気持ちを伝えるなら、やはりペン

2018.11.11記事更新

得意先を訪問したとき、相手が不在だったということはよくある話だ。
そんなときは、受付の人や代わりに応対いただいた人に名刺をお渡しするが、自分の気持ちを伝えるために、名刺に、「先日はありがとうございました」「お世話になりました」などと、ひと言メッセージを書くことも多い。
だが、メッセージをボールペンで書いてみると、その文字は自分でも味気なく見える。
いかにも事務的で、そこにはまったく自分が出ていない。
そんな文字を見つめると、「メッセージをボールペンで書くこと自体、年長の人に失礼にあたらないだろうか」と不安になってくる。

 

ところが、万年筆で書くと、自分の筆圧によって字の太さが変わるので、トメ、ハネ、ハライなどに自分のくせが出て、まさしく自分が書いた文字に見える。
やはり、ボールの回転でインクが転写される油性ボールペンとは明らかに違う。
これなら、年長の人に失礼にならないという自信も湧いてくる。

 

だが、万年筆で書くことに大きな障害もある。
なんと言っても、いまの時代、万年筆を持ち運ぶことは少ない。万年筆を使う機会がほとんどないから、ビジネスマンの上着の内ポケットには万年筆は刺さっていない。
それにインクが乾きにくい。そのために受付の人や代わりに応対いただいた人に待たせてしまうような感覚になる。
私は、ビジネスマンやビジネスウーマンに「メッセージを書くなら万年筆で」と言おうと思っていたが、万年筆を使うことはハードルが高いとあきらめかけていた。

 

 

万年筆のことを考えていたとき、一冊の本に出会った。
小川糸さんが書いた『ツバキ文具店だ。
『ツバキ文具店』は2017年度の本屋大賞の4位になった作品であり、NHKドラマにもなっている。
本に書かれていることに驚いた。

 

『ツバキ文具店』は代書も行っているが、主人公雨宮鳩子は、依頼ごとに筆記用具、ペーパー、インクを替え、貼る切手までこだわる。それらを駆使することにより、依頼の趣旨に沿うだけでなく、依頼人の気持ちになり代わってしまうのだ。
「これぞプロの仕事」と思ったが、依頼主になり代わろうという気持ちが筆記用具などを選んでいることに私は注目した。
この本を読んで、私はビジネスマンやビジネスウーマンに、「もっと万年筆を活用したほうがいい」と堂々と言っていいような自信が生まれた。
気持ちを伝えるには、筆記用具を選ぶということも重要なのだ。

 

 

考えてみれば、ビジネスや人間関係の究極は気持ちを伝えるということだ。
ボールペンで書かれた文字はありふれていて、事務的な感じがするので、頭の中を素通りしてしまう。
ところが、万年筆で書かれた文字はあまり見ることがないので目にとまる。しかも書かれた文字にその人の特徴が表れているので、その人の顔まで浮かぶ。
やはり、気持ちを伝えるためには万年筆なのだ。

 

綾小路亜也

 

このテーマは年末発売予定の
『「出世しぐさ」のすすめ』に掲載しています。

 

 

 

※下記は万年筆を選ぶときの参考にしてください。

高い万年筆=いい万年筆というわけではありません。自分が使いやすい万年筆を選んでください。

 

私が使っているモンブラン万年筆MEISTERSTUCK446
現在、このモデルは販売されていない。

 

(参考)モンブラン万年筆の選び方
外国製の万年筆を選ぶときは、使用時の長さと軸径を注意してください。(日本人には大きすぎる場合があります)
モンブラン万年筆にはいろいろな種類がありますが、マイスターシュテュックのル・グランは小ぶりで、クラシックは女性にも似合う細身です。
下記ル・グランを参考に、字の太さなども含め、何度も確認することが重要です。

MONTBLANC 【モンブラン】 万年筆 マイスターシュテュック ル・グラン 146bk(F)  ブラック ゴールド ペン先(F)細字

 

 

 

 

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