『生き方』 

生き方―人間として一番大切なこと

稲盛 和夫

サンマーク出版 2004-07

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不朽のロングセラー、京セラ創業者であり経済界の重鎮である稲盛和夫氏の著名な本である。
正直言って、こういう堂々とした構えが出来上がっている書籍に対し、本の感想とか書評というものは気が引ける。それを寄せつけない本の風格というものがあるからだ。
そして、まさにこの本は人としての「生き方」を示しているのである。

 

本を読み終えて、非常にすっきりとした、心が開けていく感じを覚えるのは、この本に成功者としての驕りがないからである。
そして、現場の第一線で苦労に苦労を重ねてきた著者が掴み取った生き方に感銘、共感を覚えるのである。

 

本の中で、著者は、この世に生まれてきた意味を、「生まれたときより少しでもましな人間になる。そのために魂を鍛える」と述べているが、まさにその通りではないかと思えるが、 一般の人にわかりやすい表現にするならば、日々生きることに、日々の仕事に真向かいし全力を出すことに尽きることなのではないかと思う。
確かに、毎日の仕事に精一杯取り組んでいると、本中に述べてあるように、心が落ち着くというか、心が磨かれていくような気がするのである。

 

そして、一生懸命に取り組んでいると、そこに神が与えた「知恵の蔵」から新しい発想やひらめきを得る。
また、現場にいる「神の声」も聞くことができる。
これは、真実である。
多くの本に書かれている成功者は、今日を、今を、今の仕事に真向かいしている人たちである。
そういう姿勢と努力を惜しまない人に、神はひらめきと発想を与えるのである。
世の成功者のパターンは様々あるが、この部分は共通しているように思う。

 

そうすると、日々の姿勢が重要ということになるが、著者は考え方が非常に重要であると述べている。
このことは、著者が生み出した下記の方程式をよく考えるとわかる。

 

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

 

この方程式をじっくり見て考えると、なるほど人生・仕事の結果に熱意と能力があることは深く納得できる。
しかし、そのベクトルがどこに向かい、どのような結果となるかは、本書がいうまさに「考え方」で決まるのではないだろうか。
しかも、著者は、その考え方には、プラスとマイナスの両符号があるとしている。
考え方が邪だと、結果としてとんでもないことを生むことも示唆している。
つまり、「考え方」が大きな舵取り役を示していることになる。
非常に重要なことだが、見落としがちなことだと思う。

 

また、本書では「利他」という考え方を紹介している。
平たく言えば、自分ではなく、他人のことを思いやること、他人の利のために生きることを言っているが、言葉で言うのは簡単だが、実践するとなると非常に難しいことでもある。
そして、他人のためと言いつつも、やはりその中心には自分のことが残ってしまうのではないだろうか。
著者のように本当に自分中心で考えて判断しているのではないかという自問自答が必要なんだと深く思うし、世の中には、口では、他人のためと言いつつも、実は自分のためということも非常に多いのではと思っている。

 

著者が掴み取った「生き方」が伝わる、非常に立派な本である。

 

2014年2月28日