『日本人が一生使える勉強法』 

日本人が一生使える勉強法 (PHP新書)

竹田 恒泰

PHP研究所 2014-08-12

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このHPの読者なら、なぜこの本を取り上げたか推察がつくのではないかと思う。
「はじめに」で、著者は次のように書いている。
「……毎年これだけの新刊が出ているということは、実践したが続かず、内容に不満を抱いている読者が多い証とも言えます。もし本当にその一冊を読んで成功したなら、二冊目は読まなくてもよいはずです。成功法則と自己啓発の本を読んでも読んでも成功しないからこそ、新しい本が出る度に買い求め、いつか究極の成功本に出合えるという期待を持ち続けている人が多いのかもしれません。
こうした現状に対しては、分野は違えども一人の作家として心苦しさを覚えます。また、自己啓発書の読者の中には、書かれている内容の実践より一時的な高揚感を得る目的で、次々と購入する依存症的な人がいるのも確かです」(P11)

 

この記述は、まさに、本HP、そして拙著『サラリーマンの本質』 の出発点と同様である。
そして、著者は西洋式成功哲学について、
「目標そのものの妥当性を問わない目的合理性の成功哲学と言えるでしょう」(P27)
「誤解を恐れずに言うなら、西洋的な成功哲学の目指すものは『巨富を築くため』ないし『自分の願望を実現させること』であり、それはすなわち『自分のために生きること』と言い切れるでしょう」(P30)
と言っている。

 

この記述も、まったく同感である。
最近大流行りの外資系ビジネスコンサルタントが書いたビジネス書を読者も、先に「目標在りき」のような気がしてならない。
これらの本の売りは、目標に向かう極めて合理的な手段である。
その手段は、確かにビジネスコンサルタントを業としている人には有効だが、果たして一般の人に本当にあてはめていいか疑問を持ち続けている。
なぜならば、それは、とにかく結論を早く合理的に出そうとする手段であるような気がしてならないからである。
すなわち、竹田氏が言う「自分の願望を実現させること」を目的としており、もし、目標自体が違っていたなら、どうなるのかという危惧を覚え続けているからである。

 

また、本書では、極めて重要なことが書かれている。
それは、日本人と欧米人との働くことに対する価値観の違いである。
次のように言っている。
「……日本人にとって働くことは喜びであり、幸せそのものです。ですから八十歳になってもまだ現役で働いている人は『うらやましい』と言われます。欧米人から見たらきっと『お気の毒』と言うに違いありません。欧米人にとっては、三十代や四十代で大成功してリタイアすることが『うらやましい』ことであって、働きつづけることは何もうらやましくはないのです。このように、日本人と欧米人では働くということについての価値観が全く違います』(P51)
そして、それは、欧米人にとって労働は「神から与えられた罰」だからと説明している。

 

この箇所を読むと、ほとんどの日本人はピンとくるのではないだろうか。
そもそも働くことの価値観が違うのである。だから、欧米人は、既述したような西洋式成功哲学を持つということになる。

 

その他にも次の箇所も非常に重要である。
「……たとえば四〇万円の給料なら、それ以上の働きをしようとするのが日本のサラリーマンの心情ですし、四〇万円の注文を受けた会社は、たとえば四五万円とか、五〇万円の価値のある品をつくって納めようとするのです。
一方で、他国の人はどうでしょうか。たとえば欧米人は『要求されたこと』しかやりません。先に述べたように、彼らにとって労働は『罰』だからです。目の前のことをしっかり計算して、四〇万円の仕事を受注したら、四〇万円分の仕事をするだけです。もし欧米人が四〇万円の仕事で四五万円のものをつくって納めたら、五万円分損をした気分になるでしょう。………」(P217~218)

 

この部分を読み、私はもしかして、日本のサラリーマンの悩みの原点はここにあるかもしれないと思った。
日本のサラリーマンは、だから頑張り、だから悩むのかもしれない。
そして、『サラリーマンの本質』の中で記載したように、「よく思われたい」と思うのかもしれない。

 

その他、「『緊急ではないが重要なこと』の代表が勉強」(P123)に書かれている「緊急ではないが重要なこと」にどう時間を捻出するのか、
「国立国会図書館を使いこなそう」(P165) に書かれている検索システムと複写サービスの紹介が非常に参考になった。

 

また、この本は、情報収集について、コミュニケーション力、人脈のつくり方などもしっかりと記載されているのが特徴である。
そして、私は、本を読み終えて思ったことがある。
それは、勝間和代氏の代表作である『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』(本HPでも紹介)と構成が似ていることである。
勝間氏の本にも、情報の取り扱い、インプット力、読書投資法、生活習慣の技術、人脈作りが載っていたからである。
もちろん、主張の原点が違うことは言うまでもないが、2つの本を並べてみて考えてみるのも面白いと思う。

 

最後に、やはり、日本人には日本人の価値観があるのだと思う。
そして、本書が指摘するように、今流行のビジネス書は、西洋式成功哲学に基づいた本である。
この部分を確認する必要があると思うのである。

 

 

 

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2014年9月13日