追い込まれない動作

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先日、「追い込まれる動作」を書いたが、今回は逆に、「追い込まれない動作」というものを説明したい。
ぜひ実行してもらいたい重要な動作がある。この動作を実行すれば、あなたは追い込まれることはない。
実は、ここでの話は、私の経験からの話である。前もってことわっておくと、これは私の自慢話でもなんでもない。私自身が追い込まれ、その状態をどうやって脱出したかという話である。 辛抱して聞いてもらいたい。

 

私は、入社2年目で営業の最前線に出た。私自身も不安であったが、それ以上に不安であったのは、私が担当することになった得意先であった。
私はひと通りの引継ぎを受けたあと、いよいよ一人で得意先を回ることになった。
そこで遭遇したのは、私が入社2年目であることを知った得意先の不安の顔だった。
得意先を回ると、私の到着を待ちわびていたかのように、様々な質問や問い合わせが私に浴びせられた。
その質問のいくつかには、研修で学んだ知識で答えられたが、ほとんどは、やはり、その場で答えられないものだった。
私は、「社に戻り、調べてご返答いたします」とお決まりの言葉を使い、得意先を辞した。
ところがである。社に戻り、得意先から受けた質問を先輩たちに聞こうと思っても、先輩たちは忙しく働いており取りつく島がない。とても声をかけれる雰囲気にないのである。私は、先輩たちの仕事の区切りがつく瞬間をただただ待ち続けた。遅くまで会社に残り待ち続けた。
やっと、先輩たちの区切りがついたのを見て、得意先から受けた質問をすると、「もう遅いし、そんなことより飲みに行こうぜ」と言われることもしばしばあった。そして私は質問した手前、飲みに付き合うのだった。
こんなことが毎日続くと、さすがに疲れたというよりは、得意先からの質問にまだ答えられていないことが頭に残り、精神的な負担が重なっていった。
もちろん、得意先からの催促の電話があることは言うまでもない。毎日毎日が焦りの日々であった。そう、私は追い込まれていたのだ。

 

そんな中で、私は苦肉の策を考え出した。
それは、「どうせ会社に戻っても、先輩たちにろくろく聞くことができない。それならば、いっそ得意先から、本社の管轄部署に電話をしたらどうであろうか」と。
しかし、この決断はなかなか勇気がいるものだった。管轄部署の人から、「え?そんなことで電話してきたんですか」「そんなことは、支店の人に聞いてくださいよ」と言われやしないかと思ったからだ。私が答えられない質問は、ほとんどが基本的なものだったし、やはり本社の管轄部署というのは、聞くにはハードルが高かったのである。
また、支店に戻ったら戻ったで、私が本社に電話をしたことが何かの拍子でわかって、先輩たちから、「お前、そんなことで本社に電話するなよな。恥ずかしい」と言われやしないかと恐れた。

 

しかし、私は、この策を実行するしかなかった。迷いに迷った上で実行した。そこまで追い込まれていたからだ。
得意先から質問を受ける。
私は、「ちょっと、待ってください。いま、電話で本社に問い合わせしますから」と答える。
ここで驚いたのは得意先の方である。「え?いいよ、いいよ。そんなことしなくても。そんなに急ぐんじゃないんだから」と多くの人が言った。
しかし、私は、ここで本社に電話をしなければ、回答が絶対に遅れるということ、追い込まれることがわかっていただけに実行した。
「○○支店の△△と申します。ちょっと教えていただけないでしょうか」と電話をする。
確かに、本社の人の何割かは、「え?」という反応があったが、多くは、教えてくれた。
その中でわかったことだが、本社の人も即答できないケースも相当あったことだ。
私は思ったのである。本社の人が即答できないものを支店に持ち帰って聞いても、いたずらに回答を引き延ばすだけだったんだなと。

 

さて、ここで重要なのは得意先の顔である。
得意先自身が、なにかおどおどしている。得意先は、営業担当を通じていろいろ回答を聞くものだと思ってはいるものの、その舞台裏をいきなり見せつけられたという感じだった。
そして、必ず電話器の横で、「△△さん、いいよ、いいよ、そこまでで。」と、手を大きく横に振りながら言うのである。
私は、この方法で、追い込まれることから脱出した。当然のことながら、支店に戻っても、返答のために調べるという作業が激変した。精神的にも解放されたのである。会社を辞めようとまで思い込んでいた状態から脱出したのである。

 

話が長くなったが、私の体験から言いたいことは1つのみ。
質問や要望や問い合わせを受けたときは、出来うる限りその場で処理するということである。
確かにその場で処理できないこともある。その場で完結できないこともある。それでも、人は、こうした処理をしている動作を見て安心するのである。 ここが重要である。
今から考えると、入社2年目の私を迎えた得意先の不安の顔は、「この人、ちゃんと処理してくれるんだろうか」という不安の顔であった。
すなわち、質問や要望をしたはいいが、その先は依頼主にはまったく見えない。このまったく見えない進捗状況に対する不安がつきまとわった顔だった。

 

ここからが、問題の核心である。
依頼主は、質問や要望をしたが、その先の進捗状況がわからないから、督促の電話をするのではないだろうか。クレームをつけるのではないだろうか。
それならば、いっそ、「見える化」すれば、督促の電話やクレームが止まるということではないだろうか。
自分が見ているもの、知っているものに、督促やクレームなどつけるはずがないからである。
すなわち、相手に進捗状況を知ってもらえば、「見える化」すれば、追い込まれることはないということになる。

 

追い込まれるということは、追い込む相手がいるということだ。
そして、追い込む人から見れば、自分が見えないものに対する不安から、追い込むのではないだろうか。
それならば、処理している状況、対応している状況を見てもらえば、知ってもらえば追い込まれないということになる。
ぜひ、私が苦労した経験を参考にしてもらいたいと思っている。

 

 

 

 

(参考)拙著『サラリーマンの本質』の全体像は、「追い込まれている人」の対処法を記述したと言っても過言ではない。
「追い込まれている人」はどのようにして、追い込まれないようになるかを具体的に記述したつもりである。
詳細は、第一議題「『ピンチのあとにピンチが来る』組織の考察、第二議題「現場への指導は三つのみ」を参考にしていただきたい。

 

 

 

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