2024.11.02更新
そもそも「自分の言葉」って何だろう? それは自分の体験が織り込まれた言葉ではないだろうか。
まず、私たちが考えなくてはならないことは「借り物の言葉」だ。
というのは、私たちが語る言葉のほとんどは、借り物の言葉だからだ。
ブログにも、「常識にとらわれない」「正義を振りかざさない」「アウトプット力を高める」といった言葉がずらりと並ぶ。
これらの言葉もブログを書いた人が生み出した言葉ではなく、借り物の言葉だ。
自分の言葉ではないのだ。
私たちが語る言葉のほとんどは「借り物の言葉」
借り物の言葉に人は動かない。
そのことを考えていきたい。
映画『ザ・ワーズ 盗まれた人生』のなかで、小説を盗作された老人は、盗作した作家に向かって、「言葉を奪うなら、苦しみを背負え!」と叫ぶ。
「苦しみ」は小説を書いた老人の苦しみであり、苦しみが言葉を生み、言葉が文章に、文章が小説になったのだ。
言葉にはその人が経験したことが詰まっている。
その人が歩んだ人生そのものといえる。
だから、借り物の言葉をいくら使っても、そこには自分の経験がない。
自分の経験に裏打ちされていない言葉を使っても、自分を表現したことにはならない。
自分の言葉で話したことにならないのだ。
画像はAmazonからお借りしました。
とはいうものの、自分の言葉で話すことは難しい。
ほとんどのビジネスマンは、「構造改革」「イノベーション」「常識にとらわれない発想」「アウトプット」などの言葉を使うことに満足し、そこで終わってしまう。
自分の言葉を、自分が気づいたこと、わかったこと、知ったことを表現するに言い換えてもよい。
仕事を進めてみて、顧客対応をして、こんなことに気づいた、わかったでかまわない。
それを表現してみることが大事だ。
『コロナ後の「たった一つの出世の掟」』では、次のような表現を例に挙げた。
「この商品説明に顧客はいつも怪訝(けげん)な顔をする」
「いまのやり方にもどかしくなる」
といったような表現だ。
使った言葉自体はすでに存在しているが、「怪訝な顔」には、怪訝な顔を見た自分がいる。
「顧客は疑わしい視線を送る」といった表現でもいい。
自分が感じたままをストレートに表すのだ。
「もどかしくなる」もそこにはやってみて歯がゆくなった自分がいる。体験に基づいた言葉だ。
体験に基づく言葉には情報がある
ところが、私たちはここを、「顧客の理解を得られない」「いまのやり方は非効率」といった表現をしてしまう。
その方が洗練された表現かもしれないが、そんな表現をすると前に進まなくなる。
具体的な解決策に結びつかなくなるのだ。
「怪訝な顔」なら、「本当なの?」「怪しいよね」と顧客が思っていることが伝わる。
すると、どこを訝しく思ったのかと前に進める。
同様に、「もどかしい」と表現されていたならば、イライラした気持ちになったことが伝わる。
そうすると、「どこにイライラしたのか」と前に進める。
自分の言葉には体験した情報があり、借り物の言葉には体験に基づく情報がない。
情報がない言葉では、前に進むことができない。
私は会社社会のなかで出世した人を見てきた。
エリートも出世したが、現場から抜擢された人も多くいた。
現場から抜擢された人には特徴があった。
現場の状況を自分の言葉で話せる人だったということだ。
そこには会社や上の人が知りたい情報があった。
会社は情報を持っている人を抜擢したのだ。
綾小路 亜也
借り物でない自分の言葉には情報がある から要約
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