「『~と思います』では、相手が不安になる。『~です』と言い切ったほうがよい」と言われている。
しかし、「~です」と言い切る自信をもてないから、「~と思います」と言っている。
そんなビジネスパーソンにとっては、「~です」と「~と思います」は、いつもその間を行ったり来たりする永遠に解決しない問題だ。
「言い切る」という言葉には、大きく二つの意味がある。
一つは、最後まで全部言うことだ。つまり言い終えるということだ。
もう一つは、きっぱりと言うことだ。断言するということだ。(「デジタル大辞泉」参照)
言い切ることに躊躇する人は、断言することに抵抗感がある。
たしかに、セミナーなどで断言する講師の話を聞くと、
「そうは言い切れないのではないか……」と思えるときがある。
この問題を、情報の正確さという観点から、考えられないだろうか?
その際に、参考となる本がある。
伝える力研究所所長の山口拓朗氏が書いた『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』だ。
著者はさまざまな語尾例を紹介しているが、代表的な例は、
「株価の影響です」(断定)
「株価の影響だと思われます」(客観を重んじた推測)
「株価の影響だと思います」(主観を重んじた推量)
だ。
著者が記したカッコ書き部分、断定、推測、推量に注目してもらいたい。
語尾に情報へのつかみ方が表れている。
著者の言葉を借りれば、「伝える情報が、断定できるレベルなのか、推量レベルなのか、個人的な判断なのか」、伝える情報の正体をつかみ、その基準に基づいて話せがよいのだ。
しかし、現実には、断定ばかりしている人、断定を避けてばかりいる人がいることはたしかだ。
この点についても、著者は次のように述べている。
「むやみやたらと断定ばかりする人は観察力や分析力が弱いのかもしれません。
あるいは、断定することで『仕事ができる人』と思われようとしているのかもしれません。
一方、断定を用いず婉曲的な表現ばかりしている人は、心の奥に『仕事の責任を取りたくない』のような気持ちが潜んでいるかもしれません」
そんな側面はある! と思えるが、この言葉の語尾も確認してみよう。
三文とも、「かもしれない」で結んでいる。
ここに、著者のこの問題の情報に対するつかみ方が表れている。
断定ばかりしている人、あるいは断定を避けている人自身にしかわからないことだが、また、人によって異なるが、そんな要素があるのではないかという、この情報に対する著者のつかみ方だ。
事実は自分にはわからないが、そんな可能性があるということを、著者は「かもしれない」で表している。
けっして、断定的な表現を使用していなことに、注目してもらいたい。
このように、事実に基づいて、表現するのだ。
これで、「~と思います」「~です」の間を行ったり来たりしている人の頭の整理はできたと思うが、
それでも、断定的な表現を躊躇う人はいるに違いない。
ここでも、珠玉の言葉が記載されている本がある。
日本初のプレゼンス・コンサルタントである丸山ゆ利絵さんが書いた『「一流の存在感」がある人の気づかいのルール』だ。
丸山さんは、
「コミュニケーションに長けた人は、他人が考えていることが必ずしも自分と同じとは限らないことを知っている」
と述べている。
そのことを知っていると、人への問いかけがうまくなるのだ。
丸山さんは、「断言」と「問いかけ」を巧みに利用することをアドバイスしている。
断言できない人は、「問いかけ」も上手くかみ合わせてもらいたい。
一方、断言ばかりしている人は、「他人が考えていることが必ずしも自分と同じとは限らない」ことをぜひ頭に入れてもらいたい。
たしかに、「問いかけ」されると、人は「それは言えるかも」と思うはずだ。
断言された言葉を、自分の頭の中で整理する時間をもてるためだ。
ぜひ、参考にしてもらいたい。
ビジネスでは、断言したほうがよいケースと、そうではないケースと二つある。
重要なことは、その言葉の情報が正確かどうかということだ。
ここに観点を置けば、「~と思います」「~です」もあまり気にならなくなるはずだ。
そうは言っても、「~と思います」では語尾が弱くなることはたしかだ。
そのことに悩むならば、私は、いっそのこと、「私が思うに……」「私が考えるに……」と、最初に「思う」「考える」をもってくることをアドバイスしたい。
そのうえで、自分が思ったこと、考えたことを言い切ってしまうのだ。
この場合の「言い切る」は、冒頭に述べた「言い切る」の一番目の意味である言い終えるということだ。
そうすれば、語尾は弱くならない。
言い切ることに悩んだ一人である私からのアドバイスなので、ぜひ参考にしてもらいたい。
併せて、ここまで考えたみなさんなら、今後は、人の言葉の語尾にも注意を払ってもらいたい。
きっと、情報を適切に処理している人かどうかがわかるはずだ。
綾小路亜也
これからは、セミナーでも語尾の正確さが求められる。
・山口拓朗氏の本は下記記事を参考にしてください。
要約力は一日にして成らずー『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』から / 新百合ヶ丘総合研究所 (shinyuri-souken.com)
・丸山ゆ利絵さんの
※丸山さんの本は、いずれも本質直球勝負でおすすめです。
拙著『情報セキュリティ時代のビジネスマナー』でもこの本から引用させていただきました。
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