2024.08.05更新
トヨタ営業スタッフで、直販・割賦販売台数全国1位の中野麻由美さんは「プロセスは目標達成のための道のりにしか過ぎない」とキッパリ言います。
「結果とプロセス どっちが大事?」という議論が尽きないなか、中野さんは「結果=目標達成が重要」と言うのです。
なぜ中野さんはそのように言い切るのでしょう?
中野さんの営業への考え方に迫ってみました。
中野麻由美さんは、2007年に営業スタッフになりましたが、4年目には年間販売台数が160台を超えて全社で1位となり、そこから連続してトップセールスを続けています。
160台といえば、およそ2日に1台、車を売っていることになります。
中野さんが書いた『トヨタトップセールスレディが教える 永遠にトップをいくためのセールス術』を読むと、
プロセスとはどのようなものかわかってきます。
そこには、結果とプロセスの間を行き来しているビジネスマンやビジネスウーマンへの解があります。
『トヨタトップセールスレディが教える 永遠にトップをいくためのセールス術』
中野麻由美さんのプロセスは次のとおりです。
最初に目標を立てる。
その目標を達成するために月に何台売らなければならないか、週に何台売らなければならないか逆残する。
週に売らなければならない台数がわかったら、何件の商談約束をとらなければならないか、過去の商談成約率から算出する。
商談件数がわかったら、呼び込み件数を考える。ここも過去の呼び込み決定率を基に算出する。
そうすると、いま! 全力で取り組まなければならないものは、呼び込みということになる。
私たちは車のセールスと言えば、ディーラーのショールームで、セールスマンとお客さまとが話し合っている姿を目に浮かべるますが、その元にあるのは、お客さまを商談へと導く呼び込みなのです。
この呼び込み件数が成約台数を決めているのです。
このことは、営業では意外に忘れがちです。
数字に苦労する背景には、必ず見込み客不足があります。
見込み客が少ないと、必ず営業不振に陥るのです。
見込み客を生むという動作が必要ということです。
中野さんの本を読んで、深く感じ入る言葉は、「シナリオ」です。
中野さんの場合は、お客さまごとに、成約に向けたシナリオができています。
お客さまからの情報に基づき、シナリオを立てられるから、呼び込みへ、商談へと移り、成約に至るのです。
このことも忘れがちです。
売る方がシナリオを持たずに、漠然とお客さまと接していただけでは、時間の無駄になるし、けっしてクロージングに向かうこともありません。
もう一つ、中野さんをトップセールスに向かわせている大きな理由があります。
「3年残価ローン」という武器です。
「3年残価ローン」を簡単に説明すると、残価を設定することで、約半額分の支払いを将来へ繰り越すローンである。そのため、月々のローン支払いは半額になる。
中野さんは、この「3年残価ローン」を武器としたのです。
この話には、営業を考えるとき、重要な要素が含まれています。
営業の世界で優績者と言われている人たちは、自社商品のある部分に強烈に惚れ、その部分を、自信を持ってお客さまにアピールすることで実績を上げていることが多いからです。
生命保険のトップセールスも、そんな特徴を持っています。
考えてみれば、「3年残価ローン」は、べつに中野さんだけでなく、トヨタのセールスはみんな武器として持っているはずです。
それなのに、なぜ中野さんが……、というところが、営業の差なのです。
べつに「3年残価ローン」でなくてもかまいませんが、自社商品の仕組みを理解し、そこからヒントを感じ取った人がトップセールスになります。
これは普遍的な話ではないかと思うのです。
車販売の世界には、「営業の神様」と呼ばれている人がいます。
車を1年間に425台、15年間で13,001台を売り、ギネスブックに登録されたジョー・ジラード氏です。
注目すべきは、ジラード氏が言っていることと、中野さんが言っていることとはよく似ていることです。
ジラード氏が所属しているディーラーは、稼ぎどきである土曜日に店を閉めることになりました。
そんな状況下、ジラード氏がやったことは次の4つです。
1 景気の悪さを埋め合わせるべく、かける電話の本数を増やした。
2 紹介による顧客の開拓にいっそう力を入れた。
3 ダイレクトメールの数を増やした。
4 地元銀行に働きかけ、有利なローン条件を引き出した。
そしてジラード氏は、準備万端で一日、一日を迎えたのです。
『営業の神様』
中野さんの「リーマンショックもデフレも関係なし!」という言葉が思わず浮かびます。
中野さんも、お客さま宛てのオリジナルなダイレクトメールをよく出しています。有利なローン条件も出しています。
トップセールスには共通するものがあるのです。
綾小路 亜也
関連記事:中野麻由美さんとジョー・ジラード氏を紹介しています
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