席を譲るとき、どう声をかけますか?

席を譲るときの声の掛け方は、相手の反応を見ながら、体験で身につけている。
それゆえ、人それぞれ違うし、言葉ではうまく説明できない部分もある。
ところが、声のかけ方を、言葉を分解しながらうまく説明している人がいる。
その説明は、席を譲るときに限らず、部下との付き合いやビジネスでも必ず参考になる。

 

話し方の専門家である渡辺由佳氏は「もしよろしければ、おかけになりませんか?」と言い方で席を譲るという。
これだけならば、そんな言い方をしている人は多くいる。私もそうだ。
問題は、この言い方がどういう構造になっているかということである。

 

「おかけになりませんか?」という語尾に着目してもらいたい。
渡辺氏はこれを「否定形+疑問形」になっているという。
たしかに、「おかけになりません」は否定形だ。それに「か」という疑問形がついている。

 

こうした「否定形+疑問形」にすると、「あくまでも選択権は相手にあり、私はあなたの希望に沿いますよ」という意思を伝えることになると、渡辺氏は言う。
何気につかっている「おかけになりませんか?」だが、こういう構造になっていたのだ。

 

 

この「否定形+疑問形」はあらゆる場で活用できると思うが、私は部下との間でつかってみたらいいと考える。
というのは、ほとんどの上司がこの「否定形+疑問形」をつかっていないからだ。私もそうだった。
私の例でいえば、部下と仕事に集中しているとき、部下を気づかい、休憩を促す意味で、「ちょっと休もうか」という声をよくかけた。
いま考えれば、部下はこの言葉を、私からの提案と受け取ったと思う。
じつは部下はもう少し仕事を続けたかったのかもしれない。だが、上司の私から「休もうか」と声をかけられたなら従わざるを得なかったと思う。
これを「ちょっと休まないか」と声をかけたならば、部下は「もう少しやります」と言ったかもしれないのだ。

 

これと同じような言葉もよくつかった。
仕事がうまく進まない部下を見て、「一緒にやろうか」という声もよくかけた。
部下に手を差し伸べたつもりだったが、そう言われると部下はことわりにくかったと思う。
だが、もし「一緒にやらないか」と声をかけたならば、部下は「もう少し自分でやってみます」と言ったかもしれない。

 

残業する部下を気づかい、「帰ろうか」という声もよくかけた。
自分と一緒に帰ることにより、部下の仕事にストップをかけたかったからだ。
そう声をかけられると、部下は帰り支度をしなければならなくなる。この場合も「帰らないか」が正解だったと今にして思う。

 

 

よく考えてみると、「ちょっと休もうか」「一緒にやろうか」「帰ろうか」は自分が主体となり、相手に投げかけている言葉だ。
「自分はこうしたいと思っているけど、どう?」と相手にきいていることになる。
これを「ちょっと休まないか」「一緒にやらないか」「帰らないか」と言えば、渡辺氏がいうように相手に選択権があり、部下は自分の気持ちを伝えることができたのだと思う。

 

 

日本の会社や組織では、ほとんどの上司が部下を気づかっている。
だが、部下の声が反映した多面評価や他の人が実施した部下へのヒアリング結果を見ると、上司は驚く。
自分はいつも部下のことを気づかい、声をかけていたのに、部下は「意見を聞いてもらっていない」「やらされ感がある」などと答えていることが多い。
いままで述べてきたように、もし「否定形+疑問形」で聞いていたならば、きっと違う展開になっていたのだ。
部下の本音がわからない上司は参考にしたらいいと思う。

 

 

渡辺由佳『好かれる人が絶対しないモノの言い方』の内容から、題材にしました。

 

 

 

出世や昇進をめざす人へ

 

上司の解決案を、「指示された」と受けとめてしまう部下がいることを、拙著『ビジネスマンが見た 出世はタイミングで決まる!』に書いた。

 

そのことで、出世のタイミングを逃してしまう人がいる。
どういうことだろうか?
部下が問題を起こしたとき、相談を受けた上司は、部下を助けるために解決策を必死に考え部下に示す。
ところが、うまく進まなかったり、こじれたりすると、「自分は上司の指示に従っただけだ」、さらには「自分はやらされた」という部下がいる。
問題が大きくなると会社も知ることになり、会社は部下に上司の関わりについて確認する。本件の関わりだけでなく、日頃の関わり方も聞く。
その結果、いつもプレッシャーを与える上司と受けとめられてしまうことがある。

 

上司は部下を助けようと思っていたのに、とてもやりきれない気持ちになる。そんな部下はいかがなものかと思う。
だが、私は、このことを出世のタイミングを逃さない注意点に挙げた。(同著「部下の口から解決策を言わせる」参照)

 

部下は、上司が考える以上に「やらされ感」を持っていることを頭に置いておいたほうがいい。

 

 

 

 

 

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