『現場論』

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現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践 現場論: 「非凡な現場」をつくる論理と実践
遠藤 功

東洋経済新報社 2014-10-24

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『サラリーマンの本質』と一緒によく読まれている本なので紹介しておきたい。
『現場論』というと、ちょっと泥臭いイメージを持たれるかもしれないが、早稲田大学ビジネススクール教授である著者が書いた立派な経営学の本である。様々な企業例を紹介しながら考察を深めていく点では、『ビジョナリーカンパニー』に近い。
そして、現場で活躍されているみなさんに、ぜひ読んでもらいたい本だと思っている。
それは、もし、みなさんがこの本を読んだなら、明日からの仕事への心構え、部下への接し方、組織運営が変わると思うからである。

 

私から、みなさんにお願いがある。
それは、第1章の「現場とは何か」を読んで、「当たり前のことじゃないか。なぜ、わざわざ難しくするんだ」と思わないでもらいたいということである。
ここは辛抱して、第2章「競争戦略論と組織能力」に進んでもらいたい。この章から、みなさんは俄然、前のめりになって本を読み進むはずである。

 

「現場は組織能力である」ということが、この本の一貫したテーマである。
そして本のサブタイトルである「非凡な現場」を作るということが、この本の目的である。
それでは、非凡に対する言葉である平凡な現場とは何か?
それは、「保つ能力」にとどまっている現場である。
「保つ能力」から「よりよくする能力」、「新しいものを生み出す能力」に現場力を高めていくというのがこの本の狙いである。
そして、「平凡な現場」と「非凡な現場」の決定的な違いは、現場での「活動」を「組織能力」へと転換させることができるかどうかにより決まるとしている。
それには、何のために、何にこだわって活動を行うのかという「合理的必然性」(「戦略的必然性」と「信条的必然性」)と「合理的な仕組み」(「阻害要因の除去」「報酬」「競争」「学習」)が必要であるとしている。

 

ちょっと、わかりづらいだろうか?
それならば、「よりよくする能力」にスポットを当ててもらいたい。
それは、「標準→気づき→知恵→改善」ということではないだろうか?
その循環がたえず現場で起きるように仕組み化することで、現場力(組織能力)はアップすると言っているのである。
そして、その循環は継続的でなければならない。そのためには、現場で働く人がマニュアルワーカー(業務遂行に留まっている人)からナレッジワーカー(知識創造ができる人)になることが必要だと言っている。

 

超訳すると、現場での改善が、組織能力を高めると言っているのである。
そして、この本は、改善(カイゼン)で有名なトヨタを念頭に置きながら、デンソー、ヤマト運輸、住宅金融支援機構、サンドビック、良品計画、天竜精機などのケースを出してわかりやすく解説している。

 

著者は駆け出しの戦略コンサルタント時代の苦い経験をこう振り返っている。
「……今思い返してみると、クライアントの組織能力もわからずに(もしくは無視して)、戦略策定に突っ走っていたことが大半であったような気がしている。SPとOC(注 後述)を切り離して考え、斬新でユニークな戦略の立案ばかりに傾注していた。
『実行はあとから考えればいい』『よい戦略を立案すれば、あとは現場がなんとかするだろう』と甘く考えていた。明らかに実行を軽視していた」

 

このSPはポジショニング(SP:stragegic Positioning)、OCは、組織能力(OC:Organizational Capability)である。
(元々は一橋大学大学院教授楠木建氏の言葉)
そして、この組織能力こそが、現場力なのである!
ポジショニングは、優位になるための戦略立案(私訳)とでも解しておけばよいだろう。
つまり、著者は、戦略だけでは絶対に上手くいくわけがなく、組織能力との両輪で考えなくてはならなかったと言っている。そして、その後に、むしろ、組織能力こそが戦略を決定すると言っても過言ではないと言っているのである。

 

なぜ、私がこの著者の言葉を引き合いに出したかというと、世の中「仮説を立てる」ということが、まるで王道のように言われているからである。
戦略も仮説である。
確かに、仮説を立てることは問題解決を迅速に行えるという長所がある。
しかし、組織能力をよく見極めた上での仮説なら一向に構わないと思うが、そうでない仮説は、まったく的外れとなるということをこの本が言っているように思えてならないのである。
仮説はあくまでも、仮説だと思うのである。
みなさんは、どう考えるだろうか?

 

 

 

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