マッキンゼーと対極にある本

まず、マッキンゼーのコンサルタントが言っていることを理解する必要がある。
ここは、辛抱しておつきあいいただきたい。
結論から言うと、そんなに多くのことを言っているわけではない。
しかし、必ず「空―事実 雨―解釈 傘ー解釈に対しての行動」をベースにしている。
この手法は、情報分析~適切な行動をとるための手法である。
最近話題になっている『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』は、この「空―事実 雨―解釈 傘ー解釈に対しての行動」1点に絞った本である。
すでにマッキンゼー出身の勝間和代氏の本を読んだ人なら、この内容は頭に叩き込まれているはずだ。
そして、マッキンゼー出身者は、上記に、フレームワーク(情報への軸づくり、情報の区分け、整理)と「階層化」(情報の階層化)を足す。
平たく言えば、情報の整理技術だと思っていただければよい。
また、なんでこんな情報整理をしているかといえば、それは正しく問題の本質に向かうためである。
簡単に言うと、これだけである。

そして、前もってことわっておきたいが、この論理の組み立て方は有効であることは間違いない。

 

しかし、問題は、ここからである!
実は、多くのビジネスマンやサラリーマンは、こうした作業を知らず知らずのうちにやっている。
ただし、「行動した結果→解釈」という作業に重点が置かれている。
平たく言えば、行動の結果から、その行動が適切だったかを考えているということだ。
もっと噛み砕いて言えば、上手くいかなかったこと、失敗した結果から学んでいるということだ。
こういうと、マッキンゼー出身者は、必ずこう言うだろう。
「だから、上手くいかなかったのだ。漠然とした行動をとったから上手くいかなかったのだ。上手くいくために、事実を見つめ、その事実を的確に解釈して、適切な行動に結びつけるのだ」と。
また、失敗した結果には、こう答えるだろう。
「今度は、その失敗した結果=事実とすればいいんだ。そしてその事実を正しく解釈して、適切な行動を起こせばいいんだ」と。
2つの論法とも正しいように思える。しかし、なにかしっくりこないのである。

 

なぜしっくりこないのであろうか? ここが問題である。
ここを共に考えてみたい。

1つは、やはり、どこまで行っても方法論だということだ。
極論すれば、仮に実務経験0のコンサルタントがいたとする。
それでも、方法論だから、まさに適否の2つしかない。そして、この論法は適と思うので、実務経験0の人にコンサルを受けても、適切な解に導かれるということになる。
しかし、私には、とてもそうは思われないのである。
ちょっと話は横道にそれるかもしれないが、かって私は、ある大手コンサルタント会社に研修会をお願いしたことがあった。
1度目は、私の部署が依頼し、2度目は、他の部署の人が依頼した。
2回とも、若いコンサルタントが講師となったが、正直ひどいもんだった。
まったく内容のない上滑りの話で、出席者の共感をまったくよばなかった。
私は、やはり「実体験」というものが必要ではないかと思うのである。

 

こう言うと、マッキンゼー系のコンサルタントの人は、「われわれも実務体験を持っている」と言うかもしれない。
しかし、その経歴は、一般のビジネスマンやサラリーマンとは、かなり違うのではないだろうか。
マッキンゼー系のコンサルタントの人は、仮に一般企業に勤めていたとしても、比較的短期にその企業を退職してMBAとなりコンサルタントの道を選んだ人だったり、特定分野の企業に勤めたのち、やはりMBAとなり、コンサルタントとなった人が多いのではないだろうか。
つまり、表現は悪いが、MBA、マッキンゼーというブランドを前面に出しているにもかかわらず、一方では、「われわれも実務経験をもっている」と言われても、通常感覚としては、「ちょっと違う。ちょっと都合がいい」ということにならないだろうか。

 

もう1つ。
私は、最近、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』『おかねが貯まるのは、どっち?』を読んだ。
どちらも実務経験者が書いた本だ。
すんなりと頭に入るのである。すとんと腑に落ちるのである。
やはり、実務経験者が書いた本はわかりやすいし、納得感が違うのである。抵抗感がないのである。
この2つの本とも、さきほどの例で言えば「行動した結果→解釈」の本と言える。言ってみれば失敗から学ぶ本である。
こっちの方が皮膚感覚で言うと、やはりわかりやすいのである。
なにか、日本人の感覚としては、こちらの方がわかりやすく腑に落ちるような気がして仕方がないのである。
やはり「実体験」は必要だと思うのである。

 

そうすると、われわれは、マッキンゼー本の多くの著者が、一般的な実務体験が少ないにもかかわらず、なぜ、それを声高に言わず容認してしまうのだろうか?
それは、ブランド力があるからである。
なにか、それを否定すると、表現が悪いが自分の教養までも否定してしまうような感覚があるからではないだろうか。
だから、本は売れるのである。
仲間内で話せば、「おい、あの本読んだか? よかっただろ?」「うん、よかった、よかった」ということになるのではないだろうか。
それでは、マッキンゼー本に対して日本のビジネス書は、どんな対抗手段を取っているのだろうか?
正直太刀打ちするのを避けている。
そして、成功体験本にジャンルを絞っているのではないだろうか?
しかし、この論法は間違っているような気がする。
もし、太刀打ちするのであれば、そして、マッキンゼーの論理には論理で返すということになれば、さきほどの2つの本のように、「行動の結果→解釈」の方が理に合っているのである。すなわち、失敗本の方が理にあっている。
なぜなら、成功というものには理がないからである。
まぐれ当たりで当たる場合もある。時代の波に乗ることもある。人気一筋で成功することもある。
失敗体験のように、きれいに原因分析ができないのである。
ところが、なぜか受けを狙い成功本で勝負しようとする。
先日も、売れまくった成功本の著者の事業が行き詰まるということがあった。
それは、成功には理がないことの一端を示していると思うのである。

 

そして、これを言ったら元も子もないと言われるかもしれないが、常識的に考えれば、世の中、方法論だけで上手くいくわけはないのである。
それで上手くいくほど世の中甘くないのである。
実務で学んだこと、職場で学んだことは、その人の地となり肉となり、身に付くのである。
コンサルタントのアドバイスは傾聴に値するかもしれないが、肝心要は、それが、自分たちの地となり肉となり身に付くかどうかである。
万が一、それで上手くいかなかったときは、どう説明するのだろうか?
そのときは、「最終的には、あなたの責任でしょ」ということになるのだろうか?
そう考えると、わたしは、やはり、自分たちと同じ感覚ーさきほどの「実務で学んだこと、職場で学んだこと」を共感しあえる本に、マッキンゼー本の隆盛後は戻ると思うのである。

 

そして、こういう実務を経験した人が書いた本に、われわれは、「そう、そういうことあるある」「えっ?そういうことだったのか」とか合いの手を入れるのである。
こういう本は、みんなが同じ土俵の上に乗っているから、すそ野も広いし、みんなで考え、合いの手を入れながら進むことができる。
そして、自分の血と肉にスーッとなっていくのである。
また、本を読むという楽しみもあるはずである。
マッキンゼーの人は、よく口癖のように「頭に汗して考える」と言う。
それはその通りかもしれないが、実務は行動が最も重要なのである。やはり汗するのは体であると思う。

 

以上のことから、マッキンゼー本のあとに来るものは、日本人の感覚にあった「実務教訓本」である。
先に紹介した『絶対にミスをしない仕事のワザ』『お金が貯まるのは、どっち?』のような本である。
わたしは、それを「ビジネス書ジャパン」と名づけた。
こういう本を、みんなで、ドンドン紹介しあっていきたい。
それが、「ビジネス書ジャパン運動」である。
ご賛同いただける人には、ぜひ、力を貸していただきたい。

 

最後に、1つだけ、拙著『サラリーマンの本質』について宣伝というか、考え方を述べさせていただきたい。
さきほど、日本のビジネス書は、マッキンゼーとの対決を避けて成功本に向かっていると書いたが、気になっていることが1つある。
それは、「日本ブランドのビジネス総合本」というものがないことである。
これは、誰かが、成し遂げなければならない。
『サラリーマンの本質』は、とてもそんなビジネス総合本と言えるものではないと思うが、それを意識して作ったつもりである。
総合的な内容にしたつもりである。
題名を『サラリーマンの本質』としたことで、出版関係の人からだいぶご指導を受けた。
その多くは、「そんな題名ではダメだ。成功するとか、もっと具体的な題名にしろ」というものだった。
しかし、ここまで来ると、みなさんは、おわかりになったと思うが、
「本質」は、失敗したことから見えてくるものである。
そう、私自身、失敗しまくったから、失敗体験者として、「こういうことは、できればしないで!」「ここは、こう考えて!」と書いたつもりである。
100%実際の体験から出発している。
ご参考にしていただければ幸いである。 http://amzn.to/1kkJaFa

 

 

 

 

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時代の振り子は大きくマッキンゼーから動く?

今は、マッキンゼーという名前をだせば売れる時代である。マッキンゼーといえば、古くは大前研一氏、そして勝間和代氏の名前が浮かぶが、このマッキンゼー威光はいっこうに衰えていない。むしろ全盛期ではないだろうか。
そんな中で、今話題の『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』を読んだ。
本の中身は本当に役立つものだと思う。

 

しかし、それ以上にすごいと思ったのは、本の表表紙、帯に、マッキンゼー、ボスコン(BCG)、東大合格生…とあるではないか。
そして続いて、「トップエリートが使うノートで、6つの能力がみるみる上がる!」と書いてある。
本の内容は素晴らしいのだが、この本の中で外資系コンサルタントという文字がいったいどれだけでてくるだろうか?
数えないくらいの数だ。
そして、ビジネス書をよく読んだ人ならすぐに気づくと思うが、本の内容も、マッキンゼーのコンサルタントが使う「空=事実認識 雨=状況解釈 傘=行動・提案」を主軸に置いている。
その他、フレーム、事実(ファクト)、再現性など、マッキンゼー系コンサルタントが使う用語だらけだ。
本にざっと目を通すだけならば、勝間和代氏の本と思う人も多いのではないだろうか。
また本中に28才という年齢が多く出てくるが、これは、ビジネス書のターゲットは、28才を狙えという鉄則を守ったものと思われる。

 

一方で、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40あげて慶應大学に現役合格した話』が売れていると思ったら、最近、新聞広告を見て、目を剥いた。
本は読んでいないが、今度は、『偏差値30でもケンブリッジ卒の人生を変える勉強』という本の広告が載っているではないか。
これでは、慶應をケンブリッジに変え、偏差値40をさらに10下げインパクトを狙ったと思われてもしようがない。

 

いったいなにがどうなっているんだろうか?
実は、このマッキンゼーとビリギャルとは、共通点がある。
それはブランドである。
マッキンゼー、ボスコン(BCG)というブランド、東大、慶應、ケンブリッジというブランドを前面に出しているという共通点がある。
つまり、今のビジネス書の売れる条件は、一言で言えば、ブランドということになる。

 

さて、問題はここからである。
この状況がいいとか悪いとかという問題を抜きにして考えた場合、ブランドの次に、今度はいったい何を売るのであろうか?
また、われわれは、全盛期のあとに必ず衰退期が来ることを、歴史からも社会現象からも経済現象からも学んでいる。
そして、いま、まさにマッキンゼーというブランド、ケンブリッジ、ハーバード、スタンフォード、東大、慶應というブランド、MBA卒というブランド、外資系コンサルタントというブランドは全盛を極めているのである。
これから必ず衰退期を迎えることになる。
それは、そのときの社会が決めることである。そのときの人びとが決めることである。
しかし、その衰退は、なんとなく予想ができる。
多くのビジネスコンサルタントが言うように、振り子は真逆に大きく振れるのではないだろうか。
この反動は彼らの言うとおり大きいのではないかと思う。

 

考えてみれば、今の状況が異常なのかもしれない。
「外資系コンサルタントが使用しているからいいツールだ」「外資系コンサルタントが言っているから正しい」という風潮があり、それゆえに、マッキンゼーという名前を出した本が売れている。
しかし、常識的に考えれば、「外資系コンサルタントが使用しているからいいツールだ」ではなく、「いいツールを外資系コンサルタントが使用している」と言った方が正しいのではないだろうか。
同様にして、「外資系コンサルタントが言っているから正しい」のではなく、「正しいことを外資系コンサルタントが言っている」ではないだろうか。
ここの混同が意図的かどうかは別にして、あるような気がする。
私は、この常識的なところから、修正が始まるような気がする。

 

私が知りたくて知りたくてたまらないことは、「時代の振り子は大きく反対に振れる」と言っているビジネスコンサルタントの人たちが、どういう反動が来るのかを予測しているかである。
まさか、このマッキンゼー現象やブランド現象がいつまでも続くと予想しているわけはないと思う。

 

一つの予兆の参考になるのが、マッキンゼー等のブランドの流れをくむビジネスコンサルタントの方のfacebookやtwitterのファン数の変化ではないかと思っている。
facebookやtwitterは言うまでもなく、気軽にファンになれるところに特徴がある。
今は、マッキンゼー絶頂期であるから、それらの方のページのファン数は、うなぎ上りになっているはずである。
しかし、そのファン数がピタッと止まったときは、一般の人の関心は冷めて、違うターゲットに向かったということになる。
こんなところから、振り子が始動するのではないだろうか。
まず、振り子が始動する瞬間に着目したい。

 

 

 

 

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