2023.12.11更新
スーパーはキャリア発達の段階と発達課題を示した。
生涯を通じた一連のライフ・ステージをマキシ・サイクルと呼び、成長段階(0~14歳)、探索段階(15~24歳)、確立段階(25~44歳)、維持段階(45~64歳)、解放段階(65歳以上)という5つの段階で構成されると考えた。
それぞれの発達段階の間には、暦年齢にゆるく関連した「移行期」(Transition)があると考えたのだ。
このことを説いたスーパー自身のキャリア発達はどうだったのだろうか?
じつは、この本に記載されている。
この本には、スーパー博士への追悼文を含む序文、「伝記」、10名の高弟による8本の尊師への「評論」が掲載されている。いわば記念論文である。
「伝記」を書いたのが、かのサビカスであり、サビカスはスーパーのキャリア発達を<成長期><探索期><確立期><維持期><下降期>に分類し、それぞれの期におけるスーパーの課題も記載している。
では、高弟たちはどのような評論を書いたのだろうか?
このことは、スーパーの研究過程と功績を理解する手掛かりになる。
ドナルド・シトウスキーは、
「仕事観」の概念を現代のキャリア発達理論に導入するうえで、スーパーは中心的役割を果たしてきたと言う。
ナンシー・ベッツは、
スーパーは「キャリア発達は自己概念実現の過程である」ことを強調したと言う。
デイビッド・A・ジャンセンは、
キャリアカウンセリングに対するスーパーの最も重要な貢献の一つは「キャリアモデル」という考え方だったと言う。
マーク・L・サビカスは、
スーパーの業績は、キャリア発達とそのプロセスを言葉で正しく説明し、操作的に定義した点にあると言う。
※操作的に定義:測定可能なように定義がなされる(「あとがき」から)
スーザン・D・フィリップとデイビッド・L・ブルーシュタインは、
スーパーの最も重要な貢献の一つは、進路選択のレディネスとして知られていると言う。
※レディネスはキャリア決定の準備
ジェーン・グッドマンは、
スーパーの「適応性」という構成概念について説明している。
エレン・ピエール・クックは、
スーパーの「役割特徴」という構成概念について説明している。
ナディア・フアードとコンスエロ・アルボナは、
米国国内外のさまざまな文化におけるスーパー理論の研究を見ている。
それぞれの評論は高名な研究者が書いたものだけに、高度な内容だ。
ここでは、評論の「さわり」の部分を紹介したに過ぎないが、それだけでも見えてくるものがある。
一つは、スーパーは、学者であると同時にキャリアカウンセラーだったということだ。
それゆえ、貢献の一つとして「進路選択のレディネス」が挙げられている。
もう一つは、論文の「さわり」を見ただけで、「自己概念」「適応性」「役割」という言葉が登場することだ。
これらは今日的研究課題でもある。
「あとがき」のなかで、下村英雄氏は「スーパーのキャリア発達理論は一向に古くならず、いまもわれわれがキャリアの問題を考える際の標準的な理論であり続けている」と述べているが、
スーパーの理論は、受け継がれ、いまなお進化を遂げているのだ。
さて、スーパーといえば、「ライフ・キャリア・レインボー」が有名だ。
その本質は「役割」だと考える。
スーパーによれば、人が一生涯に果たす役割は6種類(①子ども ②学習する者 ③余暇人 ④市民 ⑤労働者 ⑥家庭人)あり、
5種類の生活空間(家庭、学校、地域社会、職場、施設)において演じられるという。
そして、生涯の各時期にこれらの役割のいくつかが同時に担われていくのだ。
スーパーはこの役割の連続をキャリアと呼んだのだ。
このことを、本のコラムのなかで國分康孝氏は「人は役割(キャリア)を介して成長する」と表現している。
それゆえ生涯発達なのだ。
スーパー理論の根幹はここにあると思う。
最後に、スーパーの「役割」について、本の「伝記」の一節を紹介しておきたい。(サビカスの記述)
「虹のモデル」を研究した学者たちは、そのモデルの背後に提唱者であるスーパー博士の、献身的な息子、愛情あふれる夫、慈しみ深い父親、創造力にあふれた学者、聴衆を惹きつけてやまない講演者、献身的な軍人ならびに市民、貪欲な「ご隠居」、生産的な年金生活者、誇り高き祖父、そしてなによりも世界に生きる人間の存在を認めたのである。
(注)軍人=スーパーは空軍勤務の経験をもつ
これが、スーパーが果たしてきた「役割」であり、すなわちスーパーのキャリアである。
スーパーの研究の変遷の要約については、下記本がオススメです。
『新版 キャリアの心理学【第2版】―キャリア支援への発達的アプローチ―』
本の編集者渡辺三枝子氏はスーパー来日時、講演の通訳をなされています
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