2024.11.21更新
カタカナ語には今がどんな時代かがよく表れている。価値観の変化も読み取れる。カタカナ語に抵抗感を覚えるかもしれないが、やはり享受した方がよいのだ。
エリートたちはカタカナ語を使っている
ところが本には「カタカナ語はあまり使わない方がよい」と書かれている。
スッキリしないものがないだろうか?
たとえばエリートたちはカタカナ語をよく使っているからだ。
しかもエリートたちが使うカタカナ語は彼らの体に溶け込んでいる。
カタカナ語を上手く使える人と使えない自分。
そんなことから、カタカナ語に、カタカナ語を使うエリートにコンプレックスを抱いてしまうことがある。
エリートたちと真正面から向き合うには、カタカナ語を使う、使わないは別にして、避けないことが必要だ。
カタカナ語は今の時代を反映している
今使われているカタカナ語の代表例は、「パラダイム」だ。
最近の本の冒頭には、「パラダイムシフト」という言葉がよく使われる。
著者は読者に「パラダイムシフト」を起こしてもらうために本を書いていることがわかる。
ベストセラーとなった『人は話し方が9割』(永松茂久 すばる舎)には、
「まずあなたにパラダイムシフトをしていただきたいことがあります。それは、『話し方において一番大切なことは、聞くことである』ということです」と書かれている。
『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』(山口拓朗 日本実業出版社)の冒頭にも、
「『伝え方』で人生にパラダイムシフトを起こそう」と記載されている。
今の時代、「パラダイム」「パラダイムシフト」という言葉は、当たり前のように使われている。
考え方の枠組みは「パラダイム」であり、「枠組み」のことを「フレームワーク」という。
それゆえ最近の本を読むと、パラダイムとフレームワークが対になって登場し、パラダイムから脱するために「パラダイムシフト」という言葉が使われている。
パラダイムシフト
「バイアス」という言葉も、最近よく使われる。
先入観、思い込みといった意味だ。
この言葉は日常会話のなかに溶け込んでいるかもしれない。
ベストセラーになった『FACTFULNESS』も人がもつバイアスを述べたものだ。
バイアスも物事を正しく見ることができない要素として使われている。
「パラダイム」「パラダイムシフト」「フレームワーク」「バイアス」を日本語に置き換えることはもちろん可能だが、
そのまま使用した方が自然な気がする。
パラダイムは厳密に言えば、言外に「その人たちの」「私たちの」「その時代の」「世間の」などの言葉が来るし、
「パラダイムシフト」を置き換えることはちょっとむずかしいかもしれない。
最近使われているカタカナ語に注意を払っていると、
時代が要求する内容を含んだカタカナ語にも出会える。
その一つは、最近使われ始めた「アナロジー」だ。
「アナロジー」(analogy)は類推するということだ。
この言葉を理解する格好の文章例が大前研一氏と前田裕二氏が書いた本に載っていたので紹介しておきたい。
(線引きは私が行った)
『新・仕事力』(大前研一 小学館新書)より
今は、ミシュランの星付きも含めて飲食店は軒並み危機的な状況に直面しているが、日本の料理人のイマジネーションや構想力とスキルがあれば、必ず生き残っていけるはずである。それは他の業種・業界にも共通するアナロジーなのだ。
『メモの魔力』(前田裕二 幻冬舎)より
アナロジーとは、一見無関係なものの間に何らかの共通点を見つけて、結びつける思考法です。身近で具体的な事例の特徴を探して、抽象化して、それをまた別の具体に当てはめるわけです。
大前氏は、日本の料理人のイマジネーションや構想力とスキルは他の分野にも応用できると言い、
前田氏は、ある事例から得た結果は、他の事例に当てはめることができるのではないか、そのためには具体的な事例から得たものを他に当てはめやすいように、抽象化する必要があると言っている。
すなわち、アナロジーとは、一つのことを他に当てはめられないか考えることなのだ。
他に当てはまらないか
あなたには、カタカナ語を頭のなかで試してもらいたい。
その結果、自分のなかで消化できたなら使ってもいいし、不自然なら使わなければいい。
ただ、いったん自分の頭のなかで反芻してみることが大事だ。
そんなことを行っていると、カタカナ語をつかうエリートたちにもコンプレックスを抱かなくなり、堂々と彼らの話を聞き、話の内容を判断できる。
それは聞く側の自信となって現れる。
エリートたちに真正面から立ち向かうには、聞く側の自信も必要なのだ。
エリートのなかには、「こんなカタカナ語知らないだろうな」という思惑をもちながら、話のなかに織り交ぜる人がいる。
カタカナ語を避けなければ、「そんなところでカタカナ語をつかう必要があるのか」「カタカナ語で逃げたな」といったようなことがわかってくる。
そのことが、聞く側の表情となって現れる。
この聞く側の自信といったものが、エリートには脅威なのだ。
また、カタカナ語に接近していれば、アナロジーのような言葉にも出会え、エリートたちが持ち合わせていない自分の能力にも気づける。
綾小路 亜也
時代の変化を感じるカタカナ語を反芻する から抜粋
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