人の替え時

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あなたが管理職や責任者あるいはリーダーだったら、人の配置転換を必ず考えたことがあるだろう。
その配置転換はどのような時に決断しなければならないだろうか。
ここは、じっくりと、しかも冷静に考えてみる必要がある。

 

私は、結論から言うと、同じことを繰り返しやっている人を見た時、人の替え時を考えた。
組織の責任者の頭は重い。部下のミス、得意先からのクレーム、指示したことの遅延と未実施………。
おそらく毎日のようにこんな部下の状況を見ているのではないだろうか。
その時に、組織の責任者が思うことは、「自分の教育が足りなかった」「もっと具体的に指示すればよかった」「もっとフォローをすべきであった」と、まず、自分の反省点を思い浮かべ、その上で、もう一度部下を見つめるだろう。また部下の適性ということも考えるだろう。ミスが重なった時には、きっと、部下の配置転換を頭に描いていくだろう。

 

しかし、よほど部下の適性がかけ離れているとか、怠慢が著しいという場合を除き、この状態は、まだ人の替え時ではない。
責任者であるあなたが悩み、部下が気づき、あなたが指導し、部下がその指示を実行するというサイクルを繰り返しているとしたら、それは、考えようによっては、組織が成長している段階にあると言える。
この繰り返しにより、組織が強くなっている過程とも言える。
ここはしばらく我慢して、繰り返し繰り返しの指導を実施すべきかもしれない。

 

ところが、こんな部下のミスや失敗とは違い、なんとなく、心では不満足を覚えながらも指導しずらい場合というものがある。
それは決して部下がミスや失敗をしているわけではないので言いづらいが、「本当にこのやり方でいいのだろうか」と思う時である。
なんとなくすっきりしない感情を覚える時である。

 

そのイメージを具体例を挙げて見ていきたい。

 

私が経験した「そんな」場合は、ある営業部で、販売店を担当しているベテラン女性担当者の仕事ぶりを見た時だった。
その女性は、販売店向けのニュース発行等の情宣活動、キャンペーン企画を長年担当していた。
わかりやすく言えば、販売店を盛り上げ、売り上げを伸ばしていくことを職務としていた。
私が責任者として着任してみると、その女性は長年この業務を担当していたためか、なかなか、堂に入っていてミスなくスムーズに業務を遂行している。また、販売店の方も彼女に慣れ親しんでいるせいもあり、評判もいい。

 

しかし、何かすっきりしないものを感じるのである。
すっきりしないものを感じながらも月日が流れていった。そして、月日が流れるに連れ、あることに気づいたのである。
やっていることは全て同じだということに。
販売店向けのニュースもあらかじめニュースの型が決められており、毎回違うのは、その型の中の売上数字のみ。
また、キャンペーンの際の決起大会も、寸分違わず進行が決まっている。
挨拶ー乾杯ー談笑ー代表者の決意表明。そして最後には、必ず、みんなで、「やるぞ。オー」と雄叫びを上げる。
毎回、何一つ変わっていないのである。変わっているものがあるとしたらキャンペーン名だけである。

私は、モヤモヤとしていたものが溶けた。 営業部の成績低迷の原因を知った。

 

考えてみると、これと同じようなことは結構ある。
ある経理担当の女性が作る資料。
経理という職務の性格上致し方ないのかもしれないが、ここもあらかじめ資料の様式が決められており、毎月違うのは数字のみ。
おそらくこの女性がこの書式を作ってから一度も改定されたことがないのではないだろうか。
毎月毎月同じ書式のものだから、中身を見ようともしなくなる。この中の数字があっているのか間違っているのか、誰も検証などしない。そればかりか、誰も見ようとしない。皆の頭に残るっているものは、内容ではなく、定期的に発行される物体である。その物体による季節感である。

 

私は、組織というものは、「ここがだめだ」「あそこがダメだ」「あいつを成長させなければならない」「あいつをもっと強くしなければならない」と悩み苦しんでいるときは、成長過程にあると思っている。
「ここがだめ」なら、そこを直せばいいし、「あそこがだめ」なら、そこを補強すればいい。手の打ちようがあるということだ。
それを、一見、整斉と物事が進められていると、手の打ちようというものがなくなるのだ。
組織の問題というものは、実は、一見、整斉と進められている物事、人、領域にある。
このことを、『サラリーマンの本質』で、「上手くいっているより、上手くいっていないが大切」という見出しを立て、説明している。
要は、組織や人の「穴」「ポカ」「落とし穴」は、「できています」「上手くいっています」という領域ではないかと警鐘している。

 

もう一つ。組織というものは、「ああじゃない」「こうじゃない」と違ったことを模索しているときは、必ずいい方向へのステップを歩んでいる。
今までと違ったことへの模索をやめた途端、組織の低迷は始まる。

 

さて、人を替えるということは難しい。責任者に許された権限だが、それだからこそ、慎重に行う必要がある。
部下がミスを重ねたとき、第一に問うべきは、責任者の指導内容であり、第二に問うべきは、その部下の方向性である。怠慢を重ねてのミスの連続ということならば、また、同じことを何度も何度も繰り返しているならば、思い切って、本人の意識変革のために替えるという選択肢もあるが、一生懸命に業務に向かっている途中のミスならば、部下の成長にかけるべきではないかと思う。

 

しかし、一見整斉と業務を遂行しているようだが、同じやり方を繰り返す部下がいるならば、実際に目に見えて組織に問題が生じてはいない場合であっても、ここは、思い切って、本人のためにも替えた方がいい。
組織全体が成長へと向かわないからである。そして、次第に次第に組織は低迷への道を歩むからである。
いずれにせよ、人の問題であり、慎重に冷静に分析した上で、決めるべき時は、スパッと英断を下すことが必要なのではないだろうか。
是非、考えてもらいたい。

 

 

 

 

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