『ロジカル・シンキング』

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

照屋 華子 岡田 恵子

東洋経済新報社 2001-04

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ビジネス書の中でも、絶対におさえておかなければならない教科書的な本がある。
それが、本書である。
この本の初版は2001年と古いが、その内容は少しも褪せることはない。

 

さて、みなさんも、多くのビジネス書を読んでいると思う。しかし、よくよく考えてみれば、それらのほとんどは、著者が体験したことをベースにした著者の主張である。
しかし、この本は、これらの本とは次元が違う。論理的に物事を考える上での教科書である。
つまり、主義主張以前の基本原理を記した教科書である。
そして、かなりビジネス書を読んでいる人が、必ず目にするのがこの本のタイトルであり、著者の氏名である。
また、この本は、外資系コンサルタントが拠りどころとしている本として知られている。

 

まず、この本を読むにあたって、この本の性格を知る必要がある。
この本のタイトルを見るだけで、「ちょっと、難しそうだ。パスしよう」と思う人が多いと思うが、ちょっと待ってもらいたい。
2人の著者のプロフィールと役割を、まず知ってもらいたい。
2人の著者はマッキンゼー・アンド・カンパニーで「エディテング」という業務をしていた。

 

「エディテング」の業務内容については、本の「終わりに」で述べられている。
「メッセージの伝え手(書き手・話し手)が所期の目的を達成できるよう、私達は疑似読者・疑似聴衆として伝え手が用意した中身を、聞いたり、読んだりする。そして、この中身で本来の受け手は『なるほどそうか』と納得できるか、もし納得できないのであれば『どこをどう改善すればよいのか』という視点から、メッセージの論理構成から日本語の表現まで、アドバイスや具体的な改善策を提供する」(P225)
そして、2人の著者は、「コンサルティングの報告書、顧客への商品説明のプレゼンテーションの内容、企業がホームページに載せる事業や業績内容、雑誌や書籍などの原稿、あるいはビジネスレター」を「エディティング」の対象としてきたのである。
しかも、著名なマッキンゼー・アンド・カンパニーで実施してきたのである。

 

この「エディティング」の手法が、この本の中身と言っていいだろう。
つまり、この本は「自分や組織の考えをわかりやく伝えて納得してもらい、自分の思い通りに動いてもらう」(P2)ことを目的としている。

 

この本の概略を示していいものか迷うところだが、この本の中身は次のとおりである。

 

「メッセージとは、次の3つの要件を満たしているものだ。まず、そのコミュニケーションにおいて答えるべき課題(テーマ)が明快であること、第2に、その課題やテーマに対して必要な要素を満たした答えがあること。そして第3に、そのコミュニケーションの後に、相手にどのように反応してもらいたいのか、つまり、相手に期待する反応が明らかであることだ」(P15)

 

そして、論理的に思考を整理する「技術」が示される。

 

その入り口である「MECE」(ミッシーと読む)という概念は極めて重要である。
この「MECE」の呼称はマッキンゼー社で使われているものである。
「MECE」は、「ある事柄や概念を、重なりなく、しかも全体として漏れのない部分の集まりで捉えること」である。
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive
(相互に重なりなく)  (漏れがない)      P58参照

(補足:直訳 mutually:相互に関係がある exclusive:排他的な collectively:集団的に(全体的に) Exhaustive:あますところのない)

 

わかりやすく言うと、たとえば、あなたが、役員から「ウチの社の現状をレポートにまとめ上げてくれ」の言われたとき、どういう「切り口」「分類」で捉えるかということである。
その「切り口」は、重複していてもいけないし、漏れがあってもいけないと言っている。

 

これでけでは、ちょっとわかりづらいと思うが、この本ではヒントも出している。
事業、あるいはその企業や業界の現状を全体集合としたとき:3C/4C 顧客・市場(Customer) 競合(Competitor) 自社(Company) チャネル(Channel)
マーケティングの4P:Product(製品) Price(価格) Place(チャネル) Promotion(訴求方法)
その他:・組織の7S ・効率・効果 ・質・量 ・事実・判断 ・短期・中期・長期 ・過去・現在・未来 ・事業システム

 

要は物事を見たり、考えたりするときの「切り口」と考えてもらいたい。
実際、我々は、ここを正しく行えているか大いに疑問があるところなので、この本をじっくり読んで、基本をマスターしてもらいたい。

 

続いての「技術」は、So What?/Why So? である。
「So What? とは、手持ちの情報や材料の中から『結局どういうことなのか?』を抽出する作業であり、『なぜそういうことが言えるのか?』と検証・確認することがWhy So?である」(P89~90から要約)

 

ここまでの「技術」を、本の半ばで要約しているので参考にしてもらいたい。
「論理的なコミュニケーションには、相手との間に設定された『課題(テーマ)』に対する『答え』が用意されていること、さらに『答え』の要素には、結論と根拠、あるいは方法があることを述べた。そして、さまざまな情報の中から、課題に照らしたときに正しい『結論』や『根拠』、あるいは結論か何らかのアクションを意味するものの場合には『方法』を整理していくアプローチとして、MECE(話の重複・漏れ・ずれをなくす技術)やSo What?/Why So?(話のとびをなくす技術)という技術を紹介した」(P121)

 

そして、今までの技術をベースに論理の基本構造は、
・要件1 結論が課題(テーマ)の「答え」になっている。
・要件2 縦方向に結論を頂点としてSo What?/Why So?の関係が成り立つ
・要件3 横方向に同一階層内の複数の要素がMECEな関係にある

としている。

 

そして詳細は本に委ねるが、論理パターンは「並列型」「解説型」、その組み合わせしかないとしている。

 

この本のイメージを感じていただいただろうか?
超訳すると、この本の内容は、相手に正しく伝える技術ということになる。
実は、このことは、多くのビジネス書で書かれていることではあるが、ここまで論理的に示されることはない。
一度、正しく理解したいと思っている人には格好の本だと思う。
また、もし、みなさんが、セミナーなどに参加していたとしたならば、セミナーの内容(要旨)が、はたしてこの本通りに、So What?/So Why?になっているか、あるいは題材や問題の捉え方が、重なりなく、漏れがないか、逆にチェックしてみたらどうだろうか。
みなさんが今読んでいるビジネス書についても、その論理構成をチェックしてみたらどうだろうか。
もし、「あれ?」と思えたならば、話が飛躍した内容なのかもしれない。そして話が飛躍してということは、結論が間違っている可能性がある。
それこそ時間のムダだけではすまなくなってしまうのである。
基本を正しく理解するということは必要だと思うのである。

 

さて、この本の中で、「やはり、そういうことか」と思った箇所があった。
それは、外資系コンサルタントの本には、よく「結論から話す」と書かれてある。そのことに対する疑問である。
確かにビジネスの現場では、結論から話す方が相手をイライラさせなくて済む。しかし、私は、「それはケースにより異なる」と考えていた。
それを一律に「結論から話す」と言い切ると、それを真に受けた読者は、きっとビジネスの現場で、時には違和感を持たれると思い続けていたのだ。

 

この本は、下記のように言っている。
「論理構造はあくまでも『構造』であり、課題に対する答えの中で最も重要な結論が、その他の要素とどういう関係になっているのかを明示するものだ。そして、この構造と、実際のコミュニケーションでの『伝達順序』(話す順序や書く順序)とは異なる。
………
しかし、結論先出しの伝え方しかあり得ないというわけではない。根拠→結論という順序も当然あり得る。相手が、伝え手とは異なる結論を支持しており、いきなり結論から伝えると拒絶反応が大きい、あるいは、根拠を1つ1つ解説して合意を取りつけ、相手が自ら結論に至るよう誘導して相手のコミットメントを得るような場合が該当する」(P198)

 

わたしの疑問と危惧は解けたのである。
しかし、これからの時代は、読者側も決して本に書かれていることを鵜呑みにしてはいけないことを示していると思うのである。
特に、著者の主張を現実の世界にあてはめた場合に無理が生じる可能性が強いので、注意する必要があると思うのである。

 

参考図書を挙げておく
大石哲之著 『コンサル一年目が学ぶこと』 (イの一番に「結論から話す」という見出しが出てくる)
勝間和代著 『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』 (有名な本である。読み直してみると、はたして「MECE」という概念が載っていた。しかし、ほとんどの読者は、言っている意味がわからなかったのではないだろうか)
拙著 『サラリーマンの本質』 (本中の「問題文をよく読む」(P64~)を参照願いたい。この問題文こそが、ロジカル・シンキングでいう「課題」(テーマ)である)

 

 

 

 

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2014年12月21日