「出向=左遷」なのか? ー 会社社会の実態と捉え方は

出向の意味合いは、若い時と定年を前にした時とでは大きく違う。若い時はキャリアアップのチャンスであり、定年を前にした時は、新しいキャリアの出発点となる。

重要なことは、若い時も定年を前にした時も、出向を前向きに捉えることだ。

会社社会の実態に迫ってみよう。

 

1.若い時の出向は、キャリアアップの大きなチャンス

なぜ、若い時に出向を命じられる人がいるのだろうか?

その目的は大きく二つに分かれる。

一つは、専門知識を修得してもらいたいからだ。

もう一つは、出向先との関係を、将来にわたって維持したいからである。

 

いずれも会社に帰って、出向先で得た知識や人脈を活かしてもらうことを前提にしている。

 

このことを、もう少し掘り下げてみよう。

日本の企業は、人事、経理、総務、営業、開発といった職能別組織をとっていることが多い。

ということは、それぞれの組織は専門性をもっていることなる。

ただ、その専門性は会社を回していくための、一般性が高い専門性だ。

その職務を専門に行っている会社には及ばないということである。

 

そして、もっと細分化した専門性も存在する。

たとえば業種別の営業、システム自体の構築、特定の管理業務を対象にした専門性だ。

しかし、それらの専門性を得ようとしても、社内には人材がいない。

そこで、これらの専門性を修得させるために、若手社員を出向させるのだ。

出向先が、官公庁といった場合もある。

 

若手社員なら頭も柔軟で修得も早いし、出向明けも出向先で得たウハウやスキルを業務運営で活かせる。

それらを活かす時間も十分にある。

これが、出向の第一のパターンだ。

 

 

出向後は、その分野のスペシャリストに

 

もう一つのパターンは、人材交流、関係維持を目的にした出向だ。

 

出向先が、出向元の業務と関連性があれば、会社に戻ってきても、培った人脈を基に、有益な情報を入手できる。

出向先が他業種の場合でも、将来、特定分野での業務提携の可能性があるかもしれない。

 

いずれの場合も、出向先と付き合っていくことに、会社としてメリットを感じているのだ。

それゆえ、関係を維持するために、出向させている。

 

こうしたことから、出向先は親密企業となることが多い。

親密企業と相互に出向者を交換していることもある。

 

 

出向の二つのパターンを見て、もうおわかりだろう。

会社は、専門知識やノウハウ、あるいは人脈を持ち帰ることができる人を、出向に選んでいるということだ。

また、出向先で上手く溶け込める人を選んでいる。

 

すなわち、若い時の出向する人は、会社に選ばれた人と言うことができる。

 

そして、若い時の出向者には大きなメリットがある。

社内ではけっして得られない他組織の業務や風土を学んだということだ。社外人脈ももったということである。

このことは本人のキャリアップに大きくつながる。

 

実際、出向の第一パターンでは、戻った組織の中核者、第二のパターンでは、会社の中核人材となることが多い。

 

 

人脈構築の意味も大きい

2.定年を前にした出向は、第二のキャリアのスタート

一方、定年を前にした出向を「出向=左遷」と捉える人は多いと思う。

グループ会社や取引先などに出向することが多いからだ。

しかも一定期間の出向期間を終えると、出向先に転籍することも多い。

 

ということは、自分が慣れ親しんだ会社を去らなければならないということになる。

その寂しさ、つらさは痛いほどわかる。

 

その背景に、会社側の施策を感じ取る人もいるだろう。

出向先との交渉で、給与を一部負担してもらうことも可能だからだ。

そうすれば、人件費の削減につながるし、出向者が転籍すれば、将来の処遇を心配する必要もなくなる。

 

実際、そんな思いから、出向先の開拓を精力的に行っている企業もある。

定年を前にした出向は、そんな会社側の思惑も見えてしまうのだ。

 

 

慣れ親しんだ会社を離れることはつらいが……

 

しかし、自分の今後の活躍機会という観点でも、出向を捉えてもらいたい。

 

通常、出向先企業は自分が所属していた会社より、小ぶりなため、活躍できる機会は増えるはずだ。

また、出向先企業は、自分が培ってきたことが、現実に活きる場でもある。

経験してきたことが、直接活きるということもあるし、人との折衝、仕事の進め方などの場面で活きることもある。

 

このことは、出向した人は実感としてもっているはずだ。

要は、自分が想像していた以上に活躍できる機会が多いのだ。

 

その結果、出向後、転籍した会社から重宝がられ、定年後、転籍企業で再雇用されたという人は多くいる。

その後も懇願され、その企業で働く人もいる。

また、転籍した会社でのノウハウやスキルを活かし、別の会社で働く人、起業する人までいる。

 

 

じつは私も出向ー転籍を経験した一人だ。

私の場合、出向先企業の業務と関係する業務を経験したことすらなかった。

最初は、企業文化も風土も異なる、システムもまるで違うことから、本当に苦労した。

しかし、振り返れば、出向し転籍した会社での業務が、長いサラリーマン生活のなかで、一番楽しく、充実感があった。

 

それは活躍の場があったからである。

そのため、転籍後の会社で長く働けたのである。

 

 

私たちは、入社し育った企業に強い愛着心をもつ。

それは微笑ましいことに違いないが、それだけ入社した会社の会社の価値観や人間関係に染まってきたということだ。

会社の価値観や人間関係に縛られてきたと言えるかもしれない。

 

しかし、その価値観や人間関係を永遠に持ち続けることはできない。

いつかは別れを告げなければならない。

その別れ方の一つが、出向→転籍という形なのだ。

 

最後に、出向後転籍した会社で上手くいった人の共通点について述べておきたい。

その人たちは、自分が入社し、育った会社の価値観を捨てられたということだ。

努力し、出向し転籍した企業の風土に染まったということである。

 

逆に出向、転籍した会社で上手くいかなかった人は、自分が育った会社の価値観を捨てきれなかった人だった。

 

出向、転籍を自分の新たなキャリアと考えた人は、上手くいったということである。

 

綾小路 亜也

 

 

 

 

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