2024.04.23更新
口頭による情報漏えいは、話の内容に情報が含まれているとの認識がないため起きる。それゆえ、なかなか対策が浮かばない。
情報持ち出しの一形態と考えられないだろうか?
情報を持ち出していることに気づけば、情報漏えいは減る。
口頭による情報漏えいはどんなときに起きるか考えてみよう。
一つは、電車や飲食店の中などで話したことが、他の人に聞こえ漏えいしてしまうケースだ。
最近は共用ビルの喫煙コーナーでの会話が問題になっている。
またオフィスのエレベーターの中での会話やトイレなどの共用部分での会話が漏れてしまうこともある。
もう一つは、顧客を前に、つい他の顧客の情報や自社の機密情報などを漏らしてしまうケースである。
これらの発生原因に対しては、いままで「注意しなさい」としか言いようがなかった。
興味深いことは、不特定多数の人がいる場での情報漏えいは、
奇しくもマナーの欠如と一緒になって起きていることだ。
電車や飲食店の中での会話は、大きな声で話しているから人に聞かれるのであって、
そんな大きな声での会話は周りの人に迷惑だ。
オフィスのエレベーターの中での会話やトイレなどの共用部分での会話は、
来訪者を不快にさせ、喫煙コーナーでの会話も他のくつろいでいる人には耳障りなものである。
また道路で、携帯電話で大きな声で話すことは他の通行人にとってははなはだ不愉快なものだ。
これらはすべて他人のことを顧みないことによって発生しており、マナー違反なのだ。
だが、声を出すことについて、私たちは新たな局面を迎えた。
新型コロナウイルスの感染経路に「飛沫感染」があることを深く意識するようになったからだ。
今後、人前で大きな声で話すことは激減すると考えられるが、
そもそも共用の場で、会社の話ををしていることが問題だという認識はもっておかなければならない。
これからは、コロナウイルス感染防止の観点、マナーの観点、情報漏えいの観点から、
共用の場での会話を考える必要がある。
共用の場で情報漏えいは起きている
私は、これから声のトーンは落ちると思うが、
公共の場や共用部分での会話、道路での携帯電話での業務連絡自体は減らないのではないかと考えている。
その理由は、このような場で話している人は、
自分たちの会話に「情報」が含まれているとは思っていないからである。
情報漏えいの会話事例は思わぬところにある。
電車の中での従業員同士の会話を聞くと、たいがいが上司の悪口だ。
その会話から、従業員たちが何に不満を持っているかということ、従業員を取り巻く人間模様までも固有名詞でわかってしまう。
会社の業務内容やその会社でいま論点になっている内容が筒抜けということだ。
だが、従業員たちはあくまでも上司の悪口を話しているのであって、他意はない。
居酒屋での会話も同様だ。
自分たちが語っているのは、会社の会議や組織の在り方、ひいては会社の未来だと考えている。
しかしその会話から、会社が取り組んでいることがわかってしまう。
道路での携帯電話をつかった業務の話も、自分は連絡をとっているにすぎないと考えている。
だが、その会話から取引先名がわかってしまう。取引先との親密度までわかる。
オフィスの共用部分での会話も、「忙しい?」「うん、最近〇〇の件で忙しくて……」といったように、
社員間でコミュニケーションをとるために話しているが、
その会話から、会社で問題になっていることがわかってしまう。
口頭による情報漏えいがいっこうに減らないのは、
自分たちが話している内容に「情報」が含まれていると思っていないからだ。
そうなると、なおさら手の打ちようがない。
どうしたらよいのだろうか?
「情報の持ち出し」という概念を使ってもらいたい。
外出先や共用部分での会話は「口頭による情報の持ち出し」なのだ。
「持ち出し」が腹に落ちていれば、
「そんなところに情報を持って行ってよいのか?」「その情報は許可された情報なのか?」ということが頭をかすめる。
そうすると、社外や共用部分での口頭による情報漏えいは減る。
また、顧客を前にして、知り得たことが口に出かかったとき、「その情報は持ち出してよい情報なのか」ということも頭をよぎる。
それにより不用意な情報漏えいも減らせると考えるのだ。
綾小路 亜也
⑳ 口頭による情報の持ち出し から
※情報セキュリティ時代のビジネスマナーのポイント
①話している内容も情報
②情報が口に出かかったとき、持ち出してよい情報か確認する
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