上司の「承認欲求」にどう対応するか?

2022.12.12更新

 

上司も承認欲求を持っている。

しかも、承認を部下にも求めている。

このことに気づくと、上司の行動や反応の意味がわかってくる。

上司の承認欲求を充たすような行動をとれば、上司との関係がよくなることは間違いない。

 

 

しかし、いままで上司の承認欲求は見落とされてきた。

私の知る限り、このことに触れている本が一冊ある。

 

太田肇氏は『「承認欲求」の呪縛 (新潮新書)』のなかで、「『承認欲求の呪縛」は地位の低い側に生じるとはかぎらない。逆に上位者が下位者に依存して生じる場合もあるということを見逃してはいけない」と述べている。

 

「承認欲求」の呪縛

『「承認欲求」の呪縛』

 

なぜ上位者の承認欲求が見落とされてきたのだろうか?

 

私は、それにはハーズバーグの「動機づけ要因ー衛生要因」の研究が深く影響していたとのではないかと考える。

 

承知のとおり、ハーズバーグは「承認」を動機づけ要因の一つに挙げた。

著書『仕事と人間性―動機づけー衛生理論の新展開』を読むと、「動機づけー衛生理論」はおびただしい数の実証研究に裏づけられていることがわかる。

 

それは上位者が下位者に与える承認の効果だった。

 

承認欲求といえば下位者が上位者に求めているものと思うようになったのは、この理論が現実に符合していたからである。


現に半世紀を経た現在でもこの理論は受け継がれている。

 

仕事と人間性

『仕事と人間性』

 

しかし、承認欲求自体はほとんどの人が持っている欲求である。

このことは承認欲求の大元になったマズローの著書を読むとわかる。

 

マズローは承認欲求は2つに分けられると述べている。

 

一つは、強さ、達成、適切さ、熟達と能力、世の中を前にしての自信、独立と自由などに対する願望

 

もう一つは、(他者から受ける尊敬とか承認を意味する)評判とか信望、地位、名声と栄光、優越、承認、注意、重視、威信、評価などに対する願望だ。

(『人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ』第四章から)

 

当然ながらマズローは承認欲求を下位者が上位者に求めるような欲求などとは考えておらず、人間の基本的欲求の一つとしてとらえている。

(注 マズローは説明のなかで、「承認の欲求」を「自尊心の欲求」とも表現している)

 

上司も人であり、承認の欲求すなわち人から尊敬され、認められたいという欲求を持っているのだ。

 

人間性の心理学

『人間性の心理学』

 

問題は、私たちは、この上司の承認欲求にどのように対応をしてきたかということである。
ビジネスマナー的な対応をしてきたのではないだろうか。

 

上司への挨拶、報連相、上司からの指示の受け方、席次などを上司へのマナーと考え、マナーを適切に行うことで上司の存在を認めてきた。

このことはビジネスマナーの本を見れば明らかである。

 

上司へのビジネスマナーが適切に行われると、上司は満足を覚えることは間違いない。
その意味で、ビジネスマナーは上司の承認欲求を充たす一定の役割を果たしていたことになる。

 

しかし、上司は本当にそのような承認に満足しているのだろうか?
適切なビジネスマナーは形としての承認である。

上司はもっと内面的な承認を求めているのではないだろうか。

 

 

上司への内面的な承認の具体例はどのようなものか?

 

その代表格は上司への「アドバイスをお願いします」だと思う。

 

私は「出世しぐさ」のすすめのなかで、「『アドバイスをお願いします」と言われると、なぜ嬉しくなるのか」について書いたが、この言葉は上司からすれば自分の経験や能力が認められたことを意味する。つまり内面的な承認なのだ。

 

そのほかにもいろいろありそうだ。

 

ビジネスの世界では上司に自分の得意先に行ってもらうことは多い。

その際、お礼を言うのはビジネスマナーとして当然だが、上司は、その結果、自分が役に立ったどうかを知りたいのである。

 

そんなとき、たとえば「部長に訪問いただいたおかげで、事態が進展しました」という部下からの報告があれば、上司は自分の経験と能力が役に立ったと思えるだろう。

この部下からの報告は、まさに自分への承認なのである。

 

また、会議の席上、上司から意見、提案が出されることがある。

その内容は、部下が考えてもいなかったことが多い。
そんなとき、もし誰かが「そんな視点で考えたことはありませんでした」と率直に意見を言ったなら、上司は自分の経験と能力が参考になったと思う。

この部下の発言とその場の雰囲気は自分への承認を示している。

 

私は、究極的には、上司は部下との共通体験を求めていると考える。

このことをエリート社員に打ち勝つ! あなただけの出世術に書いた。

この共通体験こそが、上司への承認なのだ。

 

 

しかし、私たちはそんな上司へ承認とはほど遠いことをしている。

 

上司の得意先への訪問については、お礼を言えれば上出来であり、その後の状況について報告する部下はほとんどいない。

会議の席でも、上司から意見や提案が出されると不快な表情を浮かべ、そんな意見や案は実現不可能とばかりに反論する。

 

そればかりでない。

 

会議前の上司への事前説明、資料が不十分なことを棚に上げ、会議の席で上司が少しでも理解不足を示そうものなら、鋭くその点を突き、まるで鬼の首をとったかのような表情を浮かべる。

(前掲『「出世しぐさ」のすすめ』「なぜ、頭がよくても出世できないのか?」より)

 

上司と一緒に出張に行ったときでも、場当たり的に選んだホテルに上司を泊まらせ、

(前掲『「出世しぐさ」のすすめ』「出張の印象はホテルの部屋で決まる」より)

 

上司と一緒に得意先を訪問したときも、昼食の候補先など考えすらしない。

なぜ「できる社員」はビジネスマナーを守らないの「『できる社員』は昼食の候補先を用意する」より)

 

 

私たちは、仕事を進めていくうえで、また出世や昇進するうえで、上司との関係がいかに重要か知っている。
しかし、上司にも承認欲求があることを見落としている。

 

ほとんどの人が見落としている上司の承認欲求に気がつくと、人とはまったく異なった上司との関係を築き、出世、昇進への道を歩むことができる。

 

 

 

 

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2022年10月9日 | カテゴリー : 出世する人 | 投稿者 : ayanokouji