2024.05.21更新
上司が自分をどう見ているか、本当のところ、よくわからないはずだ。そんな上司の本音が表れる場がある。
評価コメントだ。
評価コメントのどこに着目すれば、
上司の本音を見抜けるか、考えていきたい。
今の評価制度は部下へのフィードバックが基本だ。
上司の評価が終わると、部下へのフィードバックが行われる。
項目別評価、総合評価が告げられ、その理由が示される。
評価シートを見せてくれる上司もいるが、ほとんどの場合、口頭での説明だ。
部下の関心はもっぱら評価そのものにある。
しかし、上司の本音を知りたければ、上司のコメントに注目することだ。
評価シートを見せてもらった人はコメント欄に目をとめ、口頭での説明の場合は上司のコメントに耳を澄ますのだ。
上司のコメントは、きっと肯定から入っているはずだ。
今の時代のフィードバック方法であり、上司にとっても話しやすいからだ。
たとえば、「日々の業務に熱心に取り組んでいると思います。しかし〇〇という点では……」といった具合だ。
この「しかし」以下に、上司の本音が表れている。
詰まる所、言いたいのは、このことなのだ。
ところが、この上司の「心の構造」をわかっているつもりでも、骨の髄まで落とし切れない部下は多い。
そこには、早く「自分のことをどう思っているか」知りたいという部下の感情がある。
すると、前段の肯定部分にもっぱら関心が行き、「しかし以下」は付け足しのような存在になる。
上司の本音を理解するのに役立つのは、
「肯定+but」ではなく、逆の「否定+but」の場合を考えてみることだ。
たとえば、「本年度取り組んだことは、残念ながら成果に結びつきませんでした。しかし……」といったときだ。
この「しかし以下」に続くものは、まさに上司がどう思っているかを示すものだ。
今度は上司の立場に立って考えてみよう。
上司とて人の子。本音を語りたくて仕方がない。
それならば、常日頃本音を吐けばよいということになるが、なかなか面と向かって言えない場合もある。
部下の業務に対する姿勢や協調性に問題があるときだ。
もちろん目に余るときは、注意を与えるに違いないが、そこに部下の価値観のようなものが存在するときは言いづらいのだ。
じつは、そんなときでも上司は遠回しに注意を与えている。Yes butという形で。
そんな上司にとって、自分の本音を伝える格好の場が評価へのコメントということになる
この上司の心内を一番理解しているのは、人事の人だ。
人事の人は評価シートのコメント欄に目を光らせる。
そこに上司が述べたい部下の姿が描かれているからだ。
だからコメント欄に記載された人物像が、昇進・昇格に大きな影響を与える。
昇進・昇格はコメントで決まると言っても、けっして過言ではないのだ。
上司の「しかし以下」をもう少し掘り下げて考えてみよう。
たとえば、「しかし以下」が「欲を言えば」といった表現で始まっていたらどうだろう?
それは、前段の肯定部分を、上司は気持ちとしてもほぼ認めたいうことになる。
では、「しかし以下」が「もう少し自分の立場を考えて」となっていた場合はどうだろうか?
それは仕事の進め方は感心しないという意味だ。
さらには、「しかし以下」のコメントがないという場合もあり得る。
そんな場合は、上司は自分がどういう人間か、自分の仕事自体もまだわかっていないことを示している。
こんな感じで「しかし以下」の内容を考えてみたらどうだろうか?
そこには、上司から見た自分の姿がある。
自分が気づかなかった部分もあるに違いない。
気づくということは、改善への道を歩めるということだ。
実際、改善できることも多い。
しかし気づかなければ、改善はできない。
綾小路 亜也
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