明快！営業の神様の言葉：『柴田和子終わりなきセールス』から / 新百合ヶ丘総合研究所

2022.06.13更新

柴田和子終わりなきセールス

柴田和子

東洋経済新報社2014-02-07

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柴田和子さんをご存じだろうか？　

生命保険業界にいる人で、彼女の名前を知らない人はいない。

彼女は、３０年連続生保セールスで１位という記録を持ち、ギネスブックに２度ほど「日本一の生命保険セールスマン」として掲載された。

そればかりでない。１９９４年にはダラスで開かれたＭＤＲＴ(Million Doller Round Table 世界百万ドル円卓会議）世界大会のメインプラットフォームで講演した人物だ。
ＭＤＲＴは保険セールスマンの世界組織で、一定以上の実績のあるトップセールスマンしか会員になれない。

私も彼女の名前は知っていた。

そして「女性の営業力」についていろいろ調べているとき、この本の新聞広告を目にした。
たぶんその広告が目に入らなくても、いつかは買った本だ。

参考までに、彼女は１９９２年に『柴田和子正々堂々のセールス』の本も出しており、その年のベストセラーとなっている。

余談だが、柴田和子さんの長女知栄さんも第一生命で１４年間継続して日本一を達成している。次女佳栄さんも第一生命で全国２位～３位のトップセールスマンであることも知られている。ここに柴田ファミリーのすごさがある。
じつは私は長女知栄さんの講演を聞いたことがある。
長女知栄さん、次女佳栄さんの本『スーパーセールス姉妹知栄と佳栄―「母」から受け継いだ豊かなこころ』も出版されているので、興味のある人は参考にされたらいいと思う。

本の中身について述べたい。

一言で言って、現在出版されている外資系コンサルタントの本とは正反対のような印象を受ける。
こねくり回したような理屈がなく、まるで母から諭され、教えられているような感覚になる。
一人の女性としての生き方の重みがあるのだ。
だからスーッと頭に溶け込む。

もう一つ感じたことは、これだけの偉業を達成する人だから、やはり考え方が大きいということだ。人を見る眼も広い。人としてのスケールが大きいのだ。

そして、セールスの世界もピンからキリまであるということを実感した。
今の出版業界はプロフィール重視の時代だ。多くの本に紹介されている著者のプロフィールには、○○で１位とか、△△で実績を上げたと書かれてある。また、生命保険のセールスなどで、実績を上げた人がセミナーや研修を企画したりしている。
だが、読者や受講者はそうした経歴がどのくらいすごいのかわからない。
読者も、セミナーを受ける人も、著者や講演者がどのレベルの人がハッキリしないまま本を買ったり、研修に参加しているということだ。
これからは、この本に記載されているようなＭＤＲＴのような共通の物差しとなるような資格や経歴をチェックすることも、本やセミナーを受ける側は必要かもしれない。

本中、参考となった箇所を紹介しておきたい。

（意味が詰まっている言葉は濃い字にした）

「正直なところ、話法だけでは契約はいただけませんし、設計書や数字だけでも契約をいただくことはできないんです。
………
何か付加価値がなければダメなんです」（P14）

「放っておくべきは放っておく」から

「私は好意を持てた人が相手ならば、今は契約できなくても、大事に時機を待とうと考えます。これはある意味、いつまでも追うということですね。ただし、タイミングを考えて、そのときには追わないということです」（P66）

「本当は、私ほどたくさんの企業から断られているセールスマンはほかにいないと思います。大企業について言えば、私がアタックしたことのない会社はないくらいで、ものすごく手数を出しているんです」（P71）

「私には常に数字を大きく考える習慣があります」（P81）

「セールスの基本は、思いつきと実行しかありません。ですから、思いついたことをすぐに書き留めておくといいです」（P118）

「紹介を頼む努力が真の人脈を広げる」から

「まず、相手が自分にとって魅力ある人かどうかを見極めるんです。自分にとって魅力ある人はほかの人にとってもそうだからです」（P139）

「実は、紹介が効果を持つのは、紹介者の人格のおかげなんですよ。
紹介された人は紹介者の地位ではなく人格を見ているんです。自分が嫌いだったり評価していない人の紹介だと、『あの嫌な奴と知り合いなのか』という目でこちらを見るんです。ですから、紹介される人から快く思われていない場合には、偉い人の紹介であっても逆効果で、かえって障害になることさえあります」（P142）

「セールスの世界には、これが最高の道だというのは一つもないんです。人によって話法も違うし、合いの手の入れ方も千差万別、誰かのやり方がそのまま通用はしないんですよ。ですから、経験をたくさん積むことが大切なんです」（P211）

どうだろうか？　

みなさんが今まで読んだり、聞いたりしていることとはだいぶ違うのではないだろうか？

「セールスの世界には、これが最高の道だというのは一つもないんです」という言葉は私たちへの警鐘の言葉だ。
私たちは、ここを、「最高の道がある」と思って、ビジネス書を買ったり、セミナーに参加しているのではないだろうか。
しかし、これが、契約金額４４４億円を達成した日本一、世界一のセールスウーマンの言葉なのだ。
私たちも、今後、ぜひ、この言葉を頭の隅に置いて、本の選択やセミナー受講の参考にしたいものだ。

なお、本書に興味を持った人には、ぜひ、世界一のセールスマンであるジョー・ジラード氏の『営業の神様』をお読みいただきたいと思う。
全体のトーンが本書と似ているからである。

綾小路亜也

『柴田和子終わりなきセールス』