「キャリア・アンカー」はキャリア理論を学んだ人なら誰もが知っている著名な理論であるが、その邦訳書が参考文献を含めてA4にして90ページの本というより、自己診断ツールであることを知っている人は少ない。
この自己診断ツールは、キャリア指向質問票とキャリア・アンカー・インタビューから成る。
この本によれば、キャリア・アンカーとは、「無理にでも選択を迫られた場合、どうしてもあきらめたり捨て去ったりができないひとつの拠り所である」と定義される。
つまり、「そのひとのパーソナリティの階層上で最上位に位置づけられるたったひとつのセット(才能、価値観、動機からなるセット)である。
なお、アンカーは船の錨である。拠り所を表現している。
キャリア・アンカーには下記8つのカテゴリーがある。
人はいずれかのカテゴリーに属しているというのだ。
専門・職能別コンピタンス
全般管理コンピタンス
自律・独立
保障・安定
起業家的創造性
奉仕・社会貢献
純粋な挑戦
生活様式(ライフスタイル)
キャリア理論の要約書などには8つのカテゴリーの概略が記載されているが、そんな要約書を見ると「まあ、そんなところだろう」で済んでしまう。
しかし、邦訳書のカテゴリーの説明は、仕事のタイプ、給与と福利厚生と昇進制度に対する考え方、承認のしかたにまで及び、ものすごく詳細な記述なのだ。
あなたも8つのカテゴリーの記述を読むと、あまりにも自分にあてはまったカテゴリーがあることに驚く。
それと同時に、自分とはまったく異なったキャリア・アンカーを持つ人がいることにも、きっと驚くはずだ。
この実感が邦訳書を読む意味だと思う。
具体的に、キャリア・アンカーはどのように違うのだろうか?
専門・職能別コンピタンスと全般管理コンピタンスの2つのキャリア・アンカーの記載内容を見てみたい。
専門・職能別コンピタンス(抜粋)
仕事のタイプ
いったん目標の合意が得られ実行の段階になると、彼らは最大限の自律性を望む。
自律的に実行することを望むだけでなく、仕事を順調に進めるのに必要な、設備、予算、その他すべての資源の制約を嫌うのが普通。
給与と福利厚生
このひとたちは、広く社外までみすえての公平性を指向する。
つまり、他の組織で自分と同等の力をもっているひとがどのくらいの収入を得ているかを比較して考える。
承認のしかた
専門家にとって価値のある評価は、プロの同僚からの高い評価。
わけのわかっていないマネジャー層から承認してもらってもあまり喜ばない。
全般管理コンピタンス(抜粋)
仕事のタイプ
経営管理のアンカーをもつひとたちは、重い責任のある仕事を望む。
給与と厚生
社外と比べての公平性よりも社内のひとと比べての公平性を指向する。
承認のしかた
経営管理にアンカーのあるひとたちにとって最も重要な承認のしかたは、より責任の思い地位に昇進させること。
彼らは、自分の立場を、序列、肩書、給与、部下の数、そして予算の大きさによて総合的に判断する。
どうだろうか?
専門・職能別コンピタンスをアンカーにする人、全般管理コンピタンスをアンカーにする人を例にとるだけで、かれらの指向性や拠り所がまったく違うことに気づくはずである。
自分のアンカーを知ることも大事だが、自分とは異なるアンカーを持つ人がいるということを知ることもまた大事だと思う。
特に現在の職場では働く人の多様化が進んでいる。人はみな自分と同じ指向をもっていると考えると、大きな過ちにつながる。このことも教えてくれているのが、キャリア・アンカーだと思う。
『キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival) 』
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