『不祥事』

新装版 不祥事 (講談社文庫)

池井戸 潤

講談社 2011-11-15

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この本を買ったキッカケは同氏の『七つの会議 』を読んだからである。
『七つの会議』は、物語の奥底に「不祥事」が隠されていた。読み終えたあと、同氏の作品をチェックしていたところ「不祥事」そのものを扱っている作品があることを知ったからである。
この本を主人公花咲舞が展開する痛快ものとして読むか、「こんなことって絶対にあるよな」と感じながら読むかは読者次第だろう。
そして、どの立場をとって読んでも、池井戸氏自身が都市銀行勤務の経験があるだけに、銀行内部の不祥事や行内の人間模様はリアルに描かれている。
それだけに、話の展開にグイグイと引き込まれていく。

 

この本には八話が収められているが、第六話の「過払い」が秀逸である。
インターネットやパソコン雑誌に広告を載せ、中小企業相手にパソコンを販売する「どう見ても全うな人物にみえない」会社社長に、銀行窓口で100万円を過払いしてしまったのではないかということから話は始まる。
しかし、話は思わぬ展開をする。真相があったのである。そしてその真相には原因があったのである。

 

私は、これが実社会の怖いところだと思っている。
どんな企業でも不祥事や事件は起きる。
そして、不祥事が起きた企業では、この本のように事態を解明することになるが、「本当の話」は当の本人にしかわからない。
つまり、いくら解明したとしても、本当のところはわからないのである。
それは、当の本人にしかわからない事情や原因が存在するからである。
この怖さが『七つの会議』にはよく描かれていた。
この本もそうだが、池井戸作品はその当の本人しかわからない事情や原因というものが描かれている。
それだから、作品に深みが出て、読者の関心をグイグイと引きつけるのではないかと思っている。

 

池井戸作品に興味がある人は、ぜひ読んでもらいたいと思っている。

 

 

 

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2014年10月18日