『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』 

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか (PHP新書)

竹田 恒泰

PHP研究所 2010-12

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この本には思想がある。それゆえに様々な意見があると思うが、日本人が忘れかけたものがこの本に記載されている。
日本、そして日本人の原点を問いかける本である。

 

本書を読んでいくと私にも「思い当たるフシ」がある。
私は、幼少期だったが、昭和30年代の記憶が残っている。
その時代は、日本国中、アメリカの生活様式に深く憧れ、追い求めていった時代だったような気がする。
確かに、電化製品の普及を始めとし、急激に生活様式が変わっていった。
そして、同時に、生活が実感を持ってよくなっていった時代である。
しかし、その過程で、新しいものを追いかけるのが正しいような錯覚に陥った時代だったような気がする。
その結果、物を買い替えるということを、日本人は覚えていったような気がする。
本書を読んでいると、確かにその過程で、日本固有の考え方、生活様式というものが切り捨てられていったのではないかと思えるのである。
そして今にしてみれば想像がつかないかもしれないが、その時代は、日本は敗戦国という意識が残っていた。
かいつまんで言うと、その時代は、きっと従来の日本固有の考え方、生活様式が否定されていった時代なのだろう。

 

しかし、その時代には、幸いなことに戦前からの人が社会の中心だった。
私も、ご飯粒一つ残しただけで、激しく父親から怒られたことがある。
また、「お金」を口に出すことも、卑しい話だという風潮も確かにあった。
そして、その時代は、まだ日本の風情も残っていた。
金魚売りの人も、リヤカーを引きながら街を回っていたし、魚屋さんも、酒屋さんも出前を取りに各家庭を訪問し、そこで世間話が弾んだ。

 

しかし、今、日本にはかっての生活様式というものがかなりなくなってきている。
お金に関する価値観も大分変わった。
まさに、本書が言おうとするように日本人の原点、拠り所というものを、考え直さなければいけない時代になったと思う。
そして、本書を読んで思ったことは、日本人が忘れかけているものがかなりあるということである。
一つは、日本は建国以来、国体時代は一度も変わったことがないという事実である。
その要因を、本書は述べているが、日本人全員がやはり認識しなくてはいけないことなのだろう。
また、日本は、古えの昔から、自然との調和を図りながら生きてきたことがよくわかる。
日本人は、八百万(やおおろず)の神と言うように、自然、物体すべてに神が宿ると考えてきた。
このことは、私自身もよく教えられてきた。
私も、両親からよく、「○○の神様がお怒りになるよ」と、物を粗末に扱ったり、不潔にしていたときによく言われたのである。
このことが、日本人固有の表現である「もったいない」「いただきます」という言葉を生み、すべての事象に感謝するという姿勢を持つことになったのだと本書を読みながら、改めて感じたのである。

 

さて、日本人は、年をとるにつれ、日本ほど美しい国はないと思う人はけっこう多いのではないだろうか。
実際、日本の自然は本当に美しい。また日本人の礼儀作法というものも美しい。
先日、「酒場放浪記」の吉田類氏のフリートーキングに参加したが、 同氏も、「日本ほど、美しい国はない。美しい自然があるから、お酒が美味しいし、食べ物も美味しい」と話されていた。
それは、本書にあるように、日本人が自然を敬い、そして、すべてのものを敬い、大切にしてきた証なのではないだろうか。
このことが、日本が連綿として一つの国であり続けたことではないだろうか。
もし、この部分がなくなれば、日本は日本ではなくなるのではないだろうか。

 

2013年12月30日