なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?
フィリップ デルヴス ブロートン 関美和 プレジデント社 2013-09-20 |
色々な見方があるが、この本を読むと、およそものごとの根幹に迫るということは こういうことではないかと思えてくる。
拙著『サラリーマンの本質』 序章 不思議に思っていることで、「なぜ営業のやり方を記した本がないのか」と疑問を呈している。
それと、同じ発想だと思う。
本書の構成は、ざっと以下の通りである。
経済学や、経営学という学問体系があるのに、 営業(セールス)は、 研究対象や学術対象からはじき出されている。
さらに、営業、セールスと言うと、本当は企業の根幹をなしているはずなのに、 一段低く見られる傾向がある。
それは、セールスというイメージがどうしてもつきまとうからかも知れない。
また、属人的な要素が大きいからかも知れない。
よって、営業、セールスというものは、研究対象、学問とはまったく別物であると考えられ、ハーバード・ビジネス・スクールでも他の戦略的研究は行うのに、営業は教えない。
そこで著者は、実際に名だたるセールスマン(起業家と言えるかもしれない)に、インタビューを重ねセールス成功の共通項を探ろうとする。
タンジール在住の土産物店の店主や、住宅改修業者、はたまた有名な画商、宝石店経営者等を根気よくあたっていく。
また、セールスについて書かれた莫大な書籍も、紹介していく。
そして、優秀なセールスマンには、共通項があることに気づく。
それは、「打たれ強さ」と「楽観主義」である。
以上がこの本の要約である。
ここからが、私の感想である。
サラリーマンの視点からこの問題を考えていく。
どの企業も、売上があるから成立している。
そして、企業トップは、「トップライン(売上)が最も大事だ。トップラインがあるから我が社は成り立っているのだ」と声高に叫ぶ。
確かに、その通りである。
企業の人件費や固定費等のいわば企業活動に要する費用は、すべて売上から支出される費用であり、その大元は間違いなく営業の結果である「売上」ということになる。
ところがである!
その割には、営業は、「現場任せ」になっているのである。
厳密に言うと、確かに企業は、売るべき「商品」に細心の注意を払い、その販売(営業)には、完璧とも言える目標数字に対する管理体制を構築するが、 やはり、売り方(セールス)は、「現場任せ」「人任せ」になっていることが多い。
一方で、この本にも紹介されているように、「売り方」について、完璧なマニュアルで徹底する企業も存在する。
しかし、徹頭徹尾、マニュアル化された「売り方」であり、いわゆる営業のやり方ではないことに注意する必要がある。
上記から、営業(セールス)は、まさに人に付随するものとなり、完璧なマニュアルで売り方を徹底する企業のセールスマンは、非常に味気ないかつ厳しいセールス活動を展開することになる。
また、企業に所属している人は、こんな実感がないだろうか。
入社以来、参加した研修を思い出してもらいたい。
部下の指導、職場に関するもの、組織運営に関するもの、商品研修、システム研修。コンプライアンス研修……。
そして、成果を上げた組織や人の紹介。
こんな研修ばかりではなかっただろうか。
つまり、よくよく考えてみると、営業のやり方、セールスというものは取り上げられていないのである。
また、営業、セールスという言葉の響きの問題もある。
新入社員や、若手社員は、配属先が営業部門と知らされると、ガッカリする。口には出さないかもしれないがガッカリする。
そして、心で「大変だ」と思う。
これから数字やノルマの世界に入るんだと自分に言い聞かせる。
こうした若い社員は、ほとんどが、企画部門、業務部門、商品開発部門等手を汚さない、かっこいいと思われる部門を希望しているのだ。
さらには、企業自体も営業が一番と言いつつも、企画部門、業務部門、商品開発部門に重点をあてる。優秀な人材を集めていく。
その結果、拙著『サラリーマンの本質』で述べたように、企業内で、「格付け」がなされてしまう。
営業部門は、「現場」という括りで、一段低く見られてしまう。
一方、世のビジネス書はどうであろうか?
ここも、営業(セールス)というものを定義することができない。
そのため、主体をスーパーセールスマンや成功者にし、かれらの実施していること、 特徴に焦点をあて、この類の本を出版し続けている。
そしてこんな本の代表例に、保険で成果を上げている人の本がある。
しかし、この人たちは、サラリーマンというよりは、手数料あるいは、高率の歩合で飯を食っている独立起業人なのである。
このことを、忘れてはならない。
つまり、一般のサラリーマンとは違うのである。一般のサラリーマンで営業に配属された人とは違うのである。
一般のサラリーマンは、確かに、業績や成果により年収は変動するが、飽くまでも、固定給をベースにしている。
そして、その属性は、どこまで行っても、数ある部門の内、たまたま、営業に配属された人なのである。
ここを混同しているから、議論がややこしくなっているのだと思う。
また、一般の営業部門に属しているサラリーマンにとって、前述のスーパーセールスマンの本を読むと、「こんなことまでしなくてはいけないんだ。やはり自分とは違うんだ。姿勢が違うんだ。才能が違うんだ」と焦りにも似たような気持ちになってしまう。
こうした本を読んで、かえって、悩みが深くなるサラリーマンもきっと多いはずだ。
私は、一般のサラリーマンには一般のサラリーマンの営業のやり方があるのだと考えている。
ここを、「営業、セールス」で、括ってしまうから、議論は進まない。
結果、スーパーセールスマン議論に戻ってしまう。
スーパーセールスマンは属人性が高いから、企業は、結局は、それを研修に取り上げない。
こんな構図ではないだろうか。
乱暴な表現にはなるが、企業の研修にも取り上げられない営業は、結局は、人の問題となりここで一段、格が下げられる。
そして、人の問題にしてしまうから、今度は、徹底した管理に注力する。
違うのである!
一般のサラリーマンには一般のサラリーマンのやり方があるのである。
ここを、企業内で論議し、みんなでマスターすれば、なんら、業務部門、企画部門、商品開発部門と異ならないのである。
まさに、営業部門の格は、同列となる。
この原点で書いたのが、『サラリーマンの本質』である。
是非、同著にある「営業の本質」を参考にしていただきたい。
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