『第1感「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

マルコム・グラッドウェル 沢田 博

光文社 2006-02-23

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みなさんはこの本のタイトルを聞いたことがあるかもしれない。有名な本である。
あるいは、マルコム・グラッドウェルという著者名を見て、「どこか聞いたことがある」と思う人がいるかもしれない。
実は、同氏は、以前に紹介した『急に売れ始めるにはワケがある』の著者でもある。

 

私は、まず、この本のタイトルは、あまりにも素晴らしいと思うのである。
原題は『blink』である。そしてThe Power of Thinking Without Thinkingという副題がついている。
blinkは、またたき、一瞬時、きらめきという意味だが、訳者が言うように、ここは「ひらめき」なのだろう。
また、副題は、直訳すると「考えることなく考える力」ということだから、ここは私の訳になるが、「無意識のパワー」「無意識が秘めるパワー」ということになる。
それを、『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』という見事なタイトル(訳)をつけている。
なぜ、このタイトルが素晴らしいかと言うと、実際、我々は、よく「なんとなくおかしい」「なんとなくとなく変だ」という感情を持つことが多いからだ。
また、「なんとなく」思う時間は計ったわけではないが本のタイトルのように、瞬間的だが、なにか2秒くらいの間合いがあるような気がするのである。
だから、我々が持っている感覚にまさしく一致しているタイトルだと思うのである。

 

さて、我々がよく感じる「なんとなくおかしい」から、この本は始まる。
カリフォルニア州にあるJ・P・ゲッティ美術館は、ある美術商が持ち込んだギリシャ彫刻を高額な値段で買ってしまった。
偽物である。
しかし、このギリシャ彫刻を一目見て、「なんとなくおかしい」と感じた人はいたのである。
問題は、その人たちは、どういう能力を持っていたかである。
それは、「状況を輪切りにして瞬時に認識する能力」であるとこの本は言っている。
そして、「『輪切り』は、さまざまな状況や行動のパターンを、ごく断片的な観察から読み取って瞬間的かつ無意識のうちに認識する能力」(P28)と説明している。
この「輪切り」にする能力というものがこの本1冊にずーっと流れている。

 

この「輪切り」にする能力を軸としてこの本はスタートするが、この本の内容は非常に高度だと思うのである。したがって、書評するのもなかなか難しい。
そこで、私は、この本の全体像を理解してもらうには、まず、章のタイトルを見てもらうことを思いついた。
この本の章は下記のとおりである。

 

第1章 「輪切り」の力ーちょっとの情報で本質をつかむ
第2章 無意識の扉の奥ー理由はわからない。でも「感じる」
第3章 見た目の罠ー第一印象は経験と環境から生まれる
第4章 瞬時の判断力ー論理的思考が洞察力を損なう
第5章 プロの勘と大衆の反応ー無意識の選択は説明できない
第6章 心を読む力ー無意識を訓練する

 

どうだろうか? ちょっとイメージできただろうか。
つまり、この本のテーマは、超要約すると、無意識はどこから来るのか、無意識による判断が間違うことはないのか、また、無意識は訓練できるものなのか、ということを問うているのである。

 

この本の非常に大事な部分を抜粋しておきたい。

 

「無意識という巨大な体内コンピュータは、私たちが体験したこと、会った人、学んだ教訓、読んだ本、見た映画などから得たあらゆるデータを黙々と処理して意見を形づくる」(P92)

 

「第一印象は経験と環境から生まれる。つまり第一印象を構成する経験を変えれば、第一印象を生む輪切りの方法を変えられるのだ」(P103)

 

「実は余計な情報はただ無用なだけでなく、有害でもある。問題をややこしくするからだ」(P142)

 

「まず、正しく判断するには熟考と直観的な思考のバランスが必要だ。
(略) 二つめは、優れた判断には情報の節約が欠かせないということだ」(P145)

 

「瞬時の判断を瞬時に下せるのは、情報が少ないからだ。瞬時の判断を邪魔したくなければ、情報を減らすことだ」(P147)

 

以上の抜粋から、またこの本を説明すると、
無意識は、我々の体験などから作られるということである。それゆえに、第一印象の判断が間違っているということもある。しかし、第一印象も、経験を変えることにより正しく変えられるし(偏見等のことを想起願いたい)、その質を高めることができるということである。
ゲッティ美術館が買ったギリシャ彫刻を偽物と見破った人は、経験と情熱の蓄積により、第一印象の質が極めて高かったということになる。
そして、ギリシャ彫刻を偽物と見破った二人について、この本はこう言っている。
「二人とも彫像の外見に関するほかのさまざまな事柄は無視して、知りたいことをすべて教えてくれる特徴に注目した。」(P146)

 

ここで、この無意識な判断の逆は何かということをこの本は、冒頭に言っているので、ここもつかんでおきたい。
それは、当たり前だが、意識的ということである。
本書は、この脳の意識的な働き方について、こう言っている。
「経験に学び、情報をたっぷり蓄積し、整理してから答えを出す。論理的で、確実なやり方だ。しかし結論が出るまでに時間がかかる」(P16)

 

ここまで来ると、この本は、我々が犯しがちな間違いを示しているような気がしないだろうか?
それは、我々は、常々、情報をより欲しいと思うからである。それは、重要なことかもしれないが、しかし、この本が言うように、情報は取っても取っても、「すべてわかることなどありえない」(P148)ことも認識する必要があると思うのである。
また、この本が言うように、確かに情報を取れば取るほど、結論が出るまでに時間がかかることも事実だと思うのである。
そして、情報を取れば取るほど、身動きできない状態になることもきっとあると思うのである。
加えて言えば、ゲッティ美術館がしたように、望む方向(本物であってもらいたい)への情報収集を一生懸命やる傾向もあるのではと思う。

 

この本を読んで痛感したことは、我々は、「情報、情報」と、より多くの情報を取り分析することが、最も正しいビジネスプロセスのように思っているが、そうではないこともあるということである。
また、「なんとなく」思うということも立派な能力であり、結構正しい場合もあるということである。
しかし、正しく瞬時に判断するためには、正しく経験を積み重ねることが必要なのである。
難しい本である。
みなさんには、ぜひ、本書をお読みいただき、この本の正しい理解をしていただきたいと思う。

 

 

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』本の表紙

 

 

 

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2015年2月18日