『自らを極める営業力』

自らを極める営業力 (B&Tブックス)

朝倉 千恵子

日刊工業新聞社 2012-03-16

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私は、この本は女性向けの本だと思っていたが、本を読み終えてみて、そうではないことに気づいた。
そして、私が今まで読んできたどんなビジネス書よりも、厳しい内容が書かれているのである。厳しく仕事への姿勢を問うているのである。
改めて本の表紙や裏表紙、帯を見てみると、確かに女性という文字はどこにもないのである。

 

私が勘違いしたのも無理はない。それは、ネット検索で「女性ー営業力」と入力すると、多数の著者のセミナー記事が出てくるからだ。
また、著者は「トップセールスレディ育成塾」を主宰していることから、女性の営業力強化の第一人者だと思い込んでいた。
しかし、よくよく著者の経歴を見てみると、著者は株式会社新規開拓の代表取締役社長なのである。
この会社名が「新規開拓」というところに注目いただきたい。
「新規開拓」というと、男性でもその言葉を耳にするだけで、ネガティブな気持ちになる人は多いと思う。
それを、著者が会社名に選んだということをぜひ、考えてもらいたのである。
この点が、この本と著者の原点のような気がしてならないからである。

 

 

さて、本の中身であるが、まさに仕事への姿勢を問う本である。
また、実際に本の中でも「まずは形から入りましょう」という見出しで、「服装とヘアスタイル」「立ち居振舞い」が男女別に示されていることが興味深い。
つまり、「形」「心」を含めた仕事への「姿勢」がいかに重要かということを、この本は示している。
そして、実際にビジネスの現場を経験した人は、まさにその通りだと思うはずである。
また、この本は現実の営業の世界に真向いした人でないと決して書けないことが多数紹介されている。
机上の空論とは違う現実の重みがあるのである。
上滑りなど、ないのである。

 

その中から、参考になる箇所をピックアップしたい。

 

すぐやる!(P29~)
「一本の電話、メールの返信、問い合わせ……。
どれも、それほど時間がかかる仕事ではありません。
でもなぜか、すぐにやらない。
すぐにやらないから忘れてしまう。
後回しにすればするほど時間がかかる。
内容の整合性にも問題が出てくる。
………
後で後で、と引き延ばすから仕事も溜まり、優先順位もわからなくなるのではないでしょうか。
……
時間がかかる仕事も同じこと。
暇を見つけてしっかりとやろうと思って、後回しにしていませんか?
今すぐに完成させることができなくても、途中まででもいいのです。まず少しでも手をつけることです。
それが報告書であれば、一行でもいいから書いてみましょう。………」

 

「クレームに対する事実確認は必要ですが、お客様の感情に対する”共感”も大事です」(P75)

 

「数字を出せない、つまり売れない営業ほど自分なりの”こだわり”が強いように感じます。しかしそれは”こだわり”ではなく、単なる”頑固さ”なのです。頑なな姿勢は柔軟性をなくし、新しい知識や情報の吸収を妨げます。
だからまず”こだわり”を捨ててみてください」(P96)

 

「売れない理由を、
『商品がよくないから』
『ライバル社はもっと値引きしているから』
と商品や会社のせいにしている暇はないのです。商品や価格だけが購入の理由なら、最初から営業マンなど必要ないのです」(P97)

 

「日本の企業には、プレゼンテーションの上手な営業マンはたくさんいますが、その割には結果に結びついていないケースが多い……。営業はクロージングの優劣で決まるのですから、その視点で営業を学ぶことが重要です。
………
クロージングで意識すべきことは、まずお客様の問題点を明らかにしている気配りが行き届いていること。営業において、『問題点は何か』をことさら意識してかからないとクロージングには至らないのです」(P110~)

 

「鈍感な人では営業はできません。鋭い人は、受注の見込みはもちろん、見込み額まで読み取ることができます。感触で受注数、できれば受注額まで読めるようになること、それが優れた営業マンなのです」(P112)

 

「『悪気なくしている行動が一番悪い』ということ。無意識が一番治りにくいのです」(P116)

 

COLUMN「北島選手からもらった感動」(P132~)
「人はとかく話の内容ではなく、誰が言っているかに焦点を当てる傾向になりがちです。」

 

COLUMN「株式会社新規開拓の理念をご紹介します」(P188~)
「………
気合や根性は当たり前。
人と同じことをしながら爆発的な数字を上げることはできません。
他の人と差別化するには『新規顧客開拓』こそが最大の決め手。
だからこそ我社は、『新規開拓』という社名にしたのです」

 

どうでしたか?
ちょっと、解説しておきますと、
まず「すぐやる!」は、みんな頭の中ではわかっていますが、ビジネスの現場では結構できていません。
それが、混乱を招くあるいは、不振に陥る大きな原因となっていることは確かです。
拙著『サラリーマンの本質 』の第一議題「ピンチのあとにピンチが来る」組織の考察の中の、「手離れ」を早く、「取りかかり」の早さこそ重要、とまったく同趣旨です。
まさに、ビジネスマンは「すぐやる!」ができていないと、「ピンチのあとにピンチが来る」ことになってしまうのです。

 

つづいて、「こだわり」についての記述について
ここはよく文を見てもらいたいと思います。売れない営業ほど、自分への”こだわり”が強いと書いてあるのです。
一見、”こだわり”があった方がいいように思えますが、営業の世界ではこの通りです。
もっと正確に言えば、「自分への変な”こだわり”」です。ここを捨てない限り、営業は伸びません。
逆に言うと、営業不振の人は、たいがい、「自分への変な”こだわり”」を持っています。

 

つづいて、クロージングについての記述。
ここら辺が、外資系コンサルタントの本と異なります。やはり、営業の現場では、クロージング力が重要と思います。

 

「人はとかく話の内容ではなく、誰が言っているかに焦点を当てる傾向になりがちです。」も、そういう人って、あなたの身の回りにいませんか?
いつも立派なことばかり言うくせに、人の発言については、たえず「誰が言っているか」に重点を置き、肩書や経歴のある人の発言を重視し、著名人の発言ばかりを引用する人っていませんか?

 

そして、社名の「新規開拓」という記述。
つまり、営業の世界では「新規開拓」こそが差がつくもの、人との差別化要因であると言っているのです。
これが、著者の持論だと思います。

 

改めて、どうでしょうか?
正直、私も、かなり厳しいと言われている会社に長年勤めていましたが、上司にこの本の中身ほど厳しく言われることはありませんでした。
確かに、ビジネスの現場、なかんずく営業の世界では、「姿勢」が優劣を分けると思います。
そのことを改めて認識させられた本でしたが、みなさんも、一度、今まで読んだ営業の本とぜひ、読み比べてください。

 

 

 

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2014年11月21日 | カテゴリー :