「御用聞き」とはどんな人か、「御用聞き営業」とは何か?

2024.12.09更新

 

「御用聞き営業をしてはいけない」と言われる。
「御用聞き」は悪い意味で使われているのだ。しかし御用聞き営業不要にはならない。

「御用聞き」とはどんな人か、「御用聞き営業」とは何か、「御用聞き営業」の何が悪いのか考えてみたい。

 

1.「御用聞き」とはどんな人か

「御用聞き」は、「米屋、酒屋などが得意先の注文を聞いて回ること」と言われている。(日本大百科全書参照)

 

この「聞いて回る」という部分に着目してもらいたい。

だから上の画像のように、居酒屋の店員などがお客さまの注文を聞くのとはちょっと違うのだ。

 

今は、なかなか目にしなくなったが、かつて「御用聞き」と呼ばれた人は家々を回り注文をとり、注文を受けたものを配達していた。

「まいど~」と言って、勝手口から入ってきたのだ。

 

米屋さん、酒屋さんだけでなく、さかな屋さんも回っていた。

 

 

「御用聞き」は注文を聞きに回る

 

私は下町育ちだったこともあり、「御用聞き」の人をよく知っているので、企業で働く 営業女子が輝く35のヒントのなかで、次のように書いた。

 

よく「御用聞き」というと、酒屋さんがその代表格に挙げられるが、私の記憶に残っているのは、さかな屋さんである。

毎日、私の家の勝手口から、「まいど~」と言って入り、私の母に、「今日は何にしましょうか?」と聞いていた。

私の母は、「それでは、サンマを四匹と言ったり、ときには、刺身にしてください」と注文をつけていた。

そして夕刻になると、さかな屋さんは、ちゃんと母が言ったとおりの形で配達してくれた。

これが「御用聞き」と言われる人である。

 

 

ところが、いつの間にか「御用聞き」とは、ビジネスで得意先を定期的に訪問し、注文を受け、商品を納入する人のことを指すようになった。

 

 

かつて、さかな屋さんも「御用聞き」に回っていた

2.「御用聞き営業」とは何か?

「御用聞き」を現代のビジネスに言い換えると、ルート営業になる。

 

「御用聞き」と言われた人は、仕事を受注し、納品していたのだ。

 

そう考えると、企業で働くビジネスマンと何ら変わらないことになる。

 

ところが、この営業担当者が得意先を定期的に訪問し、注文を受け、商品を納品する営業スタイルを「いけない」と言う人がいる。

 

会社や上司だ。

「注文を聞いてくるだけの営業だと数字は行き詰る。もっと需要を掘り起こさなければならない」と言うのだ。

 

その得意先の需要を掘り起こす営業が、みなさんが耳にタコがつくほど聞いている「提案営業」である。

 

会社や上司は、提案営業を推奨したいがために、その対比概念として「御用聞き営業」という言葉を生み出し、使うようになったのだ。

 

その意味は、もっぱらお客さまからの注文に頼る営業ということになる。

 

 

お客さまからの注文に頼る営業を「御用聞き営業」と言う

3.「御用聞き営業」は本当にいけないのか?

ここは、企業で働く 営業女子が輝く35のヒントの記述を紹介しておこう。

 

私の話を聞き、みなさんは率直にどう思っただろうか?

(注)前段のさかな屋さんの話

きっと、「『御用聞き営業』のどこが悪いの?」と思ったのではないだろうか。

実は、私もそう思っている。

私は、むしろ、「立派なものだ。見事なものだ」と思ってさえいる。

 

「御用聞き」と呼ばれる人は、顧客の依頼をしっかり受け止め、依頼どおりに納めているからである。

 

それは、一見やさしく思えるかもしれないが、実は、とても難しいことである。

 

私は30年間営業の現場にいたが、その間に発生したトラブルの多くは、お客さまからの依頼をしっかり把握していなかったことが原因だった。

 

そして、おそらく世の中で発生しているトラブルの多くも、お客さまからの依頼をしっかりつかんでいなかったことが原因になっていると思う。

 

 

そう、「御用聞き営業」という言葉は、「注文を受ける」という動作にもっぱら焦点を当て、お客さまからの依頼に応えるというビジネスの根幹がそっくり抜け落ちた言葉なのだ。

 

そして、提案営業やソリューション提案型営業と対比させて、いかにも営業のグレードが低いような響きを持たせて使っている。

 

しかし、「御用聞き」にはビジネスに不可欠な要素が含まれている。

依頼を的確に受け、依頼どおりに納品するということだ。

 

一見、簡単そうに見えるが、このことはなかなか難しい。

 

相手の要望を正確に把握しなければならないし、要望に合致しているか確認し、期日までに応えなければならないからだ。

 

そう、「御用聞き営業」は悪いのではなく、そこには営業の原点がある。

御用聞き営業不要には、けっしてならないのだ。

 

 

「御用聞き」を疎かにする人は成果が出ない。

顧客の要望に応えていないからだ。

そんな人が提案営業をしたとしても、自分本位のものとなる。

そうすると、ますます成果が出ない。

 

だから「御用聞き営業しかできない」と悩む必要などない。

しっかりと「御用聞き」してもらいたい。

すると、成果が出るはずだ。

 

綾小路 亜也

 

 

「御用聞き」を疎かにする人は、提案営業をしても成果が出ない

 

 

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