2024.10.04更新
エリートたちは自分たちの意見は正しいという自信をもっている。
しかし正確に言えば、「自分たちの中では正しい」ということではないだろうか。
彼らの意見は、彼らのコミュニティーの中で正しいに過ぎないのだ。
「コミュニティ内での真実」という言葉をケネス・J・ガーデンとメアリー・ガーデンは『現実はいつも対話から生まれる』のなかでつかっている。
エリートたちの意見はまさにコミュニティ内での真実なのだ。
なぜエリートたちは自分たちの意見は正しいと思うのだろうか?
それは、「自分たち」が考えたことだからだ。
「自分たち」と考えるのは、人間がもつ分断本能が影響している。
世界的ベストセラーとなった『FACTFULNESS』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド 日経BP社)では、
世界を正しく見ることができない10の人間の本能を紹介している。
その一番目に挙げられているのが分断本能だ。
そこには「世界は分断されている」という思い込みがある。
そこで使われるのは、「私たち」「あの人たち」という言葉だ。
つまり、「私たち」を意識することが、他者を排除することに通じているということだ。
エリートたちが「私たち」という意識を強くもっていることは明らかだ。
その意識は、部署を代表する人たちが集まり、日々打ち合わせや懇親を重ね、同じ時を送っているだけに強固だ。
そんな彼らが、自分たちの意見は正しいという自信をもつのは、無理からぬことかもしれない。
しかし、それは自分たちの中だけで正しいにすぎない。
そのことにエリートたちは気づかないのだ。
これがエリートたちの悲劇である。
そして、実際に悲劇が起きている。
2001年に破綻したエンロンだ。
このエンロンをマッキンゼー出身のCEOジェフリー・スキリングなどのエリートたちが仕切っていた。
エンロンは売上高全米7位、世界16位の巨大企業だった。
エンロンはもともと、パイプラインをつかった天然ガスの輸送を業としていた。
天然ガスと電力のマーケットの規制が緩和されると、積極的にデリバティブを取り入れたエネルギーのトレーディングに傾斜した。
その後、排出権から金属、パルプ、紙、その他特殊な化学製品など産業用の商品に至るまで、取引可能なものなら何でも新しいマーケットを作っていった。
そればかりではない。ブロードバンドマーケット、水道事業などにも進出し、インド・ダボールに世界最大規模の天然ガス燃焼式発電所を建設する。
しかし、エンロンの利益にはキャッシュが伴っていなかった。実際の利益もなかった。
エンロンは将来見込まれるであろう利益を、会計上次々と計上し、負債は簿外で特別目的事業体に付け替えていたのだ。
どういうことか?
エンロンでは、将来、利益を得るものを見つけ出すアイデアが重視され、その実行には興味が払われなかった。
実際、エンロンが手掛けた事業のほとんどは収益を生み出さなかった。
つまり、エンロンのエリートたちは結果よりアイデアが重視したということだ。
そして自分たちの方策は正しいと信じていた。
私たちがエンロンから学ばなければならないことは、
自分たちの考えは正しいと思い込んでいても、それは自分たちのなかで正しいというにすぎないということだ。
同じ価値観やものの見方をしている人たちだけで出した結論は危険だということである。
エリートたちの結論は正しいとはけっして言い切れない。
エリートたちに気おくれするのではなく、エリートたちと違うものの見方をする人の意見がとても大事なのだ。
日本の企業でも、エンロンのようにアイデアで回すといったことが多かれ少なかれ行われていると思う。
しかし、コロナ後の今の厳しい環境を考えれば、アイデアや策の失敗は許されないはずだ。
いま、エリートたちの意見に追随する人が求められているのではなく、エリートたちと違う意見を言える人が求められている。
綾小路 亜也
エリートの意見は本当に正しいと言い切れるか? から抜粋
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