『戦略参謀』 

戦略参謀―――経営プロフェッショナルの教科書

稲田 将人

ダイヤモンド社 2013-08-30

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この本を買ったキッカケは、アメリカではビジネス書の多くがストーリ仕立てになっていると聞いたからである。
そしてストーリー仕立てのビジネス書は、いったいどんな内容になるのかと興味を持ったからである。
著者は、コロンビア大学大学院コンピュータサイエンス科にて修士号を取得したのち、マッキンゼーに入社している。現在は経営コンサルタントである。
また多くの著名な企業の経営改革にも取り組まれた。
そんな経歴を見ていたとき、はっと思ったのは、同じくマッキンゼー出身の大前研一氏が『企業参謀』という本を書いていたのを思い出したからである。これは推測だが、この『戦略参謀』というタイトルは、大前氏の『企業参謀』を意識したのではないかと思ったのである。

 

さて、本の内容は、非常に丁寧で大変な労力を払われたのではないかと思うのである。
それは、ストーリー展開の中で、ちゃんと経営というもの、参謀というものを説明しなければならないからである。
そして、『嫌われる勇気』のように、高山という経営企画室に配属されたばかりの若手職員が、経営コンサルタントである安部野、高山の上司である伊奈木との会話を通して、理解を深めていく展開になっている。

 

本の最初の方では、正直、池井戸潤氏の小説と比較してしまい、こうした展開方法の難しを感じていたが、ストーリーが大変おもしろかったこともあり、途中から波に乗り一気に読み終えることができた。
おもしろかったのは、探偵小説さながらに、経営コンサルタントである安部野による「謎解き」が最後の場面であったことだ。

 

なお、各章の最後には、解説のページがある。
解説のタイトルをここに記載すると、

・長期低迷から抜け出すためにするべき三つのこと
・PDCAを回すということ
・本当の経費低減って?
・人事機能の使命とは
・経営不振の時に行うべきことは?
・新業態開発とは
・人間の持つ「業」にどう立ち向かうか?
・高山への最後の講義

となっている。この解説から、この本の内容が想像できるのではないかと思う。

 

さて、この本を読んでいて、「あれ?」と思う部分があった。
それは、PDCAについての記述である。本書は、さかんにPDCAの重要性を説いているが、正直驚いた。
こんな経歴の持ち主が、PDCAにこだわるということは、「やはり重要なんだ」と再認識したのである。
それは、私は、実務の出身であるが、一昔前は、確かにどの企業も「PDCA、PDCA」と言っていた。しかし、最近では、とんと聞かなくなった言葉であるからだ。

 

また、HPでも、『U理論入門』を紹介した。
そこで、私は次のような書評を書いた。
「しかし、それは(PDCAは)あらかじめ実行する内容を決めていることに特徴があることに、この本を読んで気づいた。
多分、その実行からだけでは解決できないものがものすごく多く、まさにそこが問題なのだと思う。
ちなみに、『U理論入門』では、PDCAサイクルを「過去からの学習」とし、それに対比する形でU理論を「出現する未来からの学習」として紹介している。」

 

この書評を書いているときに、私は、「そういうことだったのか。時代は、PDCAから移ってきているんだ」と深く頷いたのである。
多分、この本と『U理論入門』とでは意味合いが違うと思うが、こんなことから、ビジネス書っていうものは、本当に読者にとって、難しいものだと思うのである。

 

最後に私ごときがいう話ではないかもしれないが、この本が非常に労力を使っていると思うのは、会話を通してストーリー展開を図っているので、どうしても、会話部分が多くなる。しかもその会話に経営学的な意味合いを持たせなければならないので読者が疲れるのを防ぐために、会話の合間に意図的に情景描写を挟んでいる。
そのご努力は、大変なものだと推察するが、あまりにも情景描写が詳細すぎるため、かえって疲れてしまう嫌いがあった。
たとえば、本の最終章で安部野が「謎解き」する場面で、「コーヒーのいい香りが部屋に充満した」との箇所があったが、十分にそのときの情景、コーヒーのいい香りまでも読者は想像できるので、私ならば、「コーヒーの香りが漂った」とするなとは思った。これは、まったくの余談である。

 

参考までに、著者が経営改革に携わったAokiインターナショナルについては、たまたまHPで、同社の会長である青木擴憲氏の『何があっても、だから良かった』を紹介している。
この本の内容と照合すると、おもしろいかもしれない。

 

色々なことをざっくばらんにお話しさせていただいたが、大変、丁寧で、力がこもった本である。
ぜひ、参考にしていただきたいと思う。

 

 

 

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2014年7月31日