2024.02.03更新
「承認」という言葉から、マズローの「承認欲求」を思い浮かべる人は多いと思う。
承認がモチベーションを上げることは想像できる。
じつは、両者の関係は明らかになっていなかったのだ。
ここで紹介する『承認とモチベーション』は承認の効果を測定している。
平たくいえば「ほめると本当にモチベーションは上がるのか」ということをテーマにしている。
本書は実証研究の書であり、
下記5つの組織の従業員に対し承認の効果(意図的にほめたり、認めたりする取り組みを実施した結果)を検証している。
①公益企業A社
⓶サービス業B社(人材派遣会社)
③派遣社員(大手人材派遣会社から派遣された社員)
④看護師(私立D病院勤務)
⑤看護師(公立E病院勤務)
その結果、驚くことが明らかになった。
①公益企業A社のケース
・承認の効果が表れたのは、すべてが上司に承認された場合だった。
同僚や他部署の人に承認された場合には効果が表れていない。
きわめて現実的な結果が出たが、この結果について著者の見解を掲載しておきたい。
「上司からの承認には自分の能力や貢献度をフィードバックされるものが多いのに対し、同僚や他部署の人からの承認は感謝、すなわち気持ちの吐露が中心なのではなかろうか。だとしたら、人間関係の良さには関係しても、自己効力感やモチベーションなどにはつながりにくい。しかも昇進や昇給といった実利的な利益に結びつくのは、同僚や他部署の人たちからの承認ではなく、上司による承認である」(P81)
⓶サービス業B社のケース
・上司に集団として認められた場合の「自己効力感と挑戦意欲」「会社に役立っているという自信」が認められた。
・同僚や他部署の人から承認されなかった場合、「評価・処遇への満足」「組織への貢献意欲」「組織への一体感」「評価に対する信頼感」が急激に低下したが、
「自己効力感と挑戦意欲」「会社に役立っているという自信」については低下しなかった。
この点についても、著者の見解を記載しておく。
「評価への信頼感・満足度や組織への一体感が組織との関係や同僚との人間関係、職場の雰囲気といった環境的要素に左右される相対的なものであるのに対し、自己効力感は個人的な性質が強い。そのため、自分の能力や貢献度を正しくフィードバックしてくれる上司からの承認/不承認には敏感だが、同僚や他部署の人との人間関係にはあまり影響を受けないのではないだろうか」(P99)
③派遣社員のケース
・派遣社員が派遣元で承認された場合にかぎり、「評価への満足」が高まることが明らかになった。
(「派遣元」だというところに注意)
・給料に対して敏感だった。
派遣社員にとって給料は日常の大きな関心事であり、衛生要因としても、また一種の動機づけ要因としても強く働く。(P123)
④⑤看護師のケース
・患者からの声より、上司による承認に反応した。
患者からの感謝やねぎらいの言葉はモチベーションや働きがい、キャリア意識の向上になどには必ずしも結びつかない。(P151)
多くの看護師が仕事をするうえで、またキャリアを形成するうえで重視しているものは、プロフェッショナルとしての能力の習得と仕事をとおした能力の発揮(P149)だからである。
この点についても、著者の見解を紹介しておく。
「看護師には患者からの感謝やほめ言葉が不要なわけではなく、専門家による有形無形の承認と患者による失敗の両方が必要だといえよう。前者が日常の喜びや働きがいをもたらし、後者が自己効力感や長期的なモチベーションなどをもたらしているともいえる」(P153)
動機づけ理論を知っている人は、頭のなかでハーズバーグの「動機づけ・衛生要因」と照合すると思う。
ハーズバーグは『動機づけ要因」には、達成、達成の承認、仕事そのもの、責任、それに成長あるいは昇進といったものがあり、「衛生要因」は企業の方針と管理、監督、対人関係、作業条件、給与、身分、それに福利厚生などがあると述べている。
承認を達成の承認と読んでいることに着目いただきたい。
(『動機づける力』 DIAMONDハーバード・ビジネスレビュー編集部 P16)
ということは、著者が本書の第10章で述べているとおり、「承認に相応しい事実があったうえでの承認でなければ意味がない」ということになる。
つまり、承認には正確な情報のフィードバックが必要だということである。
気になるのは、ハーズバーグの「衛生要因」と実証結果との差である。
特に「衛生要因」とされてきた給与、身分についてである。
実証結果から、上司からの承認の効果が明確に表れた。その理由について、著者は自分の能力や貢献度をフィードバックしてくれるのは上司であり、昇進や昇給といった実利的な利益に結びつくからだと説明している。
また、派遣社員のケースでも、給料は動機づけ要因としても強く働く結果が出ている。
著者は「高水準のモチベーションを長期的に引き出すには、承認が昇給や昇進、キャリア・アップ、社会的な地位や維新の獲得といった目的・目標と何らかの形でリンクしていることが必要」(P174)と述べている。
この点が実証研究の大きな成果ではなかったかと考える。
いま、ほめる文化が強調されているが、ほめることだけなら誰にもできそうだ。
しかし、誰がほめ、認めるかということが非常に重要だということが、この実証研究から明らかになった。
また、ほめられる人は一人ひとり、職種や組織が違うし、経験や処遇なども異なる。
それゆえ、どんな形でほめられると反応するのかも違う。
考えてみれば当たり前のような話だが、実証研究がなかったからわからないでいたのだ。
また、内発的モチベーションの向上だけでなく、給与や処遇面など、ほめた結果も考えることーすなわち外発的モチベーションの向上にもつながる承認も必要なことをこの実証研究は示している。
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