この本は「内発的動機づけ」、自己決定理論で知られる著者(デシ)が、一般向けにやさしく解説したものである。
(原題 『Why we do what we do:The dynamics of personal autonomy』)
著者は、大学生が興味をもって主体的に取り組んでいるパズルに対して、報酬を支払うと約束して反応を見る実験を試みた。
その結果、大学生の動機や興味が低下してしまったのである。
著者はこの結果を基に「外的報酬は内発的な動機づけを低下させる」という論文を発表した。この実験結果はアンダーマイニング効果と呼ばれている。
なぜ、大学生の動機や興味が低下してしまったのだろうか?
パズル解きが、お金を稼ぐという手段性を帯びてしまい、純粋に楽しむということができなくなったからである。
大学生はお金に統制されているいるような感覚になったのだ。
では、パズルが解けなかったときは、罰するという脅し文句を使った場合はどうだろうか?
この場合も、パズルを解くこと自体は促進されるが、活動そのものは楽しくなくなる。
どのパズルを解くか、パズルにどれだけの時間を費やすか、選択させた場合はどうだろうか?
それをどうやるかにある程度の自由裁量が許されていれば、その活動により熱心に取り組み、より楽しむことがわかった。
選択の機会を提供することは人の自律性を支えるための条件なのである。
選択の機会について、あるエピソードを紹介している。
ある女性は薬を飲むように指示されていたが、処方箋には従わず、失神、胸の痛みなどを起こして緊急治療室に入院することもあった。この女性は薬を飲むのを覚えていられないということだった。
彼女の新しい医者は薬について長時間かけて彼女と話し合い、その話の中で彼女に「一日のうちで何時に薬を飲めば良いと思うか」を尋ねた。
「夜、ちょうど寝る前がいいんじゃないかしら」と彼女は答えた。じつは、寝る前に一杯のミルクを飲む習慣があったからである。
彼女の新しい医者は、彼女が自分自身で薬を飲む方法を選択することのできる機会を提供し、驚くほどの効果をあげた。
上記は内発的動機づけの根幹には「自律性の欲求」(自己決定したい)があることを示している。
自律的に行動できるかは、内在化の問題と深く関わっている。
内在化には2つの形態ー「取り入れ」と「統合」があるという。
「取り入れ」はルールを丸ごと飲み込むことであり、「統合」は自分自身のものとして受け入れることである。
問題は「取り入れ」の段階では、タテマエの自分というものー一種の偽りの自己ーを外部に向かって提示するようになって、ほんとうの自分に接することをやめてしまうことである。
著者は「他者から認めてもらおうと必死になって、取り入れを完全に受け入れたとき、ほんとうに自分らしいと感じることが何もなくなる」と述べている。
また、「自我関与」という言葉がある。
これは、「自分に価値があると感じられるかどうかが、特定の結果に依存しているようなプロセス」である。
「自我関与は、他者から随伴的に評価されるときに発達するもので、それは価値や規範の取入れと密接に関係にある。
自我関与していると、自分が他者にどう見られているかが焦点になる」
このことも、内発的動機づけを低減させる。
この本の第1章に、子どもの頃は身の回りの物すべてに興味を覚え「これなあに?」としきりに質問するのに、成長とともに、なぜ生まれつきもっている学ぶ意欲が消え失せてしまうのかということが書かれてあった。
著者は問題意識の出発点はここにあったと述べているが、きっと、このことは多くの人の疑問でもあるはずだ。
成長するにつれ、いろいろな統制に出会い、さまざまな規範を取り入れ、自我関与することで、自律性が失われていったということになると思うが、重要なことは、自律性とは何か、それを支えるにはどうするばよいかという議論が生まれたことである。
個人および親、教師、あるいは医師、会社の上司等双方が考えるべき問題だと思う。
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