2023.05.14更新
シャイン教授といえば、キャリア・アンカーで有名だが、キャリア・サバイバルの提唱者としても知られている。
しかし、『キャリア・サバイバル』が参考文献を含め、A4にして78枚の本というよりはワークブックのような存在であることを知らない人は多いと思う。
この本は2003年に初版だから、激動の時代にあって、時代背景、用語などが若干古く感じられるかもしれない。
シャイン教授自身も本のなかで「われわれの予測力が急激に低下している」と述べている。
誰が、いまのIT化の進展、AI時代の到来を予測したであろうか。
しかし、この本は読まれ続けている。それはこの本には普遍的な真実が存在するからである。
『キャリア・サバイバル―職務と役割の戦略的プラニング (Career Anchors and Career Survival)』
この本の副題に着目していただきたい。
「戦略と役割の戦略的プランニング」と書かれている。
それは「利害関係者の期待が、環境の変化とともにどのように変化しているのか」を考え、適応していくことであり、そのことにより組織で生き残っていく(サバイバルする)ことができる。
このことは、どういうことなのだろうか?
この本に記載されている人事部の例がわかりやすいだろう。
人事部には4つの(タイプの)利害関係者がいる。
彼らの人事部への期待に着目してみよう。
利害関係者1:経営トップの期待
・人的資源の用件と課題を予測する手助け
・報酬、福利厚生、業績評価、訓練などの人事制度のすべてをもっと能率よく運営すること
利害関係者2:ライン管理職の期待
「人間がらみの問題」を人事部の管理職が彼らの代わりに解決してくれて、人事部の親身な支援によって業務がやりやすくなること
利害関係者3:人事管理の専門職団体の期待
人事部にいる個々の管理職が「専門職ならではの」業務を遂行し、報酬、従業員の研修、カウンセリング等々といった人事管理の中心となる職能分野で、専門家としてりっぱにやっていけるようになること
利害関係者4:従業員の期待
人事部のひとには、従業員としての権利や特権を代弁する声となってもらいたいこと
ここで、なぜ人事部の例を出したかといえば、私たちも、人事部の役割が変化していることを実感として持っているからである。
人事部といえば、ひと昔前までは、従業員を評価し人事異動を決定する部署、あるいは給与計算をする部署、福利厚生などを所管する部署としての認識が色濃かったと思う。
しかし、今では、ライン管理職が抱える問題や従業員の相談窓口という認識が急速に高まっているのではないだろうか。
これは、環境の変化が利害関係者に影響を与えているからである。
※本では一貫して利害関係者という言葉が使われているが、訳者は「自分が組織で行っている仕事の内容ややり方に何らかの関心、要望、意見・助言等を持つすべてのひとをさす」と注記している。
あえて言えば、関係者、期待を寄せる人でもいいかと思う。
そして、利害関係者の期待が変化しているわけだから、職務と役割を見直す必要があることになる。
それは、その職務について、将来どのようなタイプの技能、動機や才能が必要とされるかを考えることである。
注目すべきは、シャイン教授は変化の趨勢を次のように述べていることだ。
・組織は「ダウンサイジング」「ライトサイジング」(適正規模への縮小化)を通じてリストラ中
・グロバリゼーション、新技術、ライトサイジングによって、組織間の境界、職務間の境界、役割間の境界がゆるんでいく
・仕事が専門的に複雑になってくるので、サービスとスタッフの役割の社員がもっと増えるだろう
・概念を操る仕事が増え、職務間の境界と役割間の境界がゆるんでいくので、不安のレベルが高まるだろう
・組織は、階層的な構造をフラット化し、従業員をエンパワーする
・組織は、より高度に分化され、より複雑になりつつある
・組織の下位単位は、独立性を増しつつある
・組織風土は、より共創的で協力的になりつつある
・組織ではヨコ向きのコミュニケーション経路が大事になりつつある
・家族、自己、および仕事に関する社会文化的価値観が変化しつつある
どうだろうか?
シャイン教授が示唆した変化の趨勢はあたっていたのではないだろうか。
特に、組織間の境界、職務間の境界、役割間の境界がゆるんでいく、組織風土はより共創的で強力的になる、横向きのコミュニケーション経路が大事になるは、多くの人が、いま、実感していることではないだろうか。
私たちは職務要件というものを必死に充足しようと努力してきた。
それが絶対信仰になっていたといえる。
また、組織も常に分掌をハッキリさせようとし、「その業務は○○部の仕事だ」「それは✕✕部の仕事」だと、口角泡を飛ばしながら議論してきた。
個人、組織とも、そうすることで身を守ってきたといえる。
しかし、環境はいつの時代も変化しているし、環境の変化に伴い、関係者の期待も変化している。
それでは、自分も組織も守れないのだ。
しかし、考えてみれば、いつの時代も環境の変化というものがあった。
ということは、変化の大きさというファクターはあるものの、いつの時代も、環境の変化に適応できた人が生き残ってきたとも言える。
このダーウインの進化論にも似た当たり前の事実に気づかせてくれるのが、シャイン教授の『キャリア・サバイバル』だと思う。
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