なにかを「やった」と言うことが必要である。
しかし、人からよく思われない「とりあえず」もある。
人に指示するとき、「とりあえず、デザイン案をいくつか出してもらえる?」という例を紹介している本がある。
著者は「こんな場合の『とりあえず』は、『間に合わせ』や「しょうがないから」など、どこか不完全なニュアンスで受けとめられやすい」と述べている。(『好かれる人が絶対しないモノの言い方』)
この記載例は、前に述べた意味の②「将来のことは考慮せず、現在の状況だけを問題にするさま」ではないだろうか。
極端な例は「とりあえず、やっておいて」である。
「とりあえず」はつかい方によっては評価されるが、
「一応」は、先行してやったというニュアンスがないから、十分でない状態だけが伝わってしまうのだ。
「やった」という動作を示したいときは、断然、「一応」より「とりあえず」のほうがいいのだ
人は言葉が持つニュアンスに感情で反応する。
言葉のニュアンスを考えないでつかうと、人の心の中で、その人のイメージがよくない方向で固まっていく。
出世する人は、つかう言葉を選んでいる。
言葉が持つニュアンスと人の反応をよくわかっている人なのだ。
(参考)
「一応」については、拙著『「出世しぐさ」のすすめ』で取りあげました。
(「やった」ことに、「一応」はいらない)
同タイトルの記事も書いているので参考にしてください。
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