新型コロナウイルス感染によって、私たちはいままであまり意識することがなかった「人との距離」を認識した。
私たちはソーシャルディスタンス(social distance)をとるようになった。
ソーシャルディスタンスは直訳すると「社会的距離」になるが、最近、「身体的距離」と言ったほうがよいのではないかという意見もある。
ソーシャルディスタンスをとるようになると、今度は、パーソナルスペース(personal space)という言葉も耳にするようになった。
パーソナルスペースは他人に近づかれると不快に感じる空間であり、密接距離・個体距離・社会距離・公共距離の四つのゾーンには具体的な距離が示されている。
言ってみれば「対人距離」である。
「社会的距離」も「対人距離」もそれは物理的に測れる距離だが、私たちはそんな物理的な距離から「距離感」も考えられるようになった。
この「距離感」に気づくと、いままで見えていなかったものが、見えるようになってきた。
私たちは人との関係において、距離感を縮めることばかり考えていたということだ。
初対面の相手への質問、会話のなかで共通項を探ろうとすること、雑談の目的など、すべて距離感を縮める行為だった。
そのなかでプライバシーに踏み込む質問も飛び出たのである。
距離感を縮めようとすること自体はけっして悪いことではないが、初対面の人と自分、取引先と自分、ユーザーと自分といった距離感も考える必要があったのだ。
その距離感を無理に縮めようとすると問題が起きる。
また、親しくなった場合でも、取引先と自分、ユーザーと自分、あるいは上司と自分といった一定の距離感を保っていくことも必要なのだ。
ビジネスでの失敗は、たいがいこうした距離感を読み間違えたときに起きている。
ビジネスマナーの本によく記載されている自己紹介についても、その場にいる人との距離感を考えることが必要だ。
考えなければならないことは、そのような自己紹介をどのような場で、どのような距離感の人を前にするのかということだ。
自己紹介の場は一律ではない。
入社式などで役員が居並ぶ席ですることもあれば、配属された部署の人たちの前ですることもある。
取引先との初対面の場ですることもあれば、懇親会の席ですることもある。
場も違えば、自己紹介を聞く人との距離感も、それぞれ異なるはずである。
「距離感」を考えるうえで、最近のビジネスマナーの本の変化について触れておきたい。
初対面での会話、自己紹介の記述がだいぶあっさりしてきた。
その部分の記述がない本もある。
この変化をどう見るかである。
あっさりしてきた理由は、これだけ「個人情報、個人情報」と言われる時代にあって、初対面の場で相手の情報を得ようとすることは、やはりおかしいと考えているからではないだろうか。
またプライバシーに踏み込むおそれがあることも考えているのだと思う。
自己開示についても、親しくなってからの自己開示ならば、より親しくなれるかもしれないが、初対面の場での自己開示に違和感を持つ人もいるし、その内容を不快に思う人もいるからだと思う。
そのようなことを考え合わせると、初対面での会話、自己紹介はごごく普通の内容となる。
それゆえ初対面での会話、自己紹介の記述があっさりしてきたのではないかと、私は考えるのだ。
私たちは「距離感がある」という言葉をよくつかい、その言葉にはたいがい、いい意味が込められていなかったが、これからの時代、「距離感を保つ」ということが必要ではないだろうか。
「距離感を保つ」というと、「距離感を縮める」反対語のようなニュアンスで受け取る人もいるかもしれないが、それは互いの領域を尊重するということではないだろうか。
プライバシー権の基礎概念についての学説を丹念に読むと、「侵入」という言葉がよくつかわれている。
人の領域に対する「侵入」という意味だ。
「距離感を保つ」ということはその人の領域を尊重することであり、それはその人を尊重するということである。
私は、これからの時代のビジネスマナーは、人を尊重することを軸にして、成り立っていくと考える。
綾小路 亜也
㉕ 新型コロナウイルスが教えてくれた人との距離感 から
※情報セキュリティ時代のビジネスマナーのポイント
①距離感を保つことも大事
②距離感を考えた自己紹介をする
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