野村證券のビジネスマナー :トイレは入り口から遠いほうを使う

2023.11.06更新

 

ビジネスマナーはさりげなく、あとで気づかいを感じさせるほうがいい。

「さりげない」「あとで気づかいを感じさせる」ビジネスマナーを考えるとき、格好の材料となる記事がある。

野村ホールディングスグループCEOであり、野村證券取締役会長でもある永井浩二氏が書いた記事だ。

 

野村證券日本橋本社ビル

 

そこには「トイレは入り口から遠い方を使う」と書かれていた。

 

 

この記事は、2017年5月1日発行のプレジデント「できる大人の満点マナー」に掲載されている。

 

野村證券を含む野村ホールディング傘下の会社には「お手洗いで、手前を人に譲る」と書かれてあり、

その理由を「入り口から近いところは忙しい人のためのもの。急いでいないなら、自分は奥を使ったほうが相手に失礼がなく、かつ合理的」と説明している。

 

男性トイレのことを述べていると思うが、「さすが、天下の野村證券」「それゆえ野村證券」と唸りたくなるような内容だ。

 

 

記事の内容

 

男性トイレの場合、使用する人は間違いなく手前を使いたがる。

 

ささっと済ませ、ささっと出ていきたいからだ。

急いでいる人は、なおさらだ。

あまり人目につきたくないということもあると思う。

 

いわば、手前を使うということは、自然の動作なのだ。

 

そんな誰もが使いたいと思う手前を、人のために残しておくということは、

ひと手間、ひと気づかいをかけたことになる。

 

これが本当のビジネスマナーだと思う。

 

 

永井氏は、急いでいる人のためと説明しているが、

それ以外の感覚も野村ホールディングの社員はきっと持っているはずだ。

 

来客者が人の会社のトイレの奥に回ると、「この人どこの人? と思われはしないか」と要らぬ気もつかう。

 

手前が詰まっていると、トイレに入った瞬間、視覚的に威圧感を覚える。

 

こんなことすべてを、野村ホールディングの社員は考えていると思うのだ。

 

 

 

こんな気づかい、心づかいというものは、すぐには結果に出ない。

 

しかし、来客者はトイレを利用しているうちに、

「なぜ、毎回、手前のトイレを使用することができるんだ?」と気づく瞬間が訪れる。

 

その理由に、はたと気づいたお客は、その会社からけっして離れることはないだろう。

これが、ビジネスだと思う。

 

 

私たちがビジネスマナーの本に書かれている提案に違和感を持つのは、

「そんなこと、やって大丈夫なの?」という不安が心にあるからだ。

 

その不安の原因をたどっていくと、名刺交換の場での過度な自己紹介のように、自分のために、ひと手間かけてしまっている。

 

 

自分のためにひと手間かけるのではなく、

人のためにひと手間かけることが、ビジネスマナーなのだ。

 

綾小路 亜也

 

 

来客者のために「ひと手間」かける

 

 

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