「ダルちゃん」現象とビジネスマナーへの風当たり

資生堂の「花椿」WEB版に掲載されていた『ダルちゃん』が共感されている。
2018年12月には単行本化され、さらに共感の輪が広がっている。

 

「ダルちゃん」は、24歳の派遣OL「丸山成美」として仮の姿で生きるダルダル星人。
毎朝、シャワーを浴びシャンプーし、ドライヤーで髪を乾かし、メイクし、ストッキングをはき、ハイヒールに脚をつっこみ出勤する。
出勤途中も普通のOLと同じように、ケータイデンワで音楽を聴きながら、今日の占いとニュースをチェックする。
会社では、コピーをとり、お茶を入れ、ウワサ話にも付き合う。
「ダルちゃん」は、「役割があるって、とてもいい。ルールがわかる。役割がわかる。だからダルちゃんは会社(ココ)が好き」と胸の内を語る。

 

 

普通のOLに擬態した「ダルちゃん」
しかし、「普通の人」になることはなかなか難しい。
でも、「普通の人」って何なのだろう?
そして、「普通の人」の真裏には本当の自分がいる。
本当の自分は何を求めているのだろうか。

 

この本が共感を生んでいるのは、「私も『ダルちゃん』だ!」と心で叫ぶ人が多いからだと思う。

 

 

 

最近、つらい話だが、ネット上でマナー講師の方に対する風当たりが強くなっている。
これは、「ダルちゃん」現象とけっして無関係ではない。

 

私たちは社会人となったとき、ビジネスマナーを体感する。
その習得はつらかった。
しかし、同時に、社会で生きていくためには、ビジネスマナーは必要だとも感じた。
「ダルちゃん」の言葉ではないが、自分の役目をこなすためには、一定のルールを定めたビジネスマナーが必要だからだ。

 

それゆえ、新入社員のビジネスマナーへの関心は高い。
みな、自分だけが浮かないように、「普通の人」になりたいと思っている。

 

だが、一方で、「それって、本当にビジネスマナーなの?」というようなビジネスマナーが次から次へと紹介されている。
2015年には「ハンコのお辞儀押し」(上司に印をもらうときには、上司にお辞儀をしているように印を傾けて押す)がTVで紹介された。
2018年には「とっくりでのお酌は注ぎ口から注がない。反対側の注ぎ口がない方から注ぐ」(理由:戦国時代に注ぎ口に毒を塗って暗殺する手法が多く使われた。注ぎ口は円(縁)の切れ目であることから相手に失礼に当たる など)、「緑茶はお祝いのお返しに贈ってはならない」(理由:「緑茶」は地域によってお葬式の時に手土産として使われることが多い)がTVで紹介された。

 

これらのマナーを紹介した人の意図はわからないが、紹介を受ける側は、真剣に受け止めている。
だが、「ハンコのお辞儀押し」の問題は、特定の組織では行われていることかもしれないが、それをビジネスマナーだと紹介していることに問題がある。
しかし、この点についても、いまだに「会社の内外で、相手に好印象を残しながら、仕事を成立させることが求められる。そのための型・形がビジネスマナー」と述べているビジネスマナー講師の方がいらっしゃる。たいへん残念だ。
所属する組織で好印象を残すために、ハンコを斜めに押すのは勝手だが、それはその組織の慣習(因習)であり、断じてビジネスマナーではないと考える。

 

「とっくりでお酌するとき、注ぎ口から注がない」は、議論する必要もなさそうだ。
なぜ、注ぎ口があるのだろうか? 注ぎやすくするために注ぎ口を設けたのではないだろうか。
そして、一般の宴席で、注ぎ口と反対側でお酌をしたときのことも考えてもらいたい。
お酌した人によほど説明しないと、「この人、なに?」と思われるのは必至で、「私に、何か思うところがあるのか」と感じる人も多いと思う。

 

「緑茶はお祝いのお返しに贈ってはならない」は、ちょっと前二例とは違うかもしれない。
たしかに葬式のお返しに緑茶をもらうことは多いが、緑茶より紅茶の方が相応しいと考えるのはマナー講師である。
「そんなこともあるので、私なら紅茶を選ぶ」と、「私なら」を付ければよかったと思うが、このことをマナーとして説明してしまったことが問題だったと思う。

 

 

また、現場で働く人は、執拗に細かいところにこだわるビジネスマナーにも辟易としている。
ネット上で、ノックの回数、お辞儀の角度、名刺のを渡し方など、ビジネスマナーの講師や本の言う通りにやらなくとも支障はなかったという記事が投稿されるようになった。
この点については、以前からビジネスマナーの講師や本の著者は接客業等の出身者が多いことから、ビジネスの現場との乖離が指摘されていた。
そして、一般のビジネスの現場での実務経験を持っていない人も多いので、つい、机上で新しいビジネスマナーを生み出してしまう傾向もあった。
そのため、名刺交換の場での相手への執拗な問いかけ、自分の印象付け、アピールが提案された。
現実のビジネスの世界で、初対面の場で、提案された内容を実施したならば、一般的には「この人、何なの?」と思われてしまうのではないだろうか。

 

一見、正しそうだが、現実的でないマナーや提案も注目され始めている。
ある記事に、「ハンカチを3枚持ち歩く」ことへの対談が載っていた。
ハンカチの3枚目は、ハンカチを必要とする「誰かのため」用だが、そのこと自体すばらしいとは思うが、「誰かに」遭遇するかわからない中、ハンカチを3枚持ち歩くことは現実的だろうか。予備に1枚持っていれば十分だと思う。
「ハンカチ3枚」も、マナー提唱者の考えであり、そのことをマナーとして紹介したために、読者側もマナーとして受け止めてしまっている。

 

 

以上のような状況が重なり合い、読者側はマナー講師が提唱するマナーに不信感を持つようになった。
ビジネスマナーは必要と考えつつ、「本当?」「そこまでやるの?」という疑念がたえずつきまとうようになってしまった。
「ダルちゃん」的視点で言えば、「普通の人」になりたくても、どんなビジネスマナーを、どこまで習得すればいいのか、さっぱりわからなくなってしまったといえる。
ビジネスマナーに対する安心感を失ったことが、現在の風当たりに通じているのだ思う。

 

 

いま、ビジネスマナーは大きな転機を迎えている。
マナーの本質は、相手への気づかい、思いやりだから、その根底にあるものは、相手を尊重するということだ。
その観点に立てば、たとえば、名刺交換の場で必要なことは、「名刺を片手で渡し、片手で受け取らない」ということである。
片手渡し、片手受け取りは、相手を尊重していないことにつながるからだ。
その点に注意さえすれば、名刺を「お渡しする」「いただく」という動作ができていれば〇である。
ここに、多くの要素を付け足そうと思うから、話はこんがらがる。
そして、付け足す要素の多くは、マナー講師の見解だから、余計に話が混乱するのである。

 

 

ビジネスマナーというと、不安になるものだ。
それは、「あれもできているか、これもできているか」と問われるからである。
そうではないと思う。名刺交換の例ではないが、「これさえできていればOK」という安心感を与えることである。

 

その上で、その人のキャリアに合ったビジネスマナーも考えてもらう、ビジネスマナーを通してキャリアアップすることも考えてもらうといった段階的なビジネスマナーが必要だと思う。

 

 

 

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