ビジネスマナーは「見える部分」から「見えない部分」にシフトする

いま、顔を合せなくても業務が進められるよう、みんなが工夫するようになった。
ビジネスも対面型から大きく変わることは明らかだ。

 

ということは、ビジネスマナーも大きく変わるということである。
ビジネスマナーはどのように変わるのだろうか?
また、どう変わらなければならないのだろうか?

 

そのためには、そもそも、「ビジネスマナーの目的は何か」ということを考えてみる必要がある。

 

みなさんにも試しにビジネスマナーの意義や目的をネットで検索してもらいたい。
非常に多くの記事を目にするはずだ。
驚くのはさまざまな説があることだ。

 

そのなかで、コミュニケーションが円滑になることを挙げているビジネスマナーの本や記事が多い。

 

じつは、私はそのことについて感覚的にはわかるものの、「ビジネスマナーが適切だと、どうしてコミュニケーションがよくなるだろう?」と考え続けてきた。
私の頭の中で両者がなかなか一本の線で結ばれなかったのだ。

 

私はビジネスマナーが適切だと、コミュニケーションが円滑になる前に、ある現象が生じているのではないかと考えた。
その現象とは、信頼である。

 

 

つまりビジネスマナーが適切に行われると、信頼が生まれ、信頼が生まれたことにより、コミュニケーションがよくなるのではないかと、私は考えたのだ。

 

もちろんビジネスマナーの目的に、信頼関係の構築を挙げるビジネスマナーの本や記事は多くある。
ただ、私は信頼関係の構築はコミュニケーションを円滑にするなどの他の意義とはけっしてパラレルではなく、信頼関係が生まれて、他の効果も生まれるのではないかと考えた。

 

しかし、私のように考えるビジネスマナーの本や記事を目にすることはなかなかなかった。
ところが、2019年に発刊された浅井真紀子さんが書いた『これ1冊でOK!社会人のための基本のビジネスマナー』のページをめくってハッとした。

 

この本の図解ページには、ビジネスマナーを適切に行った結果、信頼度がアップすること、それにより人間関係が円滑になること、仕事がスムーズに流れることが明確に記載されていた。
私が思い続けてきたことと同じだった。

 

問題は、人はどのようなときに信頼を抱くかということである。

 

この本では、「好感が持てる人だ」「一緒に仕事をしたい」「困ったときは助けてあげたい」「気配りのできる人だ」「社員教育ができている会社だ」「これから仕事をしていく上で安心だ」という人の思いが記載されていた。
たしかに、このように人から思われることは、信頼されている証拠である。

 

 

「信頼」を考える際、非常に参考になる言葉がある。

 

社会心理学者の中谷内一也氏は「信頼」を「自分の利害に関係のある何かを誰かに委ねて、その結果ひどい目にあうリスクはあるけれども、そうはならないだろうと期待すること」だという。
(『信頼学の教室』中谷内一也 講談社現代新書より)

 

非常に独特な表現のように思えるが、心理学の世界では共通する考え方だという。

 

ここで、浅井さんの本に記載されていた「好感が持てる人だ」「一緒に仕事をしたい」「困ったときは助けてあげたい」「気配りのできる人だ」「社員教育ができている会社だ」「これから仕事をしていく上で安心だ」をもう一度思い返してみよう。

 

この感覚は、仕事を任せた結果、失敗することだってある。
だが「そうはならないだろう」という期待ではないだろうか。

こんな期待が相手にあるから、仕事を任せたり、その会社と付き合っていきたいと思うのだ。

 

 

重要なことは、相手が「信頼」を抱くには、「何か」を感じたということである。

 

その「何か」をどこから感じたのだろうか?
いままでは、目と耳からだったのではないだろうか。
対面を前提としているいまのビジネスマナーは、まさに相手の目と耳から信頼を勝ち取ろうとした。

 

そこで、コロナ後のことを考えてみよう。
コロナ後も人との接触はけっしてなくならないが、その頻度と時間は大きく減っていくだろう。
それと同時に、ますます情報の受け渡しを中心にしたビジネスが加速していくことは間違いない。

 

情報の受け渡しを中心にしたビジネスは、対面型ビジネスと異なり、相手に見えない部分が非常に多くなる。
だが、相手をその部分を信頼しないとビジネスは成り立たない。
これが、コロナ後のビジネスの特徴なのだ。

 

ということは、これからのビジネスもビジネスマナーも、相手から「見えない部分」が「信頼」を得るポイントだということになる。

 

 

 

いままでのビジネスマナーは対面を想定していたから、相手に見える部分、聞こえる部分で信頼を得ようとしていた。


それはとても大切なことである。

 

だが、コロナ後は、「見えない」部分の重要性はドンドン増えていく。
ビジネスも、ビジネスマナーも、「見えない部分」を大事にしなければ成り立たない時代になったのだ。

 

いまの時代、「見えない部分」までも含めたものが、相手の信頼なのである。
みなさんや、みなさんの会社には、このことにいち早く気づいていただきたい。

 

綾小路 亜也

 

情報セキュリティ時代のビジネスマナー

おわりに
ビジネスマナーは「見える部分」から「見えない部分」にシフトする から

 

 

 

 

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