ビジネスマンは十種競技のアスリートのようなものである

私は多くのビジネスマンは、陸上競技―その中でも十種競技のアスリートのようなものだと思うのである。
多くのビジネスマンは、「100mも走れば、400mも、1,500mも走る。走り幅跳び、走り高跳びもやれば棒高跳びもやる、その上、砲丸投げ、やり投げをこなし、110メートルハードルもやる」アスリートに似ていると思うのである。
この十種競技のアスリートのようなビジネスマンの性格が、外資系コンサルタント出身者が書いた本の読後感を決めていると思うのである。

 

たとえば、営業部門に配属されたビジネスマンの1日を見ると、ざっと、下記のような感じではないだろうか?
出勤すると、すぐメールをチェックする。その後、ミーティングを済ませ、得意先に電話をかける。得意先からもじゃんじゃん電話がかかってくる。社内からの電話も多い。電話応対をひととおり済ませ、慌ただしく得意先の訪問に向かう、昼食を途中で取り、午後も得意先訪問をする。そして会社に戻る。帰社後、上司への報告を行い、今度は、要回答文書の作成などに取り組む。夕刻は、会議に参加する。会議終了後、得意先との接待に向かう。

 

要は、1つだけの行為をしていないのである。
ミーティング、会議に参加したかと思えば、もちろん、営業活動もする。営業活動をしたあとは、報告もすれば、文書作成もする。その上、接待までこなすこともあるのである。
それだけではない。多くのビジネスマンは、営業部門で働いているが、それだって、3-4年に1度は転勤もあるのである。その上、営業から内勤、内勤から営業というように、さまざまな職種を経験するのである。

 

これが、多くのビジネスマンの実態である。
1日を振り返っただけでも実に多くのさまざまな異なる種類の仕事をこなしている。
また、長い年月を振り返ってみると、多くの職務を経験している場合が多いのである。
そして、重要なことは、このさまざまな仕事の「総合点」で、ビジネスマンの評価が決められており、また一定期間のさまざまな職務の実績から、昇進、昇格が決められているのである。
だから、私は、ビジネスマンは十種競技のアスリートのようなものではないかと思うのである。

 

そんな感じで、外資系コンサルタントの本を見ると、なにか、100メートルなら100メートルと特定種目のスペシャリスト向けのような気がするのである。
確かに、前に紹介した『ロジカル・シンキング』『イシューからはじめよ』を読むと、さすがにこれは、一般のビジネスマンには真似できない専門性というものを強く感じる。
多分、これらの本は、「普遍性」があるロジックとして、一般のビジネスマンも対象にしていると思うが、実際、これらの本を理解し、実務に活かせる人は、企業の中で、企画などを専門に行っている部署の人、あるいは特定の問題解決のプロジェクトチームに参加している人など、かなり限られてくるのではないかと思うのである。

 

その意味で、『ロジカル・シンキング』や『イシューからはじめよ』は、特定種目のビジネスマンに参考になることは間違いない。
それは、やはりその道のプロフェッショナルが、その道のことを正しく教えているからである。
しかし、ちょっと気になるのは、外資系コンサルタント出身者が、コンサルタントの世界の話を一般のビジネスの世界にあてはめようとする場合である。
正直、この場合は、ガクンと現実への適用度というものが落ちてしまう。
それは、考えてみれば当たり前で、彼ら自身が言うように、それは「外資系コンサルタントの世界」の話であるからだ。そこでの掟、ルールというものだからだ。
だから、多くの読者は、「それはそうかもしれないが………」という感覚を持つのではないだろうか。
「すごいな」と感心はするが、心の中で、現実への適用をあきらめるのではないだろうか。

 

誤解がないように慎重に表現するならば、本の内容が「外資系コンサルタント」本来業務にとどまっている場合は、本の内容は、まさに参考になる。しかし、その世界の話を、一般のビジネスの世界にあてはめようとすると、とたんに現実離れを生じてしまう。
これも当たり前である。それは、彼らは、「外資系コンサルタント」の世界の経験、あるいは一般の人から見ると極めて特殊な企業での経験はあるかもしれないが、一般のビジネス世界での経験はないからである。

 

そして、忘れてはならないことは、多くのビジネスマンは十種競技のような世界で戦っているということである。
確かに特定種目の記録を高めることは、「総合点」も高めることができる。
しかし、別角度で十種競技を見れば、「走る」「跳ぶ」「投げる」「障害をこなす」ということを全部こなさないといけないのである。
また、より重要なことは、現実のビジネスの世界は、すべてが「動態」で進んでいるということである。
一つの課題について、一日中、じっくりとこなすということは、まずない。また、1か月とか、もっと長期のタームで見ると、1つの課題だけに専念しているということはあり得ない。
すべて、同時並行、動態の中でビジネスは進んでいるのである。
この点についても、外資系コンサルタント出身者が書いた本を読むとき、考えてもらいたいことである。

 

加えて言えば、みなさんは、何に悩んでいるかということである。
ここが、ビジネス書を読むときの出発点のような気がしてならないのである。
『サラリーマンの本質』は、ビジネスマンの苦戦や悩みの出発点は、仕事の進め方にあると考えているので、関心がある人は参照いただきたい)

 

 

 

 

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