2024.11.01更新
これからのリーダーに求められるものは何だろう? 「専門性」と表現できるかもしれないが、「専門性」はかなり広範囲な言葉だ。
日本の多くのビジネスマンが「内部労働市場」におり、ゼネラリストとして育てられていることを考えると、めざすべきは「特定の分野を極めたリーダー」だと考える。
「特定の分野を極めたリーダー」という結論に至ったにはヒントとなる本があった。
堀場製作所を設立した故堀場雅夫氏が書いた『仕事ができる人できない人 』(堀場雅夫 三笠書房)だ。この本は2000年ビジネス書ベストセラー5位に入っている。
本のなかに次のような記述がある。(下線は私が引いた)
私が言うゼネラリストとは、世間で考えられているような意味のものではない。一般的にスペシャリストは「狭く深く」、ゼネラリストは「広く浅く」といったイメージで解釈されているようだが、それは大きな誤解である。
ゼネラリストになるには、まず″一芸″に秀でることが大前提なのである。
つまり、ある分野でスペシャリストになり、そこで得た方法論をほかの分野にも活かして、そこでもスペシャリストになる。そうしてはじめて「広く深い」、本来の意味でのゼネラリストになることができるのだ。
記述内容から、「内部労働市場」にいる一般のビジネスマンを対象にしていることがわかる。
注目すべきは、ゼネラリストを「広く深い」と述べていることだ。
そのためには「″一芸″に秀でる」こと、すなわち「ある分野でスペシャリストになる」ことが必要だとしている。
「ある分野でスペシャリストになる」とはどのようなことだろうか?
このことを、「ある分野に『専門性』をもつ」と解釈してもよいが、「専門性」という言葉をつかうと中身がぼやけてしまう。
堀場氏も「専門性」という言葉をつかっていない。
「ある分野でスペシャリストになる」とは、業務のなかで「特定の分野を極めた」ことだと考える。
そう捉えると、いまいる会社で出世をめざすゼネラリストに合うからだ。
ただ、「極める」は、「これより先はないというところまで行き着く」(『デジタル大辞泉』)ことなので重い言葉だが、その判断は業務に一所懸命取り組んだ結果、精通し、自分だけのものをつかんだでもよいと思う。
しかし、「営業を極めた」などと言うのは範囲が広すぎるし、言い過ぎだ。
だからこそ、過去の継続した「結果」を整理し、何を極めたかを考えることが重要なのだ。
その結果、「新規開拓を極めた」「○○地域の営業を極めた」「採用業務を極めた」と言うことは可能である。
極めたものが大事
「極めた」ものがあることは大きな意味をもつ。
極めたものがいまの業務と関係しなくてもよい。極めたものが「ある」ということが重要だ。
極めたものがあれば、堀場氏が言うように、そこで得た方法論をいまの業務に活かせる。
組織運営、部下指導、業績に有効に働くということである。
極めたものを自分の軸とし、組織を引っ張っていけるのだ。
その姿は自らも貢献するリーダーである。
ところが、ほとんどのビジネスマンはそんなリーダー像をめざしてこなかった。
ジェフリー・フェファーはベストセラーとなった『悪いヤツほど出世する』(ジェフリー・フェファー 村井章子訳 日本経済新聞出版社)のなかで、リーダー像は数十年間ほとんど変わっていないと指摘し、その内容を次のように言う。
リーダーは信頼を得よ、最後に頼れる人であれ、真実を語れ、人に(とくに顧客や部下に)尽くせ、控え目であれ、思いやりと理解と共感を示せ、等々である。
まさに私たちが教わり、めざしてきたリーダー像である。
考えたいことは、このようなリーダー像は普遍的だということだ。誰にも当てはまってしまうということである。
リーダーの中身も見えてこないし、リーダーになった過程もわからない。
「それではさすがにまずい」ということで、仕事の進め方や時間管理術などを織り込んだ「できる人」を書いた本が生まれたのだと思う。
だが、よくよく考えれば、これらの本が述べる仕事の進め方や時間管理術なども、やはり誰にも当てはまってしまう。
理想のリーダーをめざすこと、できる人になることは大事だが、問題は、そのような誰にも当てはまってしまうことで、ポストを射止めることができるかということである。
内容が普遍的だけに、それらをもつ大勢のなかで戦わなければならなくなるということだ。
今の時代、普遍的な内容で選ばれることは難しくなっている。
それに比し、特定の分野を極めるということは、その人にしか当てはまらない。
それゆえ特定の分野を極めることは重要なのである。
綾小路 亜也
特定の分野を極め、自らも貢献するリーダーになる から抜粋
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