上手いビジネスはたえず継続的関係を求めている

私は、「これは敵わない」と思うほど上手いビジネス例を知っている。
それは、私自身が経験したことだ。私は、ある生命保険会社のがん保険におつきあいで加入した。そのときの月々の保険料は確か870円だったはずだ。
しかし、その後に「夫婦型があります」「こういう特約ができました」とタイムリー(?)にダイレクトメールが届き、その度に私は真剣に検討し、特約を追加し続けて、なんと今では月に10,000円近くの保険料を払っているのである。
そして、この保険の内容をよく見てみると、なんと終身払いになっているではないか。ということは、一生この保険料を払い続けなくてはならない。一生この会社とつき合わなければならないのである。
そして、さらに「すごい!」と思うのは、そんな私に、まだ新しい特約案内のダイレクトメールが続けていることである。
私は、この生命保険会社を心から「すごい!」と尊敬すると同時に、お人好しの私は、そのとき、「本当に上手いビジネス」というものに気づいたのである。

 

それは、たえず継続的関係を絶やさないビジネスである。
考えてみれば、私たちの生活は、こうした継続的関係を求めるビジネスに、けっこう左右されている。
デパートや専門店でスーツを作れば、その後に必ずセールなどの案内が届く。
コンタクトでも、バッグでも、住所を登録していたならば必ず、定期的に案内が届く。
クレジット会社からも、旅行案内やグルメ情報が届く。
これが、会員にでもなっていたら大変だ。もっともっと案内が来るはずだ。
それだけではない。先ほどの生命保険の例だけでなく、月々の出費が伴うものも結構あるのだ。
一つは、会費と呼ばれるものである。それ以外にも、家庭でセキュリティーを入れている場合なども毎月口座から使用料が落ちているはずである。

 

そして、この「継続的関係」は、それだけにとどまらないのである。
家に帰って、PCの受信トレイを開けば、また、この「継続的関係」はどっと姿を見せるのである。
それは、セミナーの案内だったり、メルマガだったり、本の案内だったりする。
そこには、「一度食いついたら、離れない」というビジネスの神髄がある。
しかし、この受信トレイを開けるときの感情というものは、なければ、なかったで、結構淋しいのもなのである。
その心の間隙を見透かされたように、メールが届くのである。

 

しかし、私は、世の中には、この継続的関係を「上手く処理している人」がいると思うのである。その人たちは、文字通りこの継続的関係を、自分でよく考えて上手に整理しているのだろう。
だが、圧倒的多数の人は、仕事では、よく「頭を整理しなければならない」と考えるが、この「継続的関係」の見直しはしていないと思う。

 

さて、このブログの読者の多くは、ビジネス書のファンだと思うのであえて言及するが、ビジネス書も同じようなものではないだろうか。
またセミナーなどもこの類に入るのではないだろうか。
ビジネス書の類のような本を書き、ビジネスパーソン向けのブログを書いている私が言うのも、はなはだおかしいが、ビジネス書を読めば読むほど、またセミナーに参加すれば参加するほど、この「継続的関係」を断ち切るのは難しくなっているのではないだろうか。

 

この現象は、不思議な現象なのである。
それは、ビジネス書自体を読むのが好き、あるいはセミナーを受けること自体が好きという人を除けば、本来、ビジネス書やセミナーは、「目的」があって、読んだり参加したりしているはずなのである。
それが、この「継続的関係」を断ち切れないでいると、ビジネス書を読むこと、セミナーに参加すること自体が「目的」となってしまうことである。
それだからビジネスは成り立っていると言えば、ここで議論はおしまいになってしまうが、ビジネス書やセミナーには断ち切ることができない不思議な力、魔力があるように思えてならないのである。

 

前に、漆原直行氏の『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』を紹介したが、この本の中で、ビジネス書作家を目指す人で出版エージェントに登録している人は、「登録料として月に5,000円~1万円程度、セミナーに出るたび1万~2万円程度徴収されてしまうので『正直、けっこう負担』とこぼしている人もいました」(P146)と書かれてあった。
自分の夢を追いかけることは、とても素晴らしいことだと思うが、たしかに、金銭的にも時間的にも結構な負担になると思うのである。

 

こうしてさまざまなビジネス例を見てみると、けっこうこの「継続的関係」を断ち切るのは難しいことがよくわかる。
そこには、私たちをなかなか手放してくれない魔力のようなものがあるからだと思う。
先ほどの生命保険の例で言えば、そこには断ち切ると安心が失われるという魔力がある。ビジネス書やセミナーで言えば、読まなかったり参加しなかったりした場合、不安になるという魔力がある。また、出版セミナーでいえば、夢が失われてしまうという魔力がある。
だから、継続を選択するのだと思う。
しかし、ビジネスという視点に立つならば、継続的関係を保つということは、とてつもなく上手いビジネスであることも事実である。
それは、継続的収入が得られるからである。

 

そうすると、どうすればいいか? これだけは、自分で考えなくてはならないことだが、
そして非常に難しいことだが、強いて言えば、「相手の土俵に乗る前に、自分でよく考えてみる」あるいは、「自分のペースを守り、相手を利用する」しかない。
それに、自分の「目的」に一直線に結びついているかである。回り道していないかである。あるいは、買い物でいう、衝動買いしていないかである。
ビジネス書には、よく自分のペースを守り切るということが書かれているではないか。
ビジネスの神髄のようなものに立ち向かうのは、容易ならぬことであるが、一度、自分の力で、0クリアーにし、自分のペースで整理してみたらどうだろうか?

 

 

 

 

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