2024.11.08更新
企業で働くビジネスマンはゼネラリストとスペシャリスト、どっちをめざすか、わからなくなっている。そんなことから自分の立ち位置が定まらない。
この悩みを解消するには、自分の「拠り所」と、自分がどのような労働市場にいるか確認することだ。
まず、自分の拠り所についてだ。
今、「ゼネラリストの道を歩む」とは、なかなか言いづらくなっている。
それは、自分の「拠り所」と、ビジネス書などに書かれている「これからの時代に必要なもの」がこんがらがっているからだ。
たしかに、これからの時代に必要なものとなると、「専門性」「起業家的創造性」「奉仕・社会献身」という言葉に目が向くかもしれない。
重要なことは、自分の拠り所は、あくまでも自分の拠り所として存在しているということだ。
人にとやかく言われる筋合いはない自分の拠り所である。
だから、「自分は昇進のハシゴを上り、責任ある地位につきたい」と、誰に遠慮することなく堂々と思ってよいのだ。
自分の拠り所に素直になるということがとても大事だ。
自分の「拠り所」に素直になれないと、「責任ある地位につきたい。いや待てよ、スペシャリストになりたい」「起業家的創造性をもった人間にもなりたい」などと軸があっちにもこっちにもブレる。
エドガー H.シャイン博士は自分の拠り所をキャリア・アンカーと呼んだ。
アンカーは船の錨だ。
次に、自分がどの労働市場にいるか確認してもらいたい。
労働者市場には「内部労働市場」と「外部労働市場」がある。
「内部労働市場」は人材の需給調整が社内で行われる。
「外部労働市場」は新たに人材が必要であれば社外から調達する。外資系企業が採用している。
日本の企業で働く人の多くは「内部労働市場」にいる。
「内部労働市場」について、渡部昭彦氏は「新卒一括採用、年功型賃金、終身雇用、人物主義、ゼネラリスト指向(ローテーション異動)など、固有の人事システムが根づくことになる」と述べている。
(『日本の人事は社風で決まる—出世と左遷を決める暗黙知の正体』渡部昭彦 ダイヤモンド社)
新卒一括採用、年功型賃金、終身雇用は昨今だいぶ揺らぎ、ローテーション異動も現実には「所属先ローテーション」(注)となっているが、基本的に社員はゼネラリストとして育てられているということは押さえておきたい。
(注)「所属先ローテーション」という言葉は『〝社風″の正体 』(植村修一 日経プレミアシリーズ)でつかわれている。
さて、あなたはどの労働市場にいるだろうか?
もしあなたが外資系企業などの「外部労働市場」にいるならば、専門性を高めることが出世の道に通じる。
そもそも「外部労働市場」ではマーケティング、財務といった職務で採用されており、その職務で上をめざすならば、専門性を高めなければならないからだ。
一方、「内部労働市場」にいるならば、より責任ある地位につくことにより、出世をめざすことになる。
「内部労働市場」にいるか、「外部労働市場」にいるかということは、出世を考えるうえで前提となるきわめて重要なことだが、
ほとんど触れられないまま、出世するための「ああしろ」「こうしろ」が述べられているような気がする。
ここまで来ると、日本の企業に勤めるビジネスマンの真の悩みが見えてくる。
ゼネラリストをめざすべきか、スペシャリストをめざすべきかは、「内部労働市場」にいるビジネスマンの悩みなのだ。
しかもゼネラリストかスペシャリストかの選択に迷っているのではなく、ゼネラリストのままで本当に出世できるか悩んでいる。
ゼネラリストのままで出世できるかということに簡単に触れておくと、
かつてはゼネラリストのままで出世できた。いや、むしろゼネラリストが評価されたと言っていい。
そこでは、「総務が務まったのだから、営業も務まるはずだ」、逆に、「営業が務まったのだから、総務も務まるはずだ」という判断が働いた。
「何でもこなせる」ということが非常に大事だったのだ。
実際、「何でもこなせる」ことが武器となり、管理職という地位を射止めることができた。
しかし日本経済の成長が止まり、ポストが増えなくなったいまは、ポストへの必然性をもたなければポストにつくのが難しくなったことは繰り返し述べてきたとおりだ。
つまり会社はゼネラリストとして育てているが、ゼネラリストという言葉のままでは出世しにくくなったということである。
綾小路 亜也
ゼネラリストをめざすべきか、スペシャリストをめざすべきか から
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