最新のネーミングの強化書 (PHPビジネス新書)
高橋 誠 PHP研究所 2015-04-18 |
みなさんは、多分ネーミングの重要性は十分に認識していることと思う。
しかし、この本を読むと、考えていた以上にネーミングはとてつもなく重要で、しかも今後、その意味合いは右肩上がりで増していくということがわかる。
著者は、エピローグで「私が本書で訴えたかったことは、ネーミングの重要性、ネーミングの発想法、商標のとり方、そしてブランドにすることの必要性です」と言っている。これがこの本の中身である。
著者はネーミング会社の草分け会社(株)創造開発研究所代表であるが、同社で生み出したネーミングの代表作は、「かもめ~る」「ゆうパック」「BIG EGG」「くるりんポイ」排水口などである。
「かもめ~る」(クジつき暑中見舞いはがき)は、夏の白いカモメの郵便屋さんのイメージとCome on mail(手紙よおいで)の意味を持っている。
「ゆうパック」は、郵便の「ゆう」と小包の「パック」の日本語と英語を組み合わせたものだが、「ゆう」にはもちろん、英語の「You」(あなた)の意味も込めたという。
私は、思わず、「えっ? そんな意味も込められているのか」と思ったが、みなさんは知っていただろうか?
さて、本書は『最新のネーミング強化書』というタイトルがついているが、ネーミングの教科書である。そして今後強化をしなければいけないという意味が込められている。
本書によれば、ネーミング開発には4つの基本ステップがある。
①「課題ステップ」 まず課題の概要を押さえ、作業計画を立て、コンセプトを決める
↓
②「発想ステップ」 チームで発想法などを駆使して、ネーミング・アイデアを発送する
↓
③「評価ステップ」 発想された何百案の中から推薦案、そして候補案を選ぶ
↓
④「登録ステップ」 登録案などを決め、特許庁に登録の申請をする。申請が通れば、商標登録となる。
そして、「発想ステップ」には5つの技法、「評価ステップ」には2つの技法があるという。
どうだろう? ネーミングは大変な作業を経たのちに、生まれるていることがわかると思う。
しかも、「発想ステップ」では、だいたい500案くらいが出るという。それを絞りに絞ってネーミング案にまとめるわけである。
そして、商標登録という手続きをとって完了するのである。
それにより、他人の使用を禁止する権利と、自分専用で使用できる権利を得られるからである。
なお、ちょっと順序が逆になったが、「商標」は商品とサービスの名前であり、社名も商品名・サービス名「商標」として登録できる。
サービス名の代表格は、「宅配便」である。「ゆうパック」も同様である。
ちなみに、「タレントの名前」は、サービス名として商標登録できる。
そして、ネーミングは良いブランドを作り出すことができる。
本書はブランドについて、次のように言っている。
「………人々に違いを認識させる『識別性』が必要です。またその商品を、購入しても安心という信頼感、つまり『保証性』も求められれます。さらに、価値あるものとして認められているという『信頼性』があってこそ、真のブランドといえます」
「………競合が激しく多様な商品の中で選ばれるという『選考性』と、他と違うという『差別性』が、ブランドの役割としてとても重要です」
そして、本書は冒頭にこんなことを言っている。
「青森や秋田などの日本の地名が、中国で現地の方に商標を押さえられました。困ったのは、青森リンゴやあきたこまちなど、地元産品の関係者です。
ネーミングではないのですが、カラオケや3Dプリンターも、実は日本人が最初の考案者です。もし、これらも特許という権利をとっておけば、莫大な権利料が入りました。日本人はとかく権利主張が弱いといえます。ですからネーミングをしたら、すぐに商標を登録して、あなたの名前を自分独占の名前にする権利をもつことをおすすめします」
どうだろう? ネーミングは大変な武器であり、大変な財産なのである。そして守らなければならない権利なのである。
特に、今後は、グローバル社会の中で考えなくてはならないものなのである。そんな危機感も肌で感じる時代になったからこそ、著者は、「ネーミングの教科書」とはせずに、『ネーミングの強化書』としたのだろう。
そして、今! みなさんの会社の商品名、サービス名も、ネーミングの立場から考え直してみたらどうであろうか?
部署名でもチーム名でもいい。その名前を見直ししてみたらどうだろうか? そんなことを会社に提案してみららどうだろうか? 思わぬ展開が図れるかもしれない。
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