型通りの自己紹介しかできないことに悩むビジネスパーソンへ
結論から言えば悩む必要などまったくない。
自己紹介が長い人よりずっとマシだからだ。
それは聞く側の立場に立ってみれば明らかである。
ビジネス社会では、単純に、自己紹介が長いということだけで嫌われる。
このことを、一緒に考えていこう。
自己紹介が長くなるのは、多くの場合、何かを意図するからだ。
「自分を知ってもらおう」と強く思うとき、自分をアピールしたいときなどだ。
つまり、自己紹介で「差」をつけようと考えると、必然的に話は長くなる。
たとえば、一部のビジネスマナーの本には「名前由来トーク」なるものが掲載されている。
それを語ることで、自分を印象づけたいからだ。
難しい名字のときは、読み方は話しておいたほうがよいだろう。自己紹介の究極は「名前だけでも覚えてもらう」ことだからだ。
しかし、本にあるような、よくある名字の説明や、名前の由来などを、人は聞きたいと思うだろうか?
じつは、ここに重要なヒントが隠れている。
話が長いということは2つの面をもっている。
一つは、物理的な時間だ。
注意しなければならないことは、何かを伝えようとすると、それに要する時間は、本人が考えていたより長くなるということだ。
試しに、自分の名前の由来を、ストップウォッチ片手に話してもらいたい。
とても30秒では収まらないはずだ。1分、いや、それ以上にかかるはずだ。
その話を人に聞かせているということだ。
もう一つは、聞きたくもないことを聞かされているという感覚だ。
聞く側からすれば、そんな時間は途方もなく長い。
自分をアピールする内容も同様だ。
ほとんどの人はそんな話を聞きたいとは思っていない。
それを聞く時間は、物理的にも、感覚的にも長いのだ。
すると、聞く側は自己紹介から何を求めているのだろう?
究極の目的は、顔と名前を一致させることだ。
プラスアルファとして、話し方、姿勢から、その人を窺い知ることだ。
ということは、自己紹介の基本形である、
1 あいさつ
2 所属と名前
3 意欲の表明
ということになる。
この3つの要素を、建設会社の総務経理、大学講師、セミナー講師、コンサルタント、税理士の5つの仕事をしている石川和男氏とコミュニケーションコンサルタントである宮本ゆみ子さんがコラボした『最新ビジネスマナーと 今さら聞けない仕事の超基本』(朝日新聞出版)では、「ビジネスで自己紹介する場合に欠かせない3要素」と呼んでいる。
だから、型通りの自己紹介しかできないからといって、悩む必要などないのだ。
聞く側は、結局はこのことを知りたいからだ。
今度は、嫌われるという側面を掘り下げてみよう。
いままで述べてきたことは、自己紹介が長いことに対するウンザリ感だ。
そして、自己紹介が長いと、それ以上のことを人に植えつけてしまう。
その根幹にあるのは、みんなの時間を奪っているという評価だ。
自己紹介にはさまざまな場があるが、職場に配属されたとき、他の配属された人と一緒にみんなの前で行うことが多い。
新入社員として入社したときも同じだ。
そんなとき、自己紹介が長いと、他の自己紹介する人の時間を奪っているということにもなるし、自己紹介を聞く人の時間を奪っているということにもなる。
これから自己紹介を行う人たち、聞く人に、「ちょっと自分中心の人だな」という印象を与えてしまうのだ。
さらに、その内容に、自分を知ってもらうことが色濃く出ていたり、アピールに重点が置かれていた場合は、それを推し進める人に「妙に売り込む人」「変な人」というレッテルを貼ってしまう。
つまり、自分をアピールする人は、自分のなかでは満足感を覚えるかもしれないが、人の不快感にも通じているということを忘れている。
ビジネスマナーの本のなかには自己紹介にこだわる本がある。
その心は、自己紹介の場面から人に「差」をつけることだ。
このことがよくわからない。
ビジネスマナーの本ならば、もっぱら「みんなの時間」に焦点が置かれるはずだ。それがマナーだからだ。それなのに、なぜアピール、売り込むという言葉が記載されているかわからないのだ。
自己紹介はその会社、その職場でのスタートにすぎない。
自己紹介の場で「差」が生まれるわけではない。
これからの仕事振りやコミュニケーションで「差」が生まれるのだ。
無理やり最初から「差」をつけようと思うと、逆効果になることは述べたとおりだ。
自己紹介の記述については、ビジネスマナーの本だけではなく、ビジネス書に書かれていることも多いので、そんな箇所にぶつかったときは、目をとめてもらいたい。
ビジネス実務の長い人ほど、簡潔さを求めていることに気づくはずだ。
それは実際に多くの人の自己紹介を見聞きしてきたからだ。
最後に、一点だけ、アドバイスを送っておきたい。
自己紹介の3要素についてお話ししたが、そこに一点足すときの話し方だ。
その際の基本は、自分が話したいことより、人が知りたいことを話すことだ。
それは、自分がどういう人かの一端を示すものだ。
たとえば、大学時代、野球をやっていた人は、そのことをどう表現するだろうか?
話すとなると、往々にしてこんな話し方になってしまう。
「私は大学で野球部にいたんですが、いや、ちゃんとした野球部です。体育会です。私は4番バッターでけっこう打ったんです。3年の秋には明治神宮大会で準決勝まで行きました。その際の対戦相手は〇〇大学でけっこう強い相手でした。じつは7回までリードしていたんです。8回に満塁ホームランを打たれ負けてしまいました。……」
これが、実際に人前で話すときの内容だ。安心してもらいたい。誰もがこのような話し方になってしまうのだ。
述べてきたとおり、ひと言付け足すだけでも、話はこのように長くなる。
まして、自分をアピールする人の話は、聞く人がうんざりするほど長くなることは容易に想像がつく。
この内容を次のように話せないだろうか?
「私は大学時代、体育会野球部に所属していました。(こう見えても)4番だったんです。明治神宮大会の準決勝まで行くことができました」
工夫したことは「所属」という言葉を用いたことだ。
このように要約した言葉を思いつくと、それだけでも話はスッキリする。
話自体、要約されていくのだ。
話の準備をするとき、要約できる言葉がないか考えてもらいたい。
(こう見えても)という言葉は、応用編だ。つかってみると、けっこうおもしろい。
見かけと事実が異なると、聞くほうは笑いを覚えるし、「エ―ッ?」という驚きとともに、その人に関心を寄せる。
じつは、話が上手い人は話が簡潔で、それでいて聞く人の関心を呼ぶ言葉を上手く入れている。
参考にしてもらいたい。
自己紹介にはさまざまな場があります。
いずれの場も、そこにいる人との「距離感」を考えることが大事です。
下記記事も参考にしてください。
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