部下に隙を見せる

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「部下に隙を見せるな」という言葉を聞いた人は多いと思うが、私は、組織運営のコツは、「部下に隙を見せる」ことであると思っている。
もちろん、年がら年中、隙を見せろと言っているのではない。
時々は、隙を見せないと、部下の本当の思い、声、相談を拾えないということを言っている。

 

実は、かっての私の上司にこの「隙の達人」がいた。
私は、新任管理職となり、その人が率いる部に配属となった。
その人は、5時を過ぎると、「おい、帰るぞ」とフロアー全体に響き渡るように叫ぶのである。
見ると、既に帰る身支度を整えているではないか。その人は、鞄やコートを抱えているのである。
しかし、その人は帰らない。
古参の課長の横に行っては、冗談を言ったり、ふざけあったりしている。

 

その瞬間からである!
隣の課長から、「部長、ちょっとよろしいでしょうか」と相談が始まり、違う課の職員は、「承認が欲しいのですが」とその部長がいる場所に向かう。
私も、最初は面食らったが、ちょっと判断に迷うケースの対応等の相談は、「この時間」を利用することになった。
またこの部長のことを思い出していると、確かに、仕事の後の宴席や一杯の場で、ふざけたことばかり言っている上司もいた。

 

さて、問題はここからである。
どんな研修でも、「部下の話をよく聞きなさい」と習う。あるいは、部下と接するには、「傾聴の姿勢が大事」と言われる。
それはその通りだが、いかにも、「さあ、あなたの話を聞きますよ」という顔をされ、また落ち着いた態度をとられた場合、部下は、本当に心の思いを話すだろうか。
また、このように、いつも冷静で、取り澄ました人が、酒が入った懇親会を企画しても、部下たちは、本当のことを言うであろうか。
この人たちが企画する一杯の場は、整然とした、話し合いの場であることは容易に想像できる。
しかし、この人たちは、必ず言うのである。「私は、部下に気を使っている。部下の話は、よく聞いている。時には、酒も必要と思って懇親の場も開いている。それは、部下の本当の声、考えを聞くためだ。」
確かに、一見、満点の答案のように思うが、そんなことで、部下は、自分の本当の思いを話すであろうか。
この人たちが企画する飲み会は、どこまで行っても、やはり堅苦しいのではないだろうか。

 

私は、部下が心を開く瞬間というものは、上司に隙がある時だと思っている。
上司がおっちょこちょいのことをやる。部下たちは、くすくす笑う。
そして、こんな上司は、朝に始まり夕に至るまで、自分の失敗ばかり話している。
「オレ、朝、駅に着いたら定期券を忘れてさあ、そこで、小銭を探そうと思ったら、財布に1万円札しかなかったんだ。新聞を買って、くずそうと思ったが、さすがに気が引けるだろ。だから、コンビニでこれを買ったんだ。しかし、切符を買うときよく自動発券機を見てみたら、1万円札でも買えるんだな」と話す。
部下たちは、「そんなことも知らなかったのか」と思うし、定期券を忘れた部長の表情までも想像できる。

 

それを、下の人に、あるいは周りの人に隙を見せまい隙を見せまいと思い、もっともらしいことを言う上司のことは、部下たちはどう思うだろうか。
そして、確実に言えることは、こんな隙を見せまいとする人は、冗談を言ったり、ふざけたりする人が嫌いだということである。
この人たちは、たとえ飲み会の場であったとしても、「もっと、真面目にやれ」と心の中で叫んでいたり、仮に部下がそういう行動をとると叱責する。

 

正直、この問題は、人のキャパシティーの問題である。また性格の問題もある。
しかし、一般論で言って、おもしろい人の方が、おもしろくない人より好かれるに決まっている。
私は、そんなに経験があるわけではないが、企業や組織のトップの人と会ってみると、その人のおもしろさに惹かれるのである。
企業や組織のトップというと、厳格なイメージを持つが、意外に、我々でも入り込める隙みたいなものを感じるのである。
もちろん、全部が全部ではきっとないだろうが、そんな「何か」を持っているのである。

 

そして真の問題は、組織の上に立つ人は、とかく、「自分は、こういう手続きを踏んでいる」と言いたがるが、本当にそうかということを是非考えてみてもらいたいということである。
ここでの話を基にすれば、「自分は、部下の話や、人の話をよく聞いている。また、ミーティングも実施し、極力みんなの意見をくみ上げるようにしている。そして、一杯の席も多い。いわゆる飲みニケーションだ」という組織の長がいたならば、それはそれで、大変結構なことだが、
問題なのは、その場の空気、雰囲気なのである。 ここをよく考えてもらいたい。
重要なことは、部下たちが、本当に心を開いている場になっているかということである。
そして、隙を見せまいと考える人たちが嫌う、ちょっと冗談交じりの雰囲気の方が本当のことが出るのである。

 

 

 

 

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