『効率が10倍アップする新・知的生産術』 

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法

勝間 和代

ダイヤモンド社 2007-12-14

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この本は、2007年12月に出版された本である。「なにをいまさら」という人がいるかもしれないが、手に取ってみた。
勝間和代氏については、熱狂的なファンも多くいると同時に色々な意見も聞く。つまり、それだけ有名ということだ。
そして、どちらの場合も、正しく同氏が言っていることを理解する必要があると思うのである。
そんな気持ちから読んでみた。
なぜ、この本を選んだかと言えば、インターネットで同氏のおすすめ本を検索したところ、Booklog(ブクログ)という書評ブログサイトで、この本がおすすめランキング1位だったからである。

 

さて、本の内容であるが、今の時代に置き換えても、十二分に内容がこれでもかと詰まっている本である。
絶対に役立つ本と言える。
そして、誰に役立つかといえば、本の題名が示す通り、「知的生産力」を上げようと思ってる人に存分に役立つということである。
「知的生産力」を上げようと思わない人には、ちょっときついかもしれない。

 

勝間和代氏といえば、すぐにビジネスツールの紹介をイメージする人がいるかもしれないが、この本を読んでみると、それは「ツール」という手段で利用しているのである。
つまり目的のための手段なのである。ここは押さえておかなければならない。
確かにツールの使いこなし自体もすごいのだが、それよりも、ものごとの捉え方の「根底」が、実に論理的で、しかも土台がしっかりしているのである。ここを痛感した。すべて、同氏が指摘しているとおりと言ってもいいだろう。

 

その根幹は、同氏がすすめる「フレームワーク力」である。
本の重要部分を抜粋する。

 

「フレームワークとは、『ある目的に沿って整理された思考の枠組み』を指します。『思考の引き出し』といってもいいかもしれません。どのような情報に対して軸を作り、分類し、場合分けを行い、整理の場所を作るのがフレームワークです。」(P66)

「『フレームワーク力』を使って大まかな情報をつかみ、『ディープスマート力』を使って経験・知識から洞察力を深め、さらに実際にその知識を実践・実行して『失敗力』を使って何が本質なのかを経験から見極める。この繰り返しが1%の本質にたどりつく近道です』(P78)

 

「何かまとまった情報を手に入れた際には、まずその本質は何かということを簡略化して考え、それぞれの簡略化したメッセージを階層に展開するとどのような広がりがあるのかを把握し、その全体をさらにフレームワークとして再構築していくのです。」(P201)

 

以上の3つの引用から、だいたいのことはお分かりになられれるのではないかと思うが、要は、ものごとの捉え方を言っている。
このフレームワークがないと、情報整理ができない、情報が入ったとしても、何のつながりのない情報の断片にすぎないということを言っている。
そして、その結果、自分になんら有益に働かず、かえって混乱してしまうということを言っている。
これでは、本質にたどり着くどころの話ではないということである。
しかし、フレームワーク力があると、自分にとって必要な情報の分別ができるばかりでなく、情報感知も研ぎすまされ、有益情報が次から次に入っていくということになる。

 

さて、ここからがざっくばらんな読後感である。
この本は、「目的」を持っている人には、極めて有効に働くであろう。
それは、「目的」を成就するための「手段」を、極めて論理的に説明しているからである。そして、そのためのツールも極めて有効だろう。
しかし、「目的」を明確に持っていない人にとっては、ゴルフスイングの型をレッスンプロから叩き込まれるように、極めて型が固定された窮屈な手段に感じられるだろう。
ここら辺が勝間氏に対する一方の意見の原点のような気がする。

 

私自身、正直、結構難しい本のジャンルだと思う。
それは、同氏自身が、たえず本質と向き合う仕事を経験してきたことと関係がある。
本の中で、マッキンゼー時代のエピソードが記載されている。
1つは、同氏が、コンサルタントになったときに、あまりの話し言葉、書き言葉のわかりにくさに、指導社員が「なぜ勝間の話はわかりにくいのか」というアンケートを周りからとり、それを渡されたというエピソードである。
もう1つは、同氏がマッキンゼーに入社した時に、新人研修を受けたが、それがあまり効率的でなかったために、人事担当者に改善提案をメールしたときの話だ。
その時、マッキンゼーの人たちにとっては、ピラミッド・ストラクチャー+MECEに従っていない文章は、受け付けられなかったというエピソードである。

 

このエピソードを読んで、正直驚いた。
「えっ?そんな会社あるの」と思った。
これが、同氏が育った環境なのである。ここを読者も理解した上で、同氏の著作や主張に対峙しないと、議論は違う方向に行くのではないかと思うのである。
また、この本は、大前研一氏の『企業参謀』によく似ていると思った。
論理の叩き込みが似ているのである。大前氏もマッキンゼー出身である。共通の思考法があるのだろう。

 

ここからはまったくの余談になるが、実は、私が勤めていた会社でもマッキンゼーを入れたことがある。
もちろん、私は、その受け入れの担当者ではなかったが、営業社員の1日の時間の配分、移動時間、担当業務等をこと細かに調査され、さまざまな非効率性の指摘を受けた。その結果、チャネル別(販売店の特徴別)営業制度が敷かれ、営業社員もチャネル担当となった。
しかし、結果として失敗した。この原因は、もっぱら受け入れ側の徹底度合にあったと思うのだが、確かに効率という面では改善されたが、売上は減少したのである。それは、今から考えると、改善へのステップだったのかもしれない。
まったくの私見ではあるが、私はその原因は、チャネル制にしたことで、情報はチャネルごとにしか入らなくなり、情報の共有ができなかったためと考えている。
わかりやすく言うと、意外に営業では必要な、「ひょんなことからの情報」というものがなくなり、売上がシュリンクしたのではないかと考えている。

 

最後に、この本の「よさ」を本当にわかるとすれば、それは他の本と比較した時ではないかと思っている。
また、他の本と、この本が、どこかどのように違うのかを理解しないと、この本自体も理解できないのではないかと考えている。
この本の「よさ」は、ものごとの要点をズバリと射抜いていることろにある。
それでは、どの本と比較したらいいかというとちょっと問題があるので、恥ずかしながら、同じビジネス書ジャンルである拙著『サラリーマンの本質』と比較されると理解が深まると思う。
この本の表現を使えば、『サラリーマンの本質』は、「悩まないサラリーマンになるにはどうしたらいいか」という「フレームワーク」を持っている。
そして、どんな場面で、サラリーマンは悩むのかということを場合分けし整理している。
そして、よく陥る失敗を紹介し、本質に近づこうとしている。だから、『サラリーマンの本質』と名付けているつもりである。
しかし、そこには日本人独特の「人の考え方・受けとめ方・感受性」「人との交わりの中で生きることの難しさ」等、「人」にも焦点をあてている。
そのためか、日本のサラリーマン向け色彩がぷんぷんと漂う現実の世界のビジネス書となっている。
こんな比較をしてみるとおもしろいと思う。

 

 

 

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2014年6月22日