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出世をめざし続けた人の実話:『出世のすすめ』
2024.03.27更新
佐々木常夫氏の『出世のすすめ』には、組織内で出世する方法が書かれている。
同氏といえば『働く君に贈る25の言葉』が有名だが、この本には出世にこだわった著者自身が描かれている。
私たちと同じサラリーマンがめざした出世への道である。
著者は、東レ時代、「いかに出世するか」を常に頭の片隅に置いて行動していたという。
著者が繊維企画管理部の課長になったとき、のちに「東レ中興の祖」と呼ばれた伝説の社長となった前田勝之助氏との運命の出会いがあった。前田氏が担当役員だったのだ。
著者は「この人に賭けよう」と決め、喰らいついた。
はたして前田氏が経営トップの座に就いたとき、「8人の侍」と呼ばれたメンバーの一人に抜擢された。
著者が営業部に配属されたとき、最も苦手なタイプの上司と遭遇した。
その上司とは考え方も仕事のやり方もまったく違うタイプだったので、何を求めているのか、どうすればスムーズに業務が進められるのかわからなかった。
著者は2週間に1度のミーティングタイムを持つことを決め、半ば強引に上司のスケジュールを押さえ、二人だけで話をしたのだ。
その場では必ず業務報告を行い、肝心なところは丁寧に説明した。
やがて、その上司は別の部門の部門長となって異動したが、なんとその4ヶ月後、その上司から呼び寄せられた。
次の部署でも同じミーティングを繰り返していたら、その上司は、ある事業部門長として転出した。
その3ヶ月後、またしても著者はその上司に呼び寄せられたのだ。
この二つのエピソードだけでも、著者の出世に対する姿勢が窺われるが、まるごと一冊、著者が出世のためにとった行動が書かれていると言っても過言ではない。
この本には、実際に出世と向かい合った結果が書かれている。
それゆえ、そこには出世を考えるうえで押さえておかなければならない真実がある。
ポイントと思われる箇所を紹介しておきたい。
(一部、語尾を修正)
・出世とは、各年代の努力の集積が形になって表れたものである。
・出世は「何を持っていいないか」ではなく、「何を持っているか」によって決まる。
何よりも重要なのは、自分の持ち味を上役たちに認識させることである。
昇格人事のリストに挙がるためには、自分を思い出してくれる上司がいるということが肝心
・私は出世しようと思っていたから、「ひとつの部署には長くて3年」と決めていた。
同じ部署で3年もやると、そこから先はそれほど伸び代がなくなるからだ。
拙著『ビジネスマンが見た出世のカラクリ 出世はタイミングで決まる!』でも同じことを言っているので参考にしていただきたい。(「もう一年と思うときが、出るタイミング」)
・会社員にとって一番重要な人物は、自分の評価を決め、異動を決める上司である。
出世したいのなら、自分自身の部下力を磨くこと。
どんな部下を求めているかなど上司は教えてはくれないから、自分でニーズを探し出すしかない。
・役員が人事を決めるときは、自分のことを知っているか知っていないかの差は決定的に大きい。
・私は常に「2段上の上司」を意識していた。直属の上司は自分を評価したり異動を決めたりする人だが、2段上の上司というのはそれをひっくり返せる人であり、嫌な上司を飛ばしてくれる人である。
・昇進の採点基準には、技術点と芸術点がある
技術点というのは、「営業で右に出る者はいない」とか「画期的な研究をした」「経理をやらせたらすごい」という技術的な優秀さのことである。
芸術点とは、「人柄がいい」「信頼できる」「ルックスがいい」「教養がある・知性がある」というような実務能力とは違う人間的な魅力のことである。
芸術点を磨いていかないと点を伸ばせない。
どうだろうか? 思わず「すごい!」と叫びたくなったのではないだろうか。
しかし、これらの言葉は、実際に出世をめざし地位を獲得した人の言葉なのだ。それゆえ本質を突いている。
いま、日本の会社員の上昇志向が低いことが話題になっている。
しかし、一方で昇進したいと思っている人がいることも事実だ。
昇進したいと思っている人とって、『出世のすすめ』は、どのような行動が出世に結びつくかを示している。
綾小路 亜也
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