2024.11.01更新
「部下に隙を見せない」という言葉はよく聞くが、組織運営のコツは「部下に隙を見せる」ことだ。時々は隙を見せないと、部下の本当の思い、声は拾えない。
ここに隙を作る意味がある。
じつは、かっての私の上司に「隙の達人」がいた。
私が管理職となったとき、その人が率いる部に配属された。
その人は5時を過ぎると、「おい、帰るぞ」とフロアー全体に響き渡るように叫んだ。
その人を見ると、すでに帰る身支度を整えているではないか。鞄やコートまで抱えている。
だが、その人は帰らない。
古参の課長の横に行っては、冗談を言ったり、ふざけたりしている。
その瞬間からだ!
隣の課長から「部長、ちょっとよろしいでしょうか」と相談が始まり、違う課の職員は「承認が欲しいのですが」と部長がいる場所に向かう。
私もちょっと判断に迷うケースの相談は、「この時間」を利用することにした。
この部長のことを思い出していると、仕事の後の宴席や一杯の場でふざけたことばかり言っている上司もいた。
問題はここからだ。
どんな研修でも「部下の話をよく聞きなさい」と言う。
あるいは、部下と接するには「傾聴の姿勢が大事」と言われる。
それはそのとおりだが、いかにも「さあ、あなたの話を聞きますよ」という顔をされ、落ち着いた態度をとられた場合、部下は本当に心の思いを話すだろうか?
また、いつも冷静で、取り澄ました人が、酒が入った懇親会を企画しても、部下たちは本当のことを言うだろうか。
この人たちが企画する一杯の場は、整然とした、話し合いの場であることは容易に想像できる。
そして、この人たちは必ずこう言うのだ。
「部下に気をつかっている。部下の話はよく聞いている。ときには酒も必要と思って懇親の場も開いている。部下の本当の声、考えを聞くためだ。」と。
満点の答案のように見えるが、そんなことで部下は自分の本当の思いを話すだろうか?
この人たちが企画する飲み会は、どこまで行っても堅苦しい。
部下が心を開く瞬間というのは、上司に隙があるときではないだろうか。
上司がおっちょこちょいのことをやる。部下たちはくすくす笑う。
こんな上司は、朝から晩まで、自分の失敗ばかり話している。
「オレ、朝、駅に着いたら定期券を忘れてさあ、そこで小銭を探そうと思ったら、財布に1万円札しかなかったんだ。新聞を買ってくずそうと思ったが、さすがに気が引けるだろ。だからコンビニでこれを買ったんだ。だが、切符を買うとき、自動発券機をよく見てみたら、1万円札でも買えるんだな」と話す。
部下たちは「そんなことも知らなかったのか」と笑うし、定期券を忘れた部長の表情まで想像できる。
それを、部下に隙を見せまいと思い、もっともらしいことを言う上司のことを、部下たちはどう思うだろうか。
確実に言えることは、そんな隙を見せまいとする人は、冗談を言ったりふざけたりする人が嫌いだということだ。
この人たちは、たとえ飲み会の場であったとしても、「もっと、真面目にやれ」と心の中で叫んでいたり、仮に部下がそういう行動をとると叱責する。
正直、この問題は人のキャパシティーの問題であり、性格の問題でもある。
しかし、一般論で言って、おもしろい人の方が、おもしろくない人より好かれるに決まっている。
企業や組織のトップの人と会ってみると、その人のおもしろさに惹かれることが多い。
企業や組織のトップというと、厳格なイメージを持つが、意外に、誰でも入り込める隙みたいなものを感じからだ。
そんな「何か」を持っている
組織の上に立つ人は、とかく「自分は、こういう手続きを踏んでいる」と言いたがるが、本当にそうかということを、ぜひ考えてもらいたい。
「自分は、部下の話や人の話をよく聞いている。ミーティングも実施し、極力みんなの意見をくみ上げるようにしている。一杯の席も多い。飲みニケーションだ」という組織の長がいたならば、それはたいへん結構なことだが、問題はその場の空気、雰囲気なのだ。
ここをよく考えてもらいたい。
重要なことは、部下たちが、本当に心を開いている場になっているかということだ。
隙を見せまいと考える人たちが嫌う、ちょっと冗談交じりの雰囲気の方が本音が出るのだ。
綾小路 亜也
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