『激動社会の中の自己効力』

私たちはキャリア理論を、ほとんどの場合、要約した本やテキストから学ぶ。
バンデューラが提唱した「自己効力感」は受け入れやすい理論であり、それで十分かもしれないが、「自己効力感」はさまざまな分野に応用できる理論である。
したがって、その理論がどのような分野で議論され、応用できるのか考えることも非常に大事なことだと思う。

 

紹介する『激動社会の中の自己効力』はアルバート・バンデューラ監修による『Self efficasy in Changing Soceities』の全訳である。
1993年ドイツのマルバッハ城で開催されたSelf-efficasy会議に参加した学者の論文が主になっている。
論文の集約というと二の足を踏むかもしれないが、比較的平易に書かれているので、ぜひ参考にしていただきたいと思う。

 

「自己効力感」を考えるとき、学者たちはどんなことに関心を持ったのだろうか?
それは、私たちが考えることと、だいたい同じである。
東西ベルリンの壁が崩壊したとき、東ドイツの人と西ドイツの人の自己効力感の差が浮かび上がったはずである。
特に、異なる社会制度の下で育った子供たちの自己効力感にその差が見られたはずである。
また、東ドイツの人でも、統合社会でうまくやっていけた人とそうでない人もいたはずである。
それは東ドイツの人ばかりではない。新しい社会に移住するとき、それを「危機」と感じる人もいれば、「チャンス!」と感じる人もいる。
その差は自己効力感の差なのだろうか?
自己効力感の差だとしたら、その差はどのようにした生まれたのだろうか。

 

また、私たちは成長するにつれ、得意な科目と苦手な科目が生じ、それによって専攻が決まった。
その分岐点は多くの場合「数学」だったはずである。
なぜ数学とこれからも付き合っていけると考えたのだろうか。どうして、数学とおさらばしようと思ったのか。
就職するときも、なぜ、その職業、会社を選んだのだろうか?

 

健康などの自己管理をうまく行える人もいれば、そうでない人もいる。
アルコールなどの中毒症にかかった人の中には、その症状から脱却できる人もいれば、そうでない人もいる。
その差は何なのだろう?

 

私たちが疑問に思っていることを、各学者はテーマに挙げている(下記目次参照)

 

 

自己効力感とは、「自分がある行動についてしっかりとやれるという自信(効力感)のことであり、自分の行動について自分自身でコントロールできているという信念」である。(労働政策研究・研修機構『新時代のキャリアコンサルティング』参照)
「コントロールの信念は、随伴性の信念と能力の合成として概念化されている。随伴性の信念とは、ある行動がある結果をもたらす蓋然性に関する信念であり、能力の信念とは、こういった行為をもたらす能力を意味する」(本書 3コントロールの信念の発達的分析 A.フラマー)

 

つまり、自己効力感とは「ある行動」についての効力感(自信)であることを、しっかりと押さえておく必要があると思う。
ネット上に掲載されている記事を見ると、自己効力感が高い=達成や成功を手に入れやすいといったニュアンスを覚えてしまうが、自己効力感自体は、ある行動についての自信について述べていることに注意する必要がある。
ある行動について自己効力感が高い人は、他の行動についてもそうした傾向があるとは思うが、私は自己効力感を一括りにしてはいけないと思っている。
それは、たとえば勉強ができる人で泳ぐことに関しては金づちの人に、勉強と同じように自己効力感を持てといっても、話が違うからである。

 

自己効力感自体は普遍的な概念であるが、それぞれの分野と環境により、内在するテーマが違うといったことを示しているのが本書だと思う。
たとえば、部下の印象から、一括りに自己効力感が低いから自己効力感を高めようと考えるのでではなく、どの部分に自己効力感がないのか、その原因は何なのか、それを高める方法にはどんなことがあるのか考えることが必要だと思う。

 

 

目次

1  激動社会における個人と集団の効力の発揮

2  激動社会のなかの人生の軌跡

3  コントロールの信念の発達的分析

4  コントロールの信念に関する家族の影響

5  自己効力における比較文化的視点

6  ストレスフルな人生移行における自己効力

7  自己効力と教育的発達

8  職業選択と発達における自己効力

9  危機行動の変容と健康行動の受容ー自己効力の信念の役割

10 自己効力と中毒行動

 

 

激動社会の中の自己効力

(本体価格は6,000円とちょっと高額です)

 

 

 

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