2024.04.01更新
悪いヤツほど出世する
ジェフリー・フェファー 村井 章子 日本経済新聞出版社 2016-06-23 |
リーダーシップについて書かれた本や研修の中のリーダー像と、実際のリーダーとは違う。
このことに気づいたほうがいいというのが、本の中身だ。
リーダー教育産業は「リーダーは信頼を得よ、最後に頼られる人であれ、真実を語れ、人に尽くせ、控えめであれ、思いやりと理解と共感を示せ」と感動と高揚でリーダーの行動を変えられるとするが、そこには数字の裏付けもなければ、効果検証もない。
また著者は、リーダー教育は「知識も経験も資格もない人が、元気よく教えている」だけであり、またリーダー教育には「参入障壁」がないので、どんな人でもリーダーシップについて本を書くことができるし、講演をしたり、コンサルタントになることができると指摘する。
そんなリーダーシップ教育は、「サクセスストーリーを熱く語り、このとおりにすればきっと成功できると安請け合いをする」と言う。
著者はよほど我慢に耐えかねたのか、リーダーシップ教育産業に手厳しく矛先を向けるのだ。
著者はリーダーシップ教育産業に疑問を投げかける
なぜ、著者はそこまで言うのだろうか?
それは実際にリーダーの地位にあり、その地位を維持している人は、リーダーシップ研修のリーダー像とは異なるからだ。
この本の帯の「ジョブズも、ゲイツも、ウェルチも、みんな『いい人』ではなかった!」という文言が燦然と意味を持ってくる。
そこで、名門スタンフォード大学ビジネススクール教授であり、組織行動学の権威でもある著者は、事実の裏付けを徹底的に実施する。
それにより、本書は331ページの大著となり、紙面のほとんどは事実(実話)とデータに割かれている。
それゆえ、ちょっと読むのにひと苦労するが、重要なのは「事実」だ。
読者のみなさんには、「事実」をつかむという気持ちで頑張って読み進んでいただき、ぜひこの本の総括的な章である第8章までたどり着いてもらいたい。
第8章にある「組織の現実と向き合うための、6つのヒント」をぜひ参考にしてもらいたい。
6つのヒント
・「こうあるべきだ(規範)」と「こうである(事実)」を混同しない
・個人の言葉ではなく行動を見る
・ときには悪いこともしなければならない、と知る
・普遍的なアドバイスを求めない
・「白か黒か」で考えない
・許せども忘れず
この本には2つの重要なことが示されている。
一つは、リーダー教育産業に見るように、<あるべき像>を示し、高揚させることは、著者が言うように誰でもでき、受講者も気持ちがいいということだ。
双方気持ちがいいものだから、終わりがない研修となる。
ここにリーダー教育のマジックがある。
しかし、本当に問題を解決しようとするならば、「事実」を知らなければならないということになる。
二つ目は、実際のリーダーと<あるべき像>は違うということの自覚である。
特に、リーダーの言行は一致しないということに気づくことが重要だ。
しかし、厄介なのは、リーダーは、リーダーとしての言葉を話し続けているうちに、自分でもすっかり、そんな理想像になっている気になってしまうことである。
聞いている方も、そんな言葉を信じてしまう。
見極めなければならないことは、「事実」はどうかということだ。
ここも、行動という「事実」に着目する必要がある。
この本にはアメリカ企業でのリーダーのふるまい、転身例などの話が膨大に記載されているので、読者のみなさんは、日本人の考え方や行動とは違うと思うかもしれない。
実は、この本の中でも「日本は社員に対する文化的な規範がアメリカとは異なっており、リーダーには名誉あるふるまいが求められる」と記載されている。
たしかに、日本人とアメリカ人とでは考え方、行動様式の差異は存在する。
しかし、「事実」はどうなのかを知ることは、すべての問題解決のキーであり、そこに普遍性も存在すると思うのだ。
考えてみれば、これだけ「事実」を重んじる時代に、ことリーダーや出世において、「事実」はどうなのかが語られないできたこと自体不思議だ。
最後に本の目次を紹介しておきたい。
第2章~第6章までの見出しに着目してもらいたい。
「謙虚」「自分らしさ」「誠実」「信頼」「思いやり」
これは、リーダーのあるべき姿として言われ続けられていることだ。
本書では、このリーダーのあるべき像に各項目別に事実はどうなのかを示している。
本の目次
序章 リーダー教育は、こうして失敗した
第1章 「リーダー神話」は、百害あって一利なし
第2章 謙虚――そもそも控えめなリーダーはいるのか?
第3章 自分らしさ――「本物のリーダー」への過信と誤解
第4章 誠実――リーダーは真実を語るべきか?(そして語っているか?)
第5章 信頼――上司を信じてよいものか
第6章 思いやり――リーダーは最後に食べる?
第7章 自分の身は自分で守れ
第8章 リーダー神話を捨て、真実に耐える
関連記事:この本の他におススメの本もあります
こちらも参考にしてください
◆新百合ヶ丘総合研究所の出世本四部作
こっそり読まれ続けています
ビジネスマンが見た出世のカラクリ 出世はタイミングで決まる!
スマホで読む方法
出世するビジネスマナー
「出世しぐさ」のすすめ
※「出世しぐさ」は商標登録されました。
エリート社員への対抗策!
エリート社員に打ち勝つ! あなただけの出世術
新しい出世術
コロナ後の「たった一つの出世の掟」
◆新百合ヶ丘総合研究所のキャリアアップを実現する本のシリーズ
印象アップに踏み切れない人が、ある日突然注目を浴びるハンコの押し方
◆メルマガ「出世塾」の情報
(まずは発刊内容をご欄ください)
https://shinyuri-souken.com/?p=28756
◆キャリア理論の本紹介
https://shinyuri-souken.com/?page_id=41933